ウェブサイトで過去に紹介した北欧と北欧以外のディスクからピックアップして掲載するページです。


『フローセの花(Frösöblomster)』
Naxos 8.554343 classical
ヴィルヘルム・ペッテション=ベリエル(1867–1942)
ピアノ曲集《フローセの花(Frösöblomster)》
第1巻《8つのメロディ(Åtta melodier)》 Op.16(1896)
帰還(”Rentrée”) 夏の歌(Sommarsång)
ローンテニス(Lawn Tennis) ばらに寄せて(Till Rosorna)
お祝い(Gratulation) フローセの教会で(Vid Frösö kyrka)
たそがれに(I skymningen) あいさつ(Helsning)
第2巻《抒情アルバム(Lyrisches Album)》(1900)
太陽にあいさつを(Solhälsning) ヤムトランド(Jämtland)
はるか森の中に(Långt bort i skogarna)
聖ラウレンティウスの祭で(Vid Larsmess')
岸にむかう波(Vågor mot stranden) 思い出(Minnen)
第3巻《ソンマルハーゲンで – ピアノのためのユモレスクと牧歌(I Sommarhagen – Humoresker och idyller för piano)》(1914)
前奏曲(Förspel) ソンマルハーゲン入場(Intåg i Sommarhagen)
夕陽にうつる景色(Landskap i aftonsol)
庶民のユーモア(Folkhumor) 荒野の呼び声(Vildmarken lockar)
ポプラの下で(Under asparna) 何年もたってから(Om många år)
ニクラス・シヴェレーヴ(ピアノ)
録音 1997年12月4日–5日 セント・ジョージ教会(ブランドン・ヒル、ブリストル、イングランド)
制作 アンドルー・ウォルトン
録音エンジニア エレナー・トマソン
ヴィルヘルム・ペッテション=ベリエル Wilhelm Peterson-Berger は、1867年、スウェーデン北部の沿岸の町ウロンゲルに生まれました。父親のオーロフ・ペッテション Olof Peterson は、土地測量士という実務をこなすかたわらホメロスの『イリアス』や『オデュッセイア』をギリシャ語で朗誦するという知識人で、母親のソフィア・ヴィルヘルミーナ・ベリエル Sofia Wihelmina Berger は堪能なピアニストでした。父親から学んだギリシャの文化は、ヘレニズム、ひいてはニーチェやワーグナーに傾倒するきっかけになり、母親から教わったピアノが、ヴィルヘルムの終生の楽器になりました。
その後、一家は同じ北部のウーメオに移り、ヴィルヘルムは高等学校を卒業する1885年までをこの町で過ごしました。このころ彼はエドヴァルド・グリーグの音楽に出会い、新鮮な和声を響かせるグリーグの音楽をを啓示と受けとめ、そのことから作曲家になる道を選ぶ決心をしたといいます。
1886年から1889年までペッテション=ベリエルは、スウェーデン王立音楽アカデミーの音楽院(王立ストックホルム音楽大学)でオルガンと作曲を学びます。1889年にはドレスデンに行き、宮廷オルガニストで作曲家のエドムント・クレチュマーに作曲と管弦楽法を師事しました。交響曲第1番《旗(Baneret)》が、このころ作曲にとりかかった作品のひとつです。そして、音楽ならドイツ、とばかりにドレスデンに渡ったものの、しだいに望郷の思いがつのり、翌1890年にはウーメオに戻ります。
ウーメオで彼は、ピアノを教えるかたわら音楽協会を復興させるなどの活動を通じてウーメオ市の文化に貢献し、地元の人たちの間で尊敬を集めていきました。ペッテション=ベリエルは、その後、新設される音楽学校で教えるため再びドレスデンに赴き、2年後に帰国。ストックホルムの新聞社の音楽批評担当という仕事の申し出もあって、1895年からは首都に居を構え、音楽家としての本格的なキャリアを開始します。翌1896年、ピアノ曲集《フローセの花》の第1巻《8つのメロディ》が出版されました。
〈帰還〉〈夏の歌〉、ドイツから戻りウーメオの人たちに紹介した〈ローンテニス〉、〈ばらに寄せて〉〈お祝い〉〈フローセの教会で〉〈たそがれに〉〈あいさつ〉。ペッテション=ベリエルが世界でもっとも美しい眺めと呼んだストゥールシェン湖とそこに浮かぶ島フローセの自然、島に建てた家ソンマルハーゲンでの生活、そういったものへの真正の思いのこめられた小品はすべて、山に湧く水のように彼の手からごく自然に生まれたといわれます。この最初の曲集は、スウェーデンの家庭でたちまち人気を呼び、ペッテション=ベリエルの出世作となりました。
第2巻《抒情アルバム》と第3巻《ソンマルハーゲンで – ピアノのためのユモレスクと牧歌》はそれぞれ1900年と1914年に出版されました。内面的な色彩が濃くなるにつれ曲のトーンも変化していくものの、《フローセの花》の3巻は、《去年の夏》《エアリナ》といった彼の他の曲集とともに愛され、スウェーデンのピアノを習う生徒とアマチュア・ピアニストたちに今も広く演奏されています。
《フローセの花》全曲は、スウェーデンのピアニスト、作曲家でもあるニクラス・シヴェレーヴ Niklas Sivelöv(1968–)の録音が、もっとも優れています。繊細で知的な演奏は、曲と曲の背景にある「スウェーデン」に対する共感を感じさせ、〈夕陽にうつる景色〉〈ポプラの下で〉〈何年もたってから〉といった第3巻の曲を聴き、どこか特別な世界に誘われる感覚を覚えます。
価格 1,925円(税込価格)(本体価格 1,750円)
『Fly North』
Losen Records LOS 119-2 jazz
『Fly North』
Fly North(Jan Gunnar Hoff) Living(Jan Gunnar Hoff)
Arise(Jan Gunnar Hoff) Places(Jan Gunnar Hoff)
Sacrifice(Jan Gunnar Hoff) Böcklin(Jan Gunnar Hoff)
Spheres(Jan Gunnar Hoff) Valse de Décembre(Jan Gunnar Hoff)
Questions(Jan Gunnar Hoff) Gathering(Jan Gunnar Hoff)
ヤン・グンナル・ホフ(ピアノ、キーボード)
アルヴェ・ヘンリクセン(トランペット、ヴォーカル)
アンデシュ・ヨルミン(ベース)
マリリン・マスア(ドラム、パーカッション)
録音 2013年10月、11月 レインボースタジオ(オスロ)
制作 ヤン・グンナル・ホフ、アルヴェ・ヘンリクセン
録音エンジニア ヤン・エーリク・コングスハウグ
ヤン・グンナル・ホフ Jan Gunnar Hoff は、1958年、ノルウェーの北極圏、ボードー生まれ。1976年にボードーのアドリブ・ジャズクラブ Ad Lib Jazzklubb で自身のトリオを率いてデビュー、翌1977年から1978年にかけて、ヨン・クリステンセンやヨン・エーベションといったアーティストとともに地元のジャズ・プロジェクトで演奏しました。ジャズ・ピアニスト、作曲家、アレンジャーとして活躍しながら、トロムソとアグデルの大学の教授を務めています。ノルウェーを代表するミュージシャンたち ― トランペットのマティアス・アイク、ベースのアーリル・アンデシェン(アリルド・アンデルセン)、ギターのボルゲ・ペーテシェン=オーヴェルライル、ハリングフェレとニッケルハルパのアンビョルグ・リーエン、パーカッションのルーネ・アルネセン ― とのアンサンブルも知られ、彼らに8人のヴォーカリストを加えオスロのソフィエンベルグ教会でセッション録音した Pure Audio Blu-ray アルバム『静かな冬の夜(Quiet Winter Night)』(2L 087PABD)は、臨場感のある録音(24bit/192kHz)も素晴らしく、注目を集めました。
『Fly North』は彼のオリジナル曲によるアルバムです。2013年秋、オスロのレインボー・スタジオで録音されました。「北に向かって空を行く」。陰影のある、柔らかいキーボード、深いリリシズムを湛えた気分。スウェーデンのベーシスト、アンデシュ・ヨルミン Anders Jormin(1957–)、ニューヨークに生まれデンマークで活躍するパーカッション奏者、マリリン・マスア(マズーア) Marilyn Mazur(1955–)、ノルウェーのトランぺッター、アルヴェ・ヘンリクセン Arve Henriksen(1968–)。共演のミュージシャンたちが、あたかも画家のように色彩と雰囲気を添えます。ヤン・エーリク・コングスハウス Jan Erik Kongshaug のエンジニアリングです。
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)
『Jan Gunnar Hoff Group featuring Mike Stern』
Losen Records LOS 196-2 jazz
『Jan Gunnar Hoff Group featuring Mike Stern』
Some Day(Jan Gunnar Hoff) City Z(Jan Gunnar Hoff
Her Song(Jan Gunnar Hoff) Seven Thirty(Mike Stern)
Mike 6/4(Jan Gunnar Hoff) Common Ground(Mike Stern)
All You Need(Mike Stern) Point Blank(Jan Gunnar Hoff)
ヤン・グンナル・ホフ・グループ
ヤン・グンナル・ホフ(ピアノ、キーボード)
マイク・スターン(ギター、ヴォーカル)
ペール・マティセン(エレクトリックベース、アコースティックベース)
アウドゥン・クライヴェ(ドラム)
録音 2018年3月4日–5日 プロペラ・スタジオ(Propeller Studio)(オスロ、ノルウェー)
制作 ヤン・グンナル・ホフ、ペール・マティセン
録音エンジニア ハンス・アンドレーアス・ホルントヴェト・ヤンセン
ノルウェーのピアニスト、ヤン・グンナル・ホフ Jan Gunnar Hoff(1958–)、ベーシストのペール・マティセン Per Mathisen(1969–)、ドラマーのアウドゥン・クライヴェ Audun Kleive(1961–)にアメリカのギタリスト、マイク・スターン Mike Stern(1953–)が加わったアンサンブル。ホフとスターンは、2006年、ノールラン音楽祭の『Magma』で初めて共演、2006年から2008年にかけてノルウェー、ウクライナ、エストニアとツアー。2016年に行ったツアーのメンバーによるアルバム制作が計画され、スターンが事故による怪我から復帰して活動を再開した後、2018年3月、スタヴァンゲル、ベルゲン、オスロのコンサートにつづき2日間の録音セッションが行われました。
覚えやすいメロディをマイクのエレクトリック・ギターとヤン・グンナルのピアノが愛らしく弾く《Some Day》、アウドゥンのドラムとペールのベースがリードする、ジャズ・ロック風の《City Z》、バラード《Her Song》と《Common Ground》、チャーミング、軽やかな《All You Need》。ホフが新しく書いた5曲とスターンが過去のソロアルバムから選んで新たに編曲した3曲を、4人のミュージシャンが素敵なアンサンブルで演奏するアルバム。
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)

