過去のウェブサイトでは「北欧」のディスクと北欧以外の音楽のディスクを分けて紹介してきました。しかし、このところ、BIS Records がアメリカのエッシャー弦楽四重奏団やイギリスの歌手たちのアルバムをリリースしたり、Pentatone Records がフィンランドのペッカ・クーシストの録音を制作したりと、その「境界」があいまいになってきています。
 
そうした現状から、「新譜情報」に Nordic Sound Hiroshima の取り扱えるディスクを区別なく掲載し、これまでの "Our Select" と "Choice" を "Selection" としてこのページで紹介します。

『dear body』 Selection
Daphne DAPHNE 1074 singer-songwriter/classical

 
『dear body』
 In my silence(Annasara Lundgren)
 There’s a heartbeat(Annasara Lundgren)
 Surrounded by love(Annasara Lundgren)
 Let’s play(Annasara Lundgren)
 Dear Body(Annasara Lundgren)
 Surrendering(Annasara Lundgren)
 I am not broken(Annasara Lundgren)*
  アンナサーラ(ヴォーカル、ピアノ、ヴァイオリン)
  マッティン・ヴァンベリ(ヴォーカル)*
  アメリア・ヤコブソン(チェロ)
  ユーハン・ブリッジャー(マリンバ)
  シモン・ペッテション(ベース)
  
録音 (データ後報)

 
スウェーデンのシンガーソングライター、アンナサーラ Annasara のアルバム第4作『dear body』。
 
アンナサーラ・ルンドグレーン Annasara Lundgren は、1982年、ヴェステルヨートランドのトロルヘッタンで生まれ、スコーネ地方のマルメでヴァイオリンを学びました。フリーランスのオーケストラと室内楽のプレーヤーとして10年ほど活動した後、マルメに近いセルスホーグに移って作曲を学びました。そして、シンガーソングライターとしての最初のソロアルバム『Annasara』を2014年に発表しました。
 
Daphne Records がリリースする新しい『dear body』も、これまでと同様、フランス印象主義を中心とするクラシカル音楽の影響を受けて彼女が作った作品を歌ったアルバムです。「わたしは、夢の中にいるようなネオクラシカルな音楽を作ります。わたしの歌があなたの心に届き、あなたを内省と瞑想の世界に連れていくことがわたしの願いです」(アンナサーラ)。6曲は、インストルメンタル伴奏で書かれ、彼女自身がピアノとヴァイオリンを演奏。アメリア・ヤコブソン Amelia Jakobsson のチェロ、打楽器奏者ユーハン・ブリッジャー Johan Bridger のマリンバ、シモン・ペッテション Simon Peterson のベースが、いくつかの曲で共演しています。最後の《I am not broken 》は、友人のテノール、マッティン・ヴァンベリ Martin Vanbeerg とのデュエット。すべての編曲をアンナサーラが手がけ、彼女の自宅スタジオで録音セッションが行われました。
 
アルバム・タイトル曲《Dear Body》ではシベリウスの《ヴァイオリン協奏曲》のテーマが冒頭とコーラス部分の素材に使われ、シンガーソングライターとクラシカル音楽の世界の出会いが、時を超えた内省の気分を醸し出します。
 
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)
 
このアルバムは Vinyl LP(DAPHNE 1074 LP)もリリースされます。
 
価格 3,520円(税込価格)(本体価格 3,200円)

『Ricercare(リチェルカーレ)』 Selection
LAWO Classics LWC 1238 classical

 
ヨハン・クヴァンダール(1919–1999)
 弦楽三重奏曲 Op.12
フィン・モッテンセン(1922–1983) 
 三重奏曲 Op.3
エドヴァルド・フリフレート・ブレイン(1924–1976)
 三重奏曲 Op.15
ベッティル・パルマル・ヨハンセン(1954–)
 リチェルカーレ(Ricercare)(1996)(弦楽三重奏のための)
  SSENS Trio(エッセンス・トリオ)
   ソルヴェ・シーゲルラン(ヴァイオリン)
   ヘンニンゲ・ランドース(ヴィオラ)
   エレン・マルグレーテ・フレショー(チェロ)
 
録音 2020年5月12日–13日、12月11日 ソフィエンベルグ教会(オスロ)
制作 ヴェーガル・ランドース
録音 トマス・ヴォルデン [DXD(24bit/352.8kHz)録音]
 

「SSENS Trio(エッセンス・トリオ)」は、グリーグ三重奏団のソルヴェ・シーゲルラン Sølve Sigerland とエレン・マルグレーテ・フレショー Ellen Margrete Flesjø、オスロ・フィルハーモニックのヘンニンゲ・ランドース Henninge Landaas の3人が2014年に結成。ベートーヴェンの弦楽三重奏曲(LWC 1122)とモーツァルトの《ディヴェルティメント変ホ長調》(LWC 1170)のアルバムを LAWO Classics に録音していました。
 
アルバム第3作ではノルウェーの作品を演奏しています。ヨハン・クヴァンダール Johan Kvandal(1919–1999)が、新しいヨーロッパ音楽の中で独自の音楽表現を探求した《弦楽三重奏曲》。「自身の声」をもつ3つの弦楽器がそれぞれの旋律をダイナミックに交流させる、フィン・モッテンセン Finn Mortensen(1922–1983)の《三重奏曲》は、当時のノルウェーでもっとも新しい技法と様式の音楽を追求した彼の最初に公のコンサートで演奏された作品です。エドヴァルド・フリフレート・ブレイン Edvard Fliflet Bræin(1924–1976)の《三重奏曲》は、モチーフとテーマをリズミカルに展開させた変奏曲のスタイルによる1楽章の作品。古いスタイルの「リチェルカーレ」から始まり、予定調和の調性に従わない「新たな道」が探られる、ベッティル・パルマル・ヨハンセン Bertil Palmar Johansen(1954–)の《リチェエルカーレ》。
 
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)

『ブリテン 弦楽四重奏のための音楽』 Selection
BIS SACD 2640 3SACD’s hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
ベンジャミン・ブリテン(1913–1976)
[Disc 1: BIS SA 1540]
 弦楽四重奏曲第2番 ハ長調 Op.36(1945)
 3つのディヴェルティメント(Three Divertimenti)(1936)
  マーチ(March) ワルツ(Waltz) バーレスク(Burlesque)
 小組曲(Miniature Suite)(1929)
  ノヴレット(Novelette) メヌエット(Menuetto)
  ロマンツァ(Romanza) ガヴォット(Gavotte)
 弦楽四重奏曲 ニ長調(1931 rev.1974)
[Disc 2: BIS SA 1570]
 弦楽四重奏曲第1番 ニ長調 Op.25(1941)
 アラ・マルチア(行進曲風に)(Alla Marcia)(1933)
 弦楽四重奏曲第3番 Op.94(1975)
[Disc 3: BIS SA 1870]
 シンプル・シンフォニー(Simple Symphony) Op.4(1933–34)
  騒々しいブレ(Boisterous Bourée)
  陽気なピッツィカート(Playful Pizzicato)
  感傷的なサラバンド (Sentimental Sarabande)
  浮かれ気分のフィナーレ(Frolicsome Finale)
 ラプソディ(Rhapsody)(1929)
 小四重奏曲(Quartettino)(1930)(弦楽四重奏のための)
 幻想曲 ヘ短調(1932)(弦楽五重奏のための)*
 弦楽四重奏曲 ヘ調(1928)
  エンペラー弦楽四重奏団
   マーティン・バージェス(ヴァイオリン)
   クレア・ヘイズ(ヴァイオリン)
   フィオナ・ボンズ(ヴィオラ)
   ウィリアム・スコフィールド(チェロ)
  ジョン・メトカーフ(第2ヴィオラ)*
 
録音 2007年3月(Disc 1)、2005年5月(Disc 2)、2011年4月(Disc 3) ポットンホール(サフォーク州、イングランド)
制作 ロバート・サフ
録音 ジェフリー・ジン

 
ベンジャミン・ブリテン Benjamin Britten は、自身を20世紀音楽の主流に位置する作曲家とも、ショスタコーヴィチのように交響的思考による管弦楽や室内楽のための音楽に関わる作曲家ともみなしていなかったと言われます。彼は「人間の声」に深い関心を寄せ、作曲家キャリアの早い段階からあらゆる種類の声楽作品を手がけました。アルチュール・ランボーの詩に作曲した《イリュミナシオン》(1939)、1976年に改訂を加えて価値を認められた、友人W・H・オーデンの台本によるオペレッタ《ポール・バニヤン》(1941)、《キャロルの祭典》(1942)、テノールとホルンと弦楽のための《セレナード》(1943)、1945年に初演された歌劇《ピーター・グライムズ》(1945)といった特徴的な作品が1940年代までに作曲されました。
 
ブリテンは、声楽作品ほど多くはないものの、小編成のアンサンブルの作品も手がけました。彼が作曲を教わったフランク・ブリッジと話し合い、短時間で作った1928年の《弦楽四重奏曲 ヘ調》、ブリテンの個性的なスタイルが際立った1929年の《ラプソディ》、1974年のオールドバラ音楽祭に際して改訂稿が作られた1931年の《弦楽四重奏曲 ニ長調》など初期の作品から、番号つきの3つの《弦楽四重奏曲》と、人生の折々に作曲しています。
 
エンペラー弦楽四重奏団 Emperor String Quartet は、1992年に結成されたイギリスのアンサンブルです。マーティン・バージェス Martin Burgess とクレア・ヘイズ Clare Hayes のヴァイオリン、フィオナ・ボンズ Fiona Bonds のヴィオラ、ウィリアム・スコフィールド William Schofiled のチェロ。1994年にエディンバラ音楽祭に初めて出演。1995年のエヴィアン/ボルドー国際弦楽四重奏コンペティションで第1位とモーツァルト賞と現代音楽賞を獲得、「プラハの春」や「クフモ音楽祭」をはじめとするフェスティヴァルへの招待につながりました。ブリテンの四重奏曲は、マクミラン(BIS-1969)、マルチヌー(BIS-1389)、ベートーヴェンとビーミッシュ(BIS-1511)につづいて BIS レーベルが制作、2010年から2014年にかけてリリースされて「熱い洞察と献身」と評されたディスクのセット化です。ロバート・サフRobert Suff の制作、ジェフリー・ジン Jeffrey Ginn の録音エンジニアリング。「ベンジャミン・ブリテンの音楽」を、今、楽しみ、味わうためのアルバムです。
 
価格 5,500円(税込価格)(本体価格 5,000円)

『海へのあこがれ(Sea Fever)』 Selection
Swedish Society Discofil SCD 1183 classical

 
マイケル・マッグリン(1964–)
 ヒンバラ(Hinbarra)
アイルランド伝承歌
 ハイバーバリー(High Barbary)
エリック・ウィテカー(1970–)
 アザラシの子守唄(The Seal Lullaby)(2004)*
フェリクス・メンデルスゾーン(1809–1847)
 舟旅(Wasserfahrt)  Op.50 no.4
マックス・レーガー(1873–1916)
 海に寄す(An das Meer) Op.83 no.1
エイミー・ビーチ(1867–1944)
 海へのあこがれ(Sea Fever) Op.126 *
ヴェルヨ・トルミス(1930–2017)
 古代の海の歌(Muistse Mere Laulud)(1979)**
リリ・ブーランジェ(1893–1918)
 嵐の中(Pendant la tempëte)*
アンデシュ・ヒルボリ(1954–)
 muo:aa:yiy::oum(1983 rev.2000)(16声の男声合唱のための)
ユーセフ・ヘーダル(1894–1960)
 ベルブイ(Klockbojen)
ジャン・シベリウス(1865–1957)
 ヨナの航海(Jone havsfärd) JS100(1918)
ヴァルテル・オーモット(1902–1989)
 海塩(Havsalt)
ヒューゴ・アルヴェーン(1872–1960)
 海辺の夜明け(Gryning vid havet)(1933)
  ルンド大学男声合唱団 クリスチャン・シュルツェ(指揮)
  エリサベト・ブーストレム(ピアノ)*
  レイフ・アルーン=スレーン(テノール・ソロ)*
 
録音 2021年9月25日26日 マルメ音楽大学 ルーセンベリホール(マルメ、スウェーデン)
制作・録音 ペール・ショーステン

 
「時の始まりから、海は、地球上のあらゆる生命にとって大きな役割を果たしてきた。歴史を通して作曲家や作家や詩人は、海の途方もない力、壮大さ、穏やかさ、暗い深さかららインスピレーションを授かってきた……」。1831年創設のルンド大学男声合唱団 Lunds Studentsångare のアルバム『海へのあこがれ(Sea Fever)』では、数百年前の昔から今日までの作曲家たちの「海の歌」が13曲歌われます。
 
ヴォーカルアンサンブル「Anúna(アヌーナ)」を創設したアイルランドのマイケル・マッグリン Michael McGlynn は、伝統の歌のゲール語歌詞の断片に新たにメロディをつけた《Hinbarra》で漁師の生活を歌いあげました。《ハイバーバリー(High Barbary)》(ハイバーバリーの海岸)は、船乗りや海の男たちが歌い継いできた「シーシャンティ」の人気曲のひとつ。エリック・ウィテカー Eric Whitackre がラドヤード・キプリングの詩に作曲した《アザラシの子守唄》。ヴェルヨ・トルミス Veljo Tormis がルーン歌曲を素材に使って作曲した《古代の海の歌》は、タリンで行われた1980年モスクワ・オリンピックのセーリング・レースのための作品。アンデシュ・ヒルボリ Anders Hillborg が、絶えず変化する「音の色彩」を16声の深い響きの音楽に織りあげた《muo:aa:yiy::oum》は、20世紀スウェーデンの合唱音楽を代表する一作です。ルンド大学男声合唱団のリーダーでもあったユーセフ・ヘーダル Josef Hedar(1894–1960)の《ベルブイ》(打鐘浮標)。カールフェルトが『旧約聖書』のヨナの物語を基に書いたユーモラスな詩にシベリウスが作曲した《ヨナの航海》。ノルウェーのヴァルテル・オーモット Valter Aamodt の《海塩》。スウェーデンでもっとも愛されている男声合唱曲のひとつ、アルヴェーン Hugo Alfvén の《海辺の夜明け》。
 
指揮者のクリスチャン・シュルツェ Christian Schultze は、マルメ音楽大学のオルガニストと合唱指揮者など、スコーネ地方の教会音楽と合唱音楽の活動に携わり、2020年1月からルンド大学男声合唱団のリーダーを務めています。
 
[追記]
 
「ルンド大学男声合唱団」は、毎年5月1日、春の戻ってきたことを祝うコンサートを伝統的に行ってきました。このコンサートでは、グスタフ王子の作曲した《春の歌「夜明けの鳥のように愉快に」》と《行進曲「学生の楽しい日々を歌え」》、オット・リンドブラードの《田舎へのあこがれ「厳しい冬はすでに」》、ヘルマン・パルムの《ナナカマドとライラックの下に「花咲く美しい谷よ」》といった伝統の春の歌が歌われ、スウェーデンの人たちはテレビ中継を観ていて思わず、メンバーと一緒に口ずさんでしまうと言います。ルンドの合唱団の大きな魅力は「歌うこと」の自常性でしょう。彼らがレパートリーにしている「海の歌」を歌った『海へのあこがれ』では、海へ漕ぎ出した男たち、海で働く男たち、海を眺める男たちの姿が、力強い、美しい声により映し出されます。
 
3つの曲でピアノ伴奏を担当するエリサベト・ブーストレム Elisabeth Boström は、マルメ歌劇場の中心アーティストのひとりとして活動、2010年から2015年にかけて歌劇場の合唱指揮者を務めました。室内楽を中心にテレビとラジオ番組の出演や海外へのツアーに同行。歌曲の解釈と伴奏にも定評があり、このアルバムでも合唱に寄り添うスタイルの演奏がウィテカーの《アザラシの子守唄》をはじめとする音楽の魅力を高めています。
 
制作と録音は、フリーランスのエンジニアでプロデューサーのペール・ショーステン Per Sjösten が担当しました。彼がサウンド・デザインを担当した Footprint Records の多くのアルバムとはテクスチュアと音場感の異なる、合唱音楽に似合った録音です。
 
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)

『フランスのトランペット協奏曲』 Selection
BIS SACD 2523 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
アンリ・トマジ(1901–1971)
 トランペット協奏曲(Concerto pour trompette et orchestre)(1944)
 (フランク・ヴィラールのオーケストレーションによる
  オリジナル・エンディング付き)
アンドレ・ジョリヴェ(1905–1974)
 トランペット、弦楽オーケストラとピアノのための小協奏曲
 (Concertino pour trompette, orchestre à cordes et piano)(1948)*
フロラン・シュミット(1870–1958)
 トランペットと管弦楽のための組曲
 (Suite pour trompette et orchestre) Op.133(1955)
ベッツィ・ジョラス(1926–)(カデンツァ:ホーカン・ハーデンベルガー)
 11の歌曲(Onze Lieder)(1977)
アンドレ・ジョリヴェ(1905–1974)
 トランペット協奏曲第2番(Deuxième Concerto pour trompette)(1954)
  ホーカン・ハーデンベリエル(トランペット)
  ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニック管弦楽団
  ファビアン・ガベル(指揮)
  ヨアキム・スヴェンヘーデン(コンサートマスター)
  ローランド・ペンティネン(ピアノ)*
  
録音 2021年8月23日27日 ストックホルム・コンサートホール(スウェーデン)
制作 マリオン・シュヴェーベル
録音 マルティン・ナゴルニ、ホーカン・エークマン

 
スウェーデンのトランペット奏者、ホーカン・ハーデンベリエル(ハーデンベルガー) Håkan Hardenberger(1962–)の『ブランデンブルク・プロジェクト』(BIS SA 2199)と、ベッツィ・ジョラス、サリー・ビーミッシュ、オルガ・ノイヴィルトが彼のために作曲した曲による『物語(Stories)』(BIS SA 2293)につづく新作。19世紀の後期から金管楽器とりわけトランペットの演奏が音楽的にも技術的にも大きく発展したフランスの協奏的作品のアルバムです。ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニックの共演。トランペット・プレーヤーでもあるフランスのファビアン・ガベル Fabien Gabel(1975–)が指揮を担当しました。
 
アンリ・トマジ Henri Tomasi(1901–1971)の《トランペット協奏曲》は、〈アレグロとカデンツァ(Allegro et Cadence)〉〈夜想曲(Nocturne)〉〈終曲(Finale)〉という3楽章の古典的協奏曲の枠組みで「バッハから現代まで、ジャズを含み、トランペットの表現と技術のあらゆる可能性を統合することを試みた」(アンリ・トマジ)という作品です。コンサートや録音で取り上げられることの多いこの協奏曲には「オリジナル」のエンディングがあったとされ、今回、その欠落を復元した終結部による商用録音が初めて行われました。欠落部分は60小節ほど。ハーデンベリエル、ガベル、作曲者の子息のクロード・トマジが共同で復元に取り掛かり、アンリ・トマジのスペシャリスト、フランク・ヴィラール Franck Villard(1966–)が、ピアノ・リダクションだけ現存する部分のオーケストレーションを含み、完成させました。
 
アンドレ・ジョリヴェ André Jolivet(1905–1974)の《トランペット、弦楽オーケストラとピアノのための小協奏曲》(トランペット協奏曲第1番)は、「急-緩-急」に分かれた1楽章で「主題と5つの変奏」を展開させた、ネオクラシシズムとモダニズムを結合させたスタイルの作品。《トランペット協奏曲第2番》は〈メストーコンチタート(Mesto - Concitato)〉〈グラーヴェ(Grave)〉〈ジョコーゾ(Giocoso)〉の3楽章で書かれた、ジャズの気分と打楽器群の色彩が特徴的な作品です。
 
フロラン・シュミット Florent Schmitt(1870–1958)の《トランペットと管弦楽のための組曲》は、1954年に作曲され、モーリス・アンドレが初演。シュミットの代表作のひとつ《ディオニソスの祭り》に通じる、色彩のパレットとリズムの力がいっぱいに使われた、〈Gâiment(陽気に)〉〈Lent sans excès(過度にならず遅く〉〈Vif(生気にみちて)〉の3つの部分に分かれます。
 
ベッツィ・ジョラス Betsy Jolas(1926–)の《11の歌曲》は、彼女の作品の根底に流れる「音楽の声楽的性質」を思わせる曲名がつけられ、「歌曲(Lied)」という言葉からミュージシャンが連想するさまざまなことを反映させながら演奏するよう作られています。ハーデンベリエルとファビアン・ガベルが教わったジャック・ティボーが1977年に初演した作品です。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)

『ハッリ・ヴェッスマン 室内楽作品集』 Selection
Alba ABCD 511 contemporary/classical

 
ハッリ・ヴェッスマン(1949–)
 ピアノ四重奏曲(1985)
 前奏曲とシシリエンヌ(Preludi ja Sicilienne)(1984)
 (ピアノ三重奏のための)
 ピアノ三重奏曲第1番(1981)
 ピアノ三重奏曲第2番《修辞学(Retorinen)》(1992)
 ピアノ三重奏曲第3番(2000)
  KAAÅS三重奏団
   アンネマリー・オーストレム(ヴァイオリン)
   ウッラ・ランペラ(チェロ)
   ティーナ・カラコルピ(ピアノ)
  ハンナ・パッカラ(ヴィオラ)*
 
録音 2021年5月31日–6月6日 スネルマンホール(コッコラ、フィンランド)
制作、録音、編集、マスタリング サイモン・フォックス=ガール

 
KAAÅS三重奏団(カーオス三重奏団)は、2011年に創設されたアンサンブル。ヴェゲリウス・チェンバー・ストリングズ芸術監督のアンネマリー・オーストレム Annemarie Åström  のヴァイオリン、オストロボスニア室内管弦楽団メンバーのウッラ・ランペラ Ulla Lampela のチェロ、『もっと別のフィンランドのヴァイオリン作品集』(ABCD 507)を録音したティーナ・カラコルピ Tiina Karakorpi のピアノ。3人の苗字のアルファベットを並べ、フィンランド語の「混沌(カオス)」を意味するグループ名がつけられました。ヴェッスマンの室内楽曲は、彼女たちが創設以来ずっと考えていたプロジェクトのひとつでした。
 
ハッリ・ヴェッスマン Harri Wessman(1949–)は、現代フィンランドで独自の道を歩む作曲家のひとり。「モダニストの語法に背を向け……ロマンティックな心情と内面的なリリシズムに支えられた作品……」(キンモ・コルホネン)を書いてきました。1987年の《トランペット協奏曲》がもっともよく知られ、児童合唱のための《雪の下の流れは力なく(Vesi Vasyy Lumen Alle)》などの合唱曲も親しまれています。60を超す数の彼の室内楽の作品から、このアルバムでは、ピアノのついた5曲が演奏されます。
 
《ピアノ四重奏曲》は、クフモ室内楽フェスティヴァルと「フィンランド・ピクチャー・マガジン」の委嘱により作曲されました。〈アパッショナート〉〈ノスタルジコ〉〈ラッセニャート(諦めの)〉〈ブルレスコ〉の4楽章。オストロボスニア室内管弦楽団のソロ・ヴィオラ奏者ハンナ・パッカラ Hanna Pakkala がヴィオラを担当しています。《前奏曲とシシリエンヌは、若い演奏者のために書かれた作品。《ピアノ三重奏曲第2番》は、〈導入(Exordium)〉〈陳述と脱線(Narratio cum digressione)〉〈命題(Propositio)〉〈論述(Argumentatio)〉〈結論(Peroratio)〉の5楽章で構成され《修辞学》の副題がつけられました。ジャズのハーモニーも部分的に感じられる《第1番》とエルッキ・メラルティン室内楽コンペティションの課題曲として委嘱された《第3番》の2つの《ピアノ三重奏曲》は、ともに1楽章の作品。シニッカ・フルスカイネンの『Kevättä ilmassa(春の気配)』が、ジャケットのカバーアートに使われました。
 
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)

『GALAXYMPHONY II』 Selection
Euro Arts 20 68717 (CD)/20 68714 (Blu-ray) film music/classical

 
『GALAXYMPHONY II- Galaxymphony Strikes Back』
 映画『未知との遭遇』- オープニング/未知なる輝き
 (ジョン・ウィリアムズ 曲)
 映画『アポロ13』- 交響的組曲(ジェームズ・ホーナー 曲)
 映画『インターステラー』- 組曲(ハンス・ジマー 曲)
 映画『ブレードランナー』- Rachel’s Song(ヴァンゲリス 曲)
 映画『エイリアン3』- レント(エリオット・ゴールデンサール 曲)
 映画『007 ムーンレイカー』(ジョン・バリー 曲)
 映画『スタートレック:ファーストコンタクト』- エンド・クレジット
 (ジェリー・ゴールドスミス 曲)
 映画『ゼロ・グラビティ』(スティーヴン・プライス 曲)
 映画『銀河ヒッチハイク・ガイド』- イルカ
 (ジョービー・タルボット 曲)*
 映画『アバター』- I See You(ジェームズ・ホーナー 曲)
 映画『オデッセイ』- 組曲(ハリー・グレグソン=ウィリアムズ 曲)
 映画『スター・ウォーズ エピソード7/フォースの覚醒』- レイのテーマ
 (ジョン・ウィリアムズ 曲)
 『シュラウディッド・デスティニー』- スター・ウォーズ・ロング・テール:エピファニー
 (ペーター・ドゥーウ 曲)
 テレビドラマ『マンダロリアン』(ルドヴィグ・ゴランソン 曲)
 映画『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』
  - 「ジン・アーソと希望」組曲(マイケル・ジャッキーノ 曲)
 映画『スター・ウォーズ エピソード8/最後のジェダイ』
  - The Rebellion Is Reborn(ジョン・ウィリアムズ 曲)
 映画『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』- 帝国のマーチ
 (ジョン・ウィリアムズ 曲)
 映画『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』
  -イウォーク・セレブレーションとフィナーレ(ジョン・ウィリアムズ 曲)
  デンマーク国立交響楽団 合唱団 アントニー・ヘルムス(指揮)  
  クリスティーナ・オストラン(コンサートマスター)
  トゥーヴァ・ヘミングセン(メゾソプラノ)
  クリスティーネ・ノンボ・アナセン(ソプラノ)
  ステフェン・ブルーン・ラアヴィー(バス)
  デイヴィッド・ベイトソン(ナレーション)
  ヤコプ・ヴェーバー(歌) DRジュニア合唱団員
 
[* 『銀河ヒッチハイク・ガイド』は、Blu-ray のみ収録]
 
収録 2021年 DR(デンマーク放送)コンサートホール(コペンハーゲン)(ライヴ)
制作 ラース・C・ブルーン
録音 オシアン・リューナー
 
[Blu-ray: 1080/60i 16:9 Full HD PCM stereo/DTS-HD Master Audio 5.1 86min Region All]

 
デンマーク国立交響楽団の「ガラコンサート」は、最初の『Gaming in Symphony』以来、「コンサート」になじみのない若い世代を中心に人気を保ちつづけています。2019年に行われた『Murder at the Symphony(シンフォニーホールの殺人)』(20 65207/20 65204)につづく第7回は、「Galaxymphony Strikes Back(ギャラクシンフォニーの逆襲)」のサブタイトルをつけた『GALAXYMPHONY II』。2017年の『GALAXYMPHONY』(20 65211/20 65214)の「銀河の交響曲」が「パワーアップ」して戻ってきました。
 
ジョン・ウィリアムズが音楽を書いた『未知との遭遇』から『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』まで、ジェームズ・ホーナー、ハンス・ジマー、エリオット・ゴールデンサール、ジョン・バリー、ジェリー・ゴールドスミス、スティーヴン・プライス、ハリー・グレグソン=ウィリアムズたちの音楽をはさみ、『スター・ウォーズ』の「スピンオフ」として制作された『ローグ・ワン』と『マンダロリアン』の音楽を加えたプログラム。『ローグ・ワン』は、『エピソード4/新たなる希望』につながるエピソードを映画に作り、全世界で10億ドルの大ヒットを記録した作品。『マンダロリアン』は、『アイアンマン』を監督したジョン・ファヴローが脚本を書いた「宇宙西部劇」。それぞれ、マイケル・ジャッキーノとスウェーデンのルドヴィグ・ゴランソン(ルードヴィグ・ヨーランソン)が音楽を書いています。コンサートの中頃で演奏される『スター・ウォーズ』ファンによる「スター・ウォーズ・ロング・テール(A Star Wars Long Tale)」の『シュラウディッド・デスティニー(Shrouded Destiny)』の音楽は、映画とゲームの音楽を主に手がけているデンマークのペーター・ドゥーウ Peter Due が作曲しました。
 
このコンサートの曲は、映画のサウンドトラック、あるいは、作曲者が演奏会用に作った「組曲」のオリジナルのオーケストレーションで演奏されます。『GALAXYMPHONY』と同じオランダのアントニー・ヘルムス(ハーマス) Antony Hermus(1973–)の指揮。《帝国のマーチ》につづき、オーケストラのプレーヤーたちも「歌」で加わる『ジェダイの帰還』の「イウォーク・セレブレーション」と『スター・ウォーズ』のテーマを織りこんだ「フィナーレ」でコンサートが閉じられます。
 
[追記]
 デンマーク国立交響楽団の首席チェロ奏者ヘンリク・ダム・トムセン Henrik Dam Thomsen の弾く『ローグ・ワン』組曲のソロは、このコンサートのハイライトのひとつです。
 
価格 3,355円(税込価格)(本体価格 3,050円)(CD) 
価格 4,950円(税込価格)(本体価格 4,500円)(Blu-ray)
 
 

『バーバンクの変わり者 - アルベット・シュネルツェル 室内楽と管弦楽の作品集』 Selection
BIS SACD 2483 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) contemporary/classical  

 
アルベット・シュネルツェル(1972–)
 バーバンクの変わり者(A Freak in Burbank)(2007)(管弦楽のための)
 悪魔と踊る(Dance with the Devil)(2000)(ピアノ・ソロのための)*
 私の手紙を燃やして-クララの思い出
 (Burn My Letters - Remembering Clara)(2019)(室内管弦楽のための)
 アポロンの踊り(Apollonian Dances)(2003)
 (ヴァイオリンとピアノのための)**
 凍りついた景色(Frozen Landscape(2002)(チェロとピアノのための)***
 ヴァイオリン協奏曲第2番《夜の歌(Nocturnal Songs)》(2018)†
  ヴェステロース・シンフォニエッタ
  サイモン・クロフォード=フィリップス(指揮)
  ヘンリク・モーヴェ(ピアノ)* セシリア・シリアクス(ヴァイオリン)**
  ダーヴィド・フアン(ピアノ)**/*** ヤコブ・コラーニ(チェロ)***
  イリヤ・グリンゴルツ(ヴァイオリン)†
 
[楽器 Violin (Glingolts): Antonio Stradivarius ‘ex-Prové’, Cremona 1719/Violin (Zilliacus): N. Gagliano/Cello: Joseph Gratiani 1756/Piano: Steinway D]
 
録音 2019年11月26日–29日(ヴァイオリン協奏曲)、2020年6月15日–17日(室内楽曲)、2021年4月6日–8日(バーバンク、私の手紙) ヴェステロース・コンサートホール(ヴェステロース、スウェーデン)
制作、録音 イェンス・ブラウン

 
アルベット・シュネルツェル Albert Schnelzer は、1972年生まれ。スカンディナヴィアの彼の世代でもっとも広く注目を集める作曲家のひとりです。チェロ協奏曲《狂気のダイアモンド》など3つの管弦楽作品を収めた『郊外の話』(BIS SA 2313)に次ぐシュネルツェルの作品集。アルバム・タイトル曲の《バーバンクの変わり者》は、「今日の音楽に影響を及ぼしたはず」のヨーゼフ・ハイドンと、ロサンゼルス郊外のバーバンクで子供時代を過ごし、『シザーハンズ』や『マーズ・アタック』といった映画を作ってきたティム・バートン監督という、「遊び心とバーレスクをこよなく愛する」ところで似ている2人の芸術家をテーマに作曲されました。この作品は、ニュー・ストックホルム室内管弦楽団による2008年の初演以後、30を超すオーケストラがベルリン・フィルハーモニーやアムステルダム・コンセルトヘボウといったホールで70回以上演奏してきた人気曲です。サイモン・クロフォード=フィリップス Simon Crawford-Phillips とヴェステロース・シンフォニエッタ Västerås Sinfonietta による2021年4月のセッション演奏が、世界初録音です。
 
ヴァイオリン協奏曲第2番《夜の歌》は、ウプサラ室内管弦楽団、スウェーデン室内管弦楽団、ヨンショーピング・シンフォニエッタがイリヤ・グリンゴルツ Ilya Gringolts のために共同委嘱した作品です。「覚醒状態と睡眠という2つの異なる世界にはさまれた、重力のない浮遊する感覚」を背景にした4楽章で書かれています。空間に漂う感覚をとらえることを試みた〈空中に浮遊する(Levitate)〉、1393年にフランス王シャルル六世がパリで開催した〈燃える人の舞踏会(Bal des Ardents)〉、シュネルツェルの夢に現れた「奇妙な想像上の動物たち」の〈行列(Procession)〉、夢から脱出したいと思いながらも行き場のない〈逃げろ(Run)〉。2019年4月11日、ウプサラで初演。この曲も、この演奏が世界初録音です。
 
もうひとつのオーケストラ曲《私の手紙を燃やして-クララの思い出》は、シュネルツェルがクララ・シューマンのエネルギーと「生への渇望」を表現することを試みた作品です。ひとつの主要主題が「クララ・シューマン」を表す「荒々しく自由な」フルートと「ヨハネス・ブラームス」の「思慮深い」ファゴットに分かれ、対話していきます。「室内管弦楽」の版を使った、世界初録音です。
 
室内楽作品が3曲。「リストたちのロマンティックなヴィルトゥオーゾ曲と『われわれの時代』のヘヴィメタル音楽という、2つの『悪魔的』伝統を交配させた」ソロ・ピアノのための《悪魔と踊る》。異なるクレズマースケールをハーモニー素材に使った〈アポロンの誕生(The Birth of Apollo)〉〈青年期のアポロン(Adolescent Apollo)〉の2楽章で書かれたヴァイオリンとピアノのための《アポロンの踊り》は、ギリシャ神話の神からイスピレーションを得た作品。《凍りついた景色》は、シュネルツェルが若い頃。スウェーデン北部の山脈で過ごした冬のある日の鮮やかな記憶を描いたチェロとピアノのための作品です。
 
[追記]
《バーバンクの変わり者》が、2010年8月に「BBC Proms」で演奏された後、あるブロガーが「シュネルツェルは、われわれの時代の『魔法使いの弟子』を創った」と書いた、という話を知りました。シュネルツェルをはじめとする、ロックやヘヴィメタルで育った世代の作曲家から目が離せなくなります。
 
価格 2,915円(税込価格)(税抜価格 2,650円)

『氷の国 - 永遠の音楽(Ice Land - The Eternal Music)』 Selection
Harmonia Mundi HMM 905330 contemporary/classical  

 
『氷の国 - 永遠の音楽(Ice Land - The Eternal Music)』
アンナ・ソルヴァルスドウッティル(1977–)
 私はひざまずき(Ad genus)(2016)
 (ソプラノ・ソロ、混声合唱と弦楽オーケストラのための)*
ソルケトル・シーグルビョルンソン(1938–2013)
 お聞きください、天の創り主よ(Heyr, himna smiður)(1973)
トリグヴィ・M・バルドヴィンソン(1965–)
 夕べの祈り(Kvöldvers)(2006)
ヒャウルマル・ヘルギ・ラグナルソン(1952–)
 アヴェ・マリア(Ave Maria)
アンナ・ソルヴァルスドウッティル(1977–)
 お聞きください、天の高みにいます神よ(Heyr þú oss himnum á)
シーグルズル・セーヴァルソン(1963–)
 マニフィカト(Magnificat)(2018)
アトリ・ヘイミル・スヴェインソン(1938–2019)
 マリアに歌う秋の詩「マリアよ、あなたの外套をお貸しください」
 (Haustvísur til Maríu)
ヨウン・アウスゲイルソン(1928–)
 おだやかな陽だまりの流れに(Hjá lygnri móðu)
スノッリ・シグフース・ビルギソン(1954–)
 愛の歌「それでもなお、真の愛は育まれる」(Afmorsvísa)
ヨウン・レイフス(1899–1968)
 悲歌(Hinsta kveðja) Op.53(弦楽オーケストラのための)
シーグルズル・セーヴァルソン(1963–)
 レクイエム(Requiem)(2016)
シガー・ロス(ガイ・バトン(1988)編曲)
 フリョウタヴィーク(Fljótavík)(2008)
 (ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための)
  ケンブリッジ・クレア・カレッジ合唱団
  グレアム・ロス(指揮)
  ドミートリー・アンサンブル
  ステファニー・ゴンリー(ヴァイオリン・ソロ)
  キャロリン・サンプソン(ソプラノ・ソロ)
 
録音 2021年7月 オール・ハロウズ教会(ロンドン、イングランド)
芸術監督、録音 ジョン・ラター
マスタリング ブラッド・マイケル

 
「火と氷の国」アイスランドは、歌の歴史が音楽の歴史と言われます。ケンブリッジ・クレア・カレッジ合唱団を指揮するグレアム・ロス Graham Ross は、この国の音楽に深い関心を寄せ、アイスランドに生まれた作曲家たちと密接なコラボレーションをつづけてきました。過去半世紀のアイスランド音楽に焦点を当てる『氷の国』は、その集大成のひとつと言えるアルバムです。このアルバムでは、ソルケトル・シーグルビョルンソン Þorkell Sigurbjörnsson(1938–2013)が13世紀の詩に作曲した《お聞きください、天の創り主よ》、アトリ・ヘイミル・スヴェインソン Atli Heimir Sveinsson(1938–2019)の《マリアに歌う秋の詩》、ヨウン・アウスゲイルソン Jón Ásgeirsson(1928–)の《おだやかな陽だまりの流れに》、スノッリ・シグフース・ビルギソン Snorri Sigfús Birgisson(1954–)の《愛の歌》といった、アイスランドの人々に広く愛されている作品とともに、「今」の作曲家たちの書いた新しい作品も演奏されます。
 
アンナ・ソルヴァルスドウッティル Anna Þorvaldsdóttir(1977–)の《私はひざまずき》は、ブクステフーデの《われらがイエスの四股》に対する現代の作曲家たちの「答え」のひとつとして、「膝」を題材にしたグヴズルーン・エーヴァ・ミーネルヴドウッティルの詩に作曲された作品。『ルカによる福音書』の「マリアの賛歌」(1章46節–55節)をテクストとするシーグルズル・セーヴァルソン Sigurður Sævarsson(1963–)の《マニフィカト》は、グレアム・ロスによるケンブリッジ・クレア・カレッジ合唱団のための委嘱作。2016年に作曲された彼の《レクイエム》は、これが初録音です。トリグヴィ・M・バルドヴィンソン Tryggvi M. Baldvinsson(1965–)の《夕べの祈り》は、聖職者ハトルグリームル・ピェートゥルソンの「闇の中の導きの光、キリスト」を詠んだ詩に作曲され、2021年、ケンブリッジ・クレア・カレッジ合唱団によりハトルグリーム教会で歌われました。
 
このアルバムのプログラムには、アンナ・ソルヴァルスドウッティルの《私はひざまずき》で演奏したドミートリー・アンサンブルによる弦楽オーケストラ曲が2曲、含まれています。交響曲《サガの英雄たち》(BIS 730)などの作品によりアイスランドでもっとも国際的に知られる作曲家、ヨウン・レイフス Jón Leifs(1899–1968)が母の死を悼んで作曲した《悲歌》。アイスランドの西部フィヨルド地方の湾を歌ったロックバンド「シガー・ロス(シーグル・ロウス) Sigur Rós」の《フリョウタヴィーク》は、ドミートリー・アンサンブルのヴァイオリニスト、ガイ・バトン Guy Button の編曲で演奏されます。セッションにはイギリスのソプラノ、キャロリン・サンプソン Carolyn Sampson が参加。《私はひざまずき》と《レクイエム》の〈永遠の光(Lux æterna)〉のソロを歌っています。
 
クレア・カレッジで学び、作曲家、指揮者、編曲者として主に合唱のジャンルで活躍するジョン・ラター John Rutter が芸術監督と録音エンジニアリングを担当したアルバムです。
 
価格 2,860円(税込価格)(税抜価格 2,600円)

 

『ラ・ヴァルス(La Valse)』 Selection
BIS SACD 2438 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
モーリス・ラヴェル(1875–1937)
 クープランの墓(Le tombeau de Couperin)(1914–17 orch.1919/2013)*
 (第2曲・第6曲オーケストレーション ケネス・ヘスケス)
  プレリュード(Prélude) フーガ(Fugue) フォルラーヌ(Forlane)
  リゴドン(Rigaudon) メヌエット(Menuet) トッカータ(Toccata)
 道化師の朝の歌(Alborada del gracioso)(1904-05 orch.1918)**
 海原の小舟(Une barque sur l’océan)(1904-05 orch.1906?)**/†
 亡き王女のためのパヴァーヌ(Pavane pour une infante défunte)
 (1899 orch.1910)*
 古風なメヌエット(Menuet antique)(1895 orch.1929)*
 ラ・ヴァルス(La Valse)(1919–20)**
  ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニック管弦楽団
  サカリ・オラモ(指揮)
  マルクス・マスクニーティ(ホルン)†
  
録音 2020年2月12日–15日 **、2021年3月24日–26日 * ストックホルム・コンサートホール(スウェーデン)(セッション録音、ライヴ録音)
制作 ハンス・キプファー **、マリオン・シュヴェーベル *
録音 トーレ・ブリンクマン

 
ロイヤル・ストックホルム・フィルハーモニックとサカリ・オラモ Sakari Oramo は、アンデシュ・エリーアソンの交響曲(BIS SA 2438)やヴィクトリア・ボリソワ=オッラスの《アンジェラス》(BIS SA 2288)など現代スウェーデンの作品を積極的に録音する一方、カール・ニルセンの交響曲全曲(BIS SA 2028/2048/2128)やエルガーの交響曲(BIS SA 1879/1939)といったレパートリーの録音も進め、国際的に高い評価と人気を獲得してきました。新作アルバムは、ラヴェルの管弦楽作品集です。《ラ・ヴァルス》と、ピアノのための曲をラヴェル自身が管弦楽用に編曲した5曲。《クープランの墓》は、ラヴェルのオーケストレーションによる〈プレリュード〉〈フォルラーヌ〉〈リゴドン〉〈メヌエット〉に、イギリスの作曲家ケネス・ヘスケス Kenneth Hesketh(1968–)がオーケストレーションを手がけた〈フーガ〉と〈トッカータ〉を加え、原曲と同じ順序で演奏されます。貴族的ともいわれる気品をもった凛としたたたずまいのオーケストラと、大学教授とピアニストの両親の下で育った指揮者が、深い共感を寄せる音楽。
 
[追記]
2008年のシーズンからストックホルム・フィルハーモニックの首席指揮者と芸術監督を務めたサカリ・オラモは、2021年のシーズンでこの地位を退きました。オラモは、2013年、BBC交響楽団の首席指揮者に就任した時にストックホルムを離れることも考えたものの、このオーケストラが彼にとってあまりにも大切な存在だということに気づき、考えを変えたといいます。「(ストックホルムのオーケストラで)私は、現代の音楽の世界にはめずらしい、調和とそこにある共同体としてのオーケストラの感覚を知った」(”Finnish Music Quarterly 2021”)。2021年5月、シベリウスの全交響曲を演奏する「シベリウス・フェスティヴァル」が行われるとともに、オラモは、オーケストラの桂冠指揮者に任命されました。
 
価格 2,915円(税込価格)(税抜価格 2,650円)

 

『Renewal(リニューアル)』 Selection
BIS SACD 2549 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) contemporary/classical

 
ジョアナ・マーシュ(1970–)(ジュリアン・アズクール 編曲)
 冬の家には(In Winter’s House)(2019)(弦楽オーケストラのための)
キャロライン・ショー(1982–)
 間奏曲(Entr’acte)(2011/2014)(弦楽オーケストラのための版)
オスバルド・ゴリホフ(1960–)
 3つの歌(Three Songs)(ソプラノと弦楽オーケストラのための)*
  空駆ける馬の夜(Night of the Flying Horses)
  色褪せた月(Lúa Descolorida)
  なんとゆっくりと風は(How Slow the Wind)
フェリクス・メンデルスゾーン(1809–1847)(ジュリアン・アズクール 編曲)
 弦楽四重奏曲第6番 ヘ短調 Op.80/MWV R37(1847)
キャロライン・ショー(1982–)(ジュリアン・アズクール 編曲)
 つばめは巣をかけて(and the swallow)
  ユナイテッド・ストリングズ・オブ・ヨーロッパ(USE)
  ジュリアン・アズクール(ディレクター、コンサートマスター)
  ルビー・ヒューズ(ソプラノ)*
 
録音 2021年3月8日、9日、25日、26日 セント・シラス教会(ケンティッシュ・タウン、ロンドン、イングランド) 
制作 マシュー・ベネット
録音 デーヴ・ローウェル

 
ロンドンに本拠を置くアンサンブル「ユナイテッド・ストリングズ・オブ・ヨーロッパ(United Strings of Europe)」(USE)は、2020年、デビュー・アルバム『In Motion』(動いている)(BIS SA-2529)をリリース、「独創的なプログラムと『高度な技術による表現豊かな』演奏」(「ザ・タイムズ」)と称賛された活動を「録音」という形で示してみせました。アルバム第2作『Renewal(リニューアル)』。「喪失と変質」をテーマに据え、リーダーのジュリアン・アズクール Julian Azkoul が「USE」のスタイルに合わせて編曲、選曲したプログラムが組まれています。
 
ジョアナ・マーシュ Joanna Marsh が、「テネブレ」合唱団から委嘱を受け、「暗闇と光、再生の心象をおとぎ話の風景に詠んだ」ジェーン・ドレイコットの詩に作曲した《冬の家には》の弦楽オーケストラのための編曲。キャロライン・ショー Caroline Shaw が、メヌエットとトリオという古典の形式を「独創性と楽しさを等分」して現代に「再生」した弦楽四重奏のための作品を彼女自身が弦楽オーケストラのために編曲した《間奏曲》。
 
オスバルド・ゴリホフ Osvaldo Golijov の《3つの歌》は、ソプラノと弦楽オーケストラのための作品です。彼が音楽を担当したサリー・ポッターの映画『The Man Who Cried』(邦題『耳に残る君の歌声』)のために書いた〈Close Your Eyes〉のバリー・デイヴィスによるイディッシュ語の子守歌から始まる〈空駆ける馬の夜〉。ロサリア・デ・カストロのガリシア語の詩による〈色褪せた月〉。エミリ・ディキンソンの詩をテクストにした〈なんとゆっくりと風は〉。メンデルスゾーンが、姉ファニーの突然の死に突き動かされて作曲したといわれる《弦楽四重奏曲第6番 ヘ短調》。キャロライン・ショーが、シリア難民とアメリカとメキシコの国境に押しよせた難民の姿からインスピレーションを受け、『詩篇84番』をテクストに作曲した《つばめは巣をかけて》。
 
『In Motion』と同じスタッフが制作と録音を担当しました。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)

 

『エスクアロ5+ピアソラ』 Selection
BIS SACD 2605 SACD hybrid (4.0 surround/stereo) classical  

 
アストル・ピアソラ(1921–1992)
 ブエノスアイレスの春(Primavera Porteña) 孤独(Soledad)
 タンゴ組曲(Tango Suite)(ギターとピアノのための編曲)
 バンドネオン、ギターとベース(Bandoneón, Guitarra y Bajo)
 アディオス・ノニーノ(Adiós Nonino) フラカナーパ(Fracanapa)
 タンゴの歴史(Histoire du Tango)
 (アコーディオン、ギターとコントラバスのための編曲) 
 コントラバス(Contrabajisimo)
  エスクアロ5
   ヤソン・ケラミディス(ヴァイオリン)
   アレクサンダー・クラリオノク(アコーディオン)
   フランツ・ハラース(ギター)
   デボラ・ハラース(ピアノ)
   フィリップ・シュトゥーベンラウフ(コントラバス)
 
録音 2021年2月25日–28日 十字架教会 アルベルト・レンプ・ホール(シュヴァービング、ミュンヘン)
制作 デボラ・ハラース( バンドネオン、タンゴの歴史)、アレクサンダー・クラリオノク(組曲)、セバスティアン・ブラウン(他作品)
録音 セバスティアン・ブラウン

 
ピアソラ生誕100周年を記念する「ピアソラ・アルバム」。バンドネオン、ヴァイオリン、ピアノ、ギター、コントラバスというピアソラの「キンテート・タンゴ・ヌエボ(Quinteto Tango Nuevo)」に倣った楽器編成によるアンサンブルにはドイツ在住の「ピアソラを愛する」音楽家たちが結集、ピアソラの曲《Escualo(鮫)》にちなみ「エスクアロ5(Escualo5)」を名乗りました。ヤソン・ケラミディス Iason Keramidis は、ミュンヘン・フィルハーモニーの副コンサートマスター。ギリシアに生まれ、インゴルフ・トゥルバンとウルフ・ヘルシャーにヴァイオリン、ミヒャエル・ウーデとマルクス・シュタンゲに室内楽を学びました。アレクサンダー・クラリオノク Alexander Kuralionok は、ロシア・アコーディオンの伝統を引き継ぐ、若い世代を代表するアコーディオン奏者のひとりと言われます。ベラルーシ国立音楽大学でヴァレンティン・シャバンに学び、ミュンヘンで修士号を取得。現代音楽を中心とする演奏家、編曲者、作曲家として活動しています。バイエルン放送交響楽団のソロ・コントラバス奏者、フィリップ・シュトゥーベンラウフ Philipp Stubenrauch は、バイエルン放送交響楽団アカデミーで学んだ後、ジュネーヴのフランコ・ペトラッキに師事しました。グバイドゥーリナの作品集『悔い改め』(BIS SA-2056)でハラースたちと共演しています。そして、フランツと Franz Halász とデボラ Débora Halász のハラース夫妻。
 
このアルバムのプログラムは、ピアソラを代表する作品で組まれました。彼の最初のタンゴ・クインテット(1960–74)のために書かれた、「学術的西洋エリート音楽の規範に適うことを意図した」とされる《ブエノスアイレスの春》。ピアソラ の「ノスタルジックな憧れの悲しみを描いた」音楽を代表する《孤独》。デボラ・ハラースが「ギターとピアノのため」に編曲した、セルジオとオダイルの「アサド兄弟」のギター・デュオのための《タンゴ組曲》。「チャーミングなエンタテインメント・ミュージック」《バンドネオン、ギターとベース》。1959年、父の訃報に接したピアソラが、アルゼンチンでの葬儀から戻り、ニューヨークの部屋に籠もって作曲した《アディオス・ノニーノ》。ピアソラのライヴァルのひとり、伝統的タンゴのフランシスコ・カナロの「ヴェローナの仮面舞踏会のマスク」を意味するニックネームを曲名にした《フラカナーパ》。彼が作曲したもっとも急進的な作品のひとつ《コントラバス》。エスクアロ5による「アコーディオン、ギターとコントラバス」の編曲で演奏する《タンゴの歴史》が、「売春宿 1900(Bordel 1900)」「カフェ 1930(Café 1930)」「ナイトクラブ 1960(Nightclub 1960)」「今日のコンサート(Concert d’aujourd’hui)」のそれぞれの場所と時代の空気をリアルに伝えます。ハラースの『スペイン』(BIS SA 2565)と同じミュンヘンの十字架教会内のホールでの録音です。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)
 

 

『ラグナロク』 Selection
Simax PSC 1371 contemporary/classical

 
ピョートル・チャイコフスキー(1840–1893)
 弦楽セレナード ハ長調 Op.48
ヘンニング・クラッゲルード(1973–)
 ラグナロク -太陽の娘(Ragnarok - Solens Datter)
 (弦楽オーケストラのための)
ピョートル・チャイコフスキー(1840–1893)
 ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.35
  ヘンニング・クラッゲルード(ヴァイオリン)
  アークティック・フィルハーモニック
  クリスチャン・クルクセン(指揮)
 
[楽器 Violin: Guarneri del Gesù, 1744]
  
録音 2018年5月、2020年2月 ストルメン・コンサートホール(ボードー)(セレナード、協奏曲)、2019年5月 ハーシュタ文化の家(Harstad Kulturhus)(ハーシュタ、トロムス、ノルウェー)(ラグナロク)
制作、編集 ショーン・ルイス
録音 アルネ・アクセルベルグ 

 
ヴァイオリニストで作曲家、ヘンニング・クラッゲルード Henning Kraggerud の新作アルバム。アークティック・フィルハーモニックのレパートリーから《弦楽セレナード》、クラッゲルードが2010年にトマス・ダウスゴー指揮デンマーク国立交響楽団と共演して「BBC Proms」で弾いた《ヴァイオリン協奏曲》と、2つのチャイコフスキー作品、そして、「作曲家」クラッゲルードの作品。
 
このアルバムのライナーノートはクラッゲルードがみずから筆を執りました。「1945年7月16日の早朝、より具体的には午前5時30分、朝のラジオショー『ヴォイス・オブ・アメリカ』が、すでに起きていた少数の人たちのためにチャイコフスキーの《セレナード》を流していた。同じ時刻、ニューメキシコの砂漠で密かに世界最初の核爆弾のスイッチを押す時が近づいていた。トリニティ実験のカウントダウンはすでに始まっている……民間と軍の放送の周波数が混同してしまったため、チャイコフスキーの音楽が、最後のカウントダウンと起爆の伴奏をすることとなった……」。
 
クラッゲルードの《ラグナロク -太陽の娘(Ragnarok - Solens Datter/The Sun’s Daughter)》は、彼が音楽監督を務めるアークティック・フィルハーモニック室内管弦楽団のコンサート『創造から終末のラグナロクへ(From Creation to Ragnarok)』のために書かれた作品です。このコンサートでは、トール・オーゲ・ブリングスヴェール Tor Åge Bringsværd(1939–)が北欧の創造神話に基づいて書いたテクストをインスピレーションにしたノルウェーを中心とする作曲家8人の作品が、リングスヴェール自身のナレーションを交えて演奏されました。クラッゲルードの作品では、『エッダ』の「巫女の予言」で語られる「神々の終末」の「希望、夢、最後の(それゆえに、最初の)男と女の絶望、そして、太陽の娘の照らした、露の滴を通って明るく輝いてくる不思議な最初の光」の心象が描かれています。
 
チャイコフスキーの《ヴァイオリン協奏曲》は、「見事なピアノパートは、それ自体が芸術作品だ」とクラッゲルードが言う、管弦楽譜の出版に先立って作曲者が作った「ヴァイオリンとピアノ」の第一版の「テンポ」を重視して演奏され、《弦楽セレナード》では、チャイコフスキー自身による「きわめて興味深い」(クラッゲルード)4手のピアノの編曲が参照されました。いきすぎた感情移入も大げさな身振りもなく、チャイコフスキーの作品の高貴な姿を映した演奏です。
 
指揮者のクリスチャン・クルクセン Christian Kluxen(1981–)は、コペンハーゲン生まれのデンマークの指揮者です。カナダのヴィクトリア交響楽団の音楽監督を務め、2019年1月、クリスチャン・リンドベリの後任としてアークティック・フィルハーモニックとアークティック・オペラの首席指揮者に就任、3シーズン目に入りました。
 
[追記]
クラッゲルードのこのアルバムを聴きながら、彼が師事したカミラ・ウィックスの録音が残されたグラズノフの協奏曲やヴォーン・ウィリアムズの《揚げひばり》(PSC 1832)の音楽を思い出しました。
 
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円)

 

『イプ・グリンデマンの協奏曲』 Selection
Dacapo 6.220665 SACD hybrid (Multichannel/stereo)  classical

 
イプ・グリンデマン(1924–2019)
 トランペットと管弦楽のための協奏曲
 (Concerto for Trumpet and Orchestra)(1962)
 トロンボーンと管弦楽のための協奏曲 
 (Concerto for Trombone and Orchestra)(2017)
 メドレー(Medley)(2020)
 (イプ・グリンデマン、ヴォルフガング・ケーファー 編曲)
  Strøget/The Little Mermaid/Adam’s Theme/Take Off
  (ストロイエズ/人魚姫/アダムのテーマ/離陸)
  ペール・モッテン・ビュー(トランペット)
  ローバト・ホルムステズ(トロンボーン)
  オーゼンセ交響楽団 ジョルダーノ・ベッリンカンピ(指揮)
 
録音 2019年5月20日–23日 オーゼンセ・コンサートホール、カール・ニルセン・ホール(協奏曲)、2020年9月25日 オーゼンセ・コンサートホール(オーゼンセ、デンマーク)(メドレー)
制作・録音・編集 ショーン・ルイス(協奏曲)、メテ・ドゥーウ(メドレー)

 
イプ・グリンデマン Ib Glindemann(1924–2019)は、デンマークのジャズ史上もっとも重要な音楽家のひとりと言われています。王立デンマーク音楽アカデミーでトランペットを学び、ランゲラン島で亡くなるまでバンドリーダー、トランペッター、作曲家として衰えることのない活動をつづけました。幅広いジャンルの作曲家として知られ、ジャズを中心に映画と演劇、クラシカル音楽コンサートのための作品を手がけました。《トランペットと管弦楽のための協奏曲》は、王立デンマーク管弦楽団のクヌーズ・ホウヴァルト Knud Hovaldt が1962年に初演し、アメリカでたびたび演奏した後、1963年にグリンデマンの指揮でハイドンの協奏曲と一緒に RCA に録音した作品です。祝祭、軍隊、サーカスといったグリンデマンの身近な領域をベースにトランペットのソロに活躍の場を与えた、2つの「アレグロ」の楽章がセンチメンタルな「アンダンテ」をはさむ3楽章で書かれています。
 
《トロンボーンと管弦楽のための協奏曲》は、グリンデマン、オーゼンセ交響楽団と首席トロンボーン奏者のローバト・ホルムステズ Robert Holmsted の三者のコラボレーションを具体的な音楽にした作品です。幻想的な気分に始まり、トロンボーン・ソロのファンファーレをきっかけに華やかな音楽が展開していく第1楽章〈アレグロ・ジョコーゾ〉。一連の夢のシーンがガーシュウィン、アルフレッド・ニューマン、マックス・スタイナーの音楽を連想させる第2楽章〈アダージョ・カンタービレ〉。ソリストとオーケストラの「息もつけないほどの対話」の第3楽章〈アレグロ・リゾルート〉。世界初録音の作品です。
 
《メドレー》は、オーゼンセ交響楽団とチェコ系デンマークの編曲者ヴォルフガング・ケーファー Wolfgang Käfer のコラボレーションから生まれた、4つの小品を集めて「組曲」にした作品です。コペンハーゲンのショッピング通りの名をつけた最初の部分〈Strøget(ストロイエズ)〉は、街の日常をスケッチした小さなワルツ。「フルートとピアノと弦楽アンサンブルの交わす音楽がフランスの作曲家ミシェル・ルグランを思わせる」〈The Little Mermaid(人魚姫)〉。オーレ・ロース監督の映画『Manden der ville være skyldig/The Man Who Wanted to Be Guilty(有罪を望んだ男)』の主人公のためのオリジナル・スケッチ〈Adam’s Theme(アダムのテーマ)〉。映画『Jet Pilots(ジェット・パイロット)』のためにグリンデマンが作曲した音楽から〈Take Off(離陸)〉。この曲も初録音です。
 
ペール・モッテン・ビュー Per Morten Bye は、ノルウェーのトロンハイム生まれ。王立デンマーク音楽アカデミーでオーレ・アナセンとクアト・ペーザセンに学び、19歳の時にオーフス交響楽団に入団しました。オーフス金管五重奏団とオーフス・シンフォニエッタでも演奏。王立デンマーク管弦楽団とマレーシア・フィルハーモニック管弦楽団で首席トランペット奏者として演奏、2007年からオーゼンセ交響楽団の首席奏者を務めています。ビューの同僚、トロンボーンのホルムステズは、王立デンマーク音楽アカデミーのトゥールビョーン・クルーンのクラスで学び、オーゼンセのデンマーク国立音楽アカデミーに移籍、1996年に卒業しました。1992からオーゼンセ交響楽団で演奏、1994年に首席奏者に就任しました。
 
価格 2,695円(本体価格)(税込価格 2,450円)
 

 

『Against All Odds(あらゆる困難を乗り越え)』 Selection
Losen Records LOS 251-2  jazz

 
『Against All Odds』
 After the Snow(Jens Wendelboe) Triplet Whisky(Jens Wendelboe)
 Chasing Rainbows(Jens Wendelboe/Kari Iveland)*
 Geriatric Gymnastics(Jens Wendelboe)
 In the Beginning(Jens Wendelboe/Kari Iveland)*
 Decaffeinado Again(Jens Wendelboe)
 Return from Forever(Jens Wendelboe)
 Frank’s Funky World #3(Jens Wendelboe)*
 A Weekend in Oslo(Jens Wendelboe)
 Erobreren (The Conqueror)(Jens Wendelboe)
 Inside Out(Jens Wendelboe) Sulla-Tulla(Jens Wendelboe)*
  ステファニー・ハリソン(ヴォーカル)*
  イェンス・ウェンデルボー(ソロ・トロンボーン)
  ジョン・サクソン(アルトサックス、リーダー)
  キース・ガーランド(アルトサックス)
  ケン・ナイグロ(テナーサックス)
  フレッド・スカーボー(テナーサックス)
  ジェイソン・ポライス(バリトンサックス)
  ペール・オンネルー(トランペット、リーダー)
  ルイーズ・バランジャー(トランペット)
  アンドルー・ウィルモット(トランペット)
  ラリー・ニスマン(トランペット)
  ジョー・レティシア(トロンボーン、リーダー)
  エリック・ストークマン(トロンボーン)
  ハワード・レヴィ(トロンボーン)
  ウォルター・バレット(バストロンボーン、テューバ)
  ポール・マリコンダ(キーボード)
  ライアン・パリーノ(ギター)
  マイケル・ナンノ(ベース)
  タイガー・マクニール(ドラム)
  スペシャル・ゲスト
   ケン・ジョフリー(ソプラノサックス)
   ジョエル・A・マーティン(キーボード)
   クリス・ヤンカー(キーボード)
 
録音・ミクシング  2020年1月–2021年8月 ジェイソン・ポライス・スタジオ(Jason Polise Studio)(コネティカット州、アメリカ)
制作 イェンス・ウェンデルボー
録音・ミクシング・共同制作 ジェイソン・ポライス
マスタリング モッテン・ルン

 
トロンボーン・プレーヤーのイェンス・ウェンデルボー(ヴェンデルボー) Jens Wendelboe は、アメリカ生活の長い音楽家です。オスロの音楽学校で学び、ニューヨークのマンハッタン音楽学校に留学して修士号を取得。アメリカのミュージシャンたちと共演してアルバムを作り、指揮者と編曲者としてドナ・サマーをはじめとするアーティストと関わりました。「Big Crazy Energy Band」と「Crazy Energy Jazz Quartet」を主宰。ジャズ、フュージョン、ラテンとさまざまなジャンルの音楽を経験してきました。2006年から2014年までロックバンド「ブラッド、スウェット・アンド・ティアーズ」でトロンボーンを担当したことで知られます。
 
ジャズシンガー、ステファニー・ハリソン Stephanie Harrison をフィーチャーした『Against All Odds(あらゆる困難を乗り越え)』は、彼の最新の「ビッグバンド」アルバムです。「北欧の音をもった、アメリカのジャズ・オーケストラ(With a Nordic Sound - An American Jazz Orchestra)」。全12曲の作曲と編曲、《Frank’s Funky World #3》(フランクのおかしな世界)の作詞を彼が行い、「にぎやかに一緒に仕事できた」と彼が語るカーリ・イーヴェラン Kari Iveland が、《Chasing Rainbows》(虹を追って)《In the Beginning》(初めに)の歌詞を手がけました。COVID-19 のパンデミックの時期と重なったため、フルバンドのリハーサルは一回だけ、リズムセクションの録音は、2020年3月にCOVID-19 の隔離が始まる直前の2日間だけ、ホーン・セクションのリハーサルと録音も集まってはできないなど、「あらゆる困難」に直面。開始から1年半後の2021年8月、やっとすべての作業が終わりました。「これまででもっとも時間のかかる、もっともきついCD制作だった……だが、おもしろいのは、かならずしもでき上がったレコードではなく、作るプロセスだ」(イェンス)。困難を乗り越えたことを誇りに思い、聴く人たちに楽しんでもらうことを願って作られたアルバムです。
 
[追記]
 
ジャケット・アートワークには、トーネ・ヴェストル Tone Vestøl の描いた絵が使われています。ニューヨークと思われる摩天楼のそびえる都会を背にしたヴァイキング船。アメリカのビッグバンドにノルウェー人がやってきた。ブックレットに載っているウェンデルボーの写真の笑顔がすべてを語っています。
 
《After the Snow》(雪のあとで)と《Chasing Rainbows》(虹を追って)でエレクトリック・ギター、(『リターン・トゥ・フォーエバー』ではない)《Return from Forever》でナイロン・ギターのソロを弾くライアン・パリーノ Ryan Parrino は、ニューヨークシティに近いコネティカット州を拠点に活動しています。マイケル・ボルトン、スモーキー・ロビンソン、ジミー・バフェット、ピーター・セテラ、ケニー・G、ベン・E・キングをはじめとするトップ・アーティストたちと共演してきました。素敵な音楽を聴かせるギター・プレーヤーです。
 
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)

『ストーレ・クライベルグの協奏曲』  Selection
2L 2L 166SABD Pure Audio Blu-ray + SACD hybrid (5.1 surround/stereo) contemporary/classical 

 
ストーレ・クライベルグ(1958–)
 ヴァイオリン協奏曲第2番(2017)
 Dopo(1993)(チェロと弦楽オーケストラのための)
 ヴィオラ協奏曲(2019)
  マリアンネ・トーシェン(ヴァイオリン)
  フレードリク・シェーリン(チェロ)
  アイヴィン・リングスタード(ヴィオラ)
  トロンハイム交響楽団 ペーテル・シルヴァイ(指揮)
 
[楽器 Violin: G. B. Guadagnini, 1745/Viola: “ex-Vieuxtemps” G. B. Guadagnini, 1768/Cello: F. Ruggieri, 1688]
 
録音 2020年6月、8月 オラヴホール(トロンハイム、ノルウェー)
制作・バランスエンジニアリング・編集・ミクシング・マスタリング モッテン・リンドベルグ
 
[DXD (24bit/352.8kHz) 録音]
[Disc 1: SACD hybrid (5.1 multichannel DSD/2.0 stereo DSD) RedBook PCM: MQA CD][Disc 2: Blu-ray: 5.1 Dolby TrueHD (24bit/192kHz), 7.1.4. Auro-3D (96kHz), 7.1.4. Dolby Atmos (48kHz), 2.0 LPCM  (24bit/192kHz), mShuttle: MQA + MP3 Region: ABC worldwide]

 
ストーレ・クライベルグ Ståle Kleiberg(1958–)は、ノルウェーでもっとも国際的な知名度の高い作曲家のひとりです。芸術性を損なうことなく聴き手とのコミュニケーションを図るというスタイルの音楽は、広く支持され、各国のオーケストラやアンサンブルからの委嘱がつづいていると言います。歌劇《ダビデとバト・シェバ》(2L 084SABD)や《現代人のためのミサ曲》(2L 136SABD)を制作した 2L レーベルがリリースするクライベルグの新作は、グラミー賞にノミネートされた『Treble and Bass』(2L 059SACD)に次ぐ「協奏曲」アルバムです。新旧3つの作品が、ペーテル・シルヴァイ Peter Szilvay 指揮、トロンハイム交響楽団の演奏で収録されています。
 
《ヴァイオリン協奏曲第2番》は、画家シェル・パール=イーヴェシェン Kjell Pahr-Iversen(1937–)の80歳誕生日を記念してスタヴァンゲルのコンサートホールで行われたコンサートのために作曲されました。第1楽章「イコン(Ikon)」第2楽章「ドン・キホーテの軍隊(Don Quixote’s Army/Don Quijotes armé)」第3楽章「門が開く(The Gates Unfold/Portene åpner seg)」。イーヴェシェンの絵の題名をつけた3楽章の作品です。
 
《Dopo》は、1993年、当時バルカン半島で進行中だった戦争から強い影響を受けて作られた作品です。「『ホロコースト』からわずか50年しか経っていないにもかかわらず『民族浄化』の単語がわれわれの日常の辞書にふたたび現れた」痛ましい事実を示すため、「後に」を意味するイタリア語の曲名がつけられました。「ホロコースト三部作」の一作として、《嘆き:シッシ・クライン追悼(Lamento: Cissi Klein in Memoriam)》(Aurora ACD 5032)と《ナチ迫害の犠牲者のためのレクイエム(Requiem for the Victims of Nazi Persecution)》(Simax PSC 1257)に先立って作曲され、ポーランドのペンデレツキも指揮者として取り上げるなど、多くの国で演奏されてきました。
 
《ヴィオラ協奏曲》は、アイヴィン・リングスタードとトロンハイム交響楽団のための作品です。エドヴァルド・ムンクの連作絵画『生命のダンス』からインスピレーションを得たといい、「同じ種子」から成長した、対照的な性格の3つの楽章から構成されています。
 
このアルバムも、COVID-19 の影響の下で企画され、2020年3月のロックダウンといったさまざまな障害を乗り越えて録音セッションが実現しました。ロンドンのナッシュ・アンサンブルのリーダーを務めたマリアンネ・トーシェン Marianne Thorsen(1972–)、デンマーク弦楽四重奏団のチェリストのフレードリク・スコイエン・シェーリン Fredrik Schøyen Sjölin(1982–)、オスロ・フィルハーモニックと共演してウォルトンの《ヴィオラ協奏曲》を録音するなど、これからの活躍を期待されているヴィオラ奏者のアイヴィン・ホルツマルク・リングスタード Eivind Holtsmark Ringstad(1994–)。作曲者のクライベルグも制作に関わり、プログラムノーツも執筆しています。
 
価格 4,290円(税込価格)(本体価格 3,900円) 
 

Pure Audio Blu-ray ディスクと SACD ハイブリッドディスクをセットにしたアルバムです。Pure Audio Blu–ray ディスクにはインデックスを除き映像は収録されていません。SACD ハイブリッドディスクはSACDブレーヤーとCDプレーヤーで再生できますが、Pure Audio Blu-ray ディスクはCDやDVDのプレーヤーでは再生できないので、Blu–ray プレーヤーもしくは Blu–ray 対応のPCをお使いください。

『慰め(Solacium)』  Selection
2L 2L 165SABD Pure Audio Blu-ray + SACD hybrid (5.1 surround/stereo)  classical  

 
『慰め(Solacium)』
アンデシュ・ヨルミン(1957–)
 Sci vias domini(主の道を知れ)
オストラ(ノルウェー)伝承の賛美歌(歌集『Følgesvenner』)
 Nu rinder solen opp(今、陽が昇る)
エストニア・ノアローツィ(スウェーデン)伝承の賛美歌(アンナ・マリア・フリーマン 編曲)
 Abba, hjärtans Fader god(アッバ、優しき心の父よ)
エストニア・ノアローツィ(スウェーデン)伝承の賛美歌(アンナ・マリア・フリーマン 編曲)(イントロ:マッツ・アイレットセン)
 Nu haver denna dag(また一日が過ぎていった)
アンドルー・スミス(1970–)
 Ubi caritas(慈しみと愛のあるところ)
ナルヨルデ(ノルウェー)伝承の子守歌(リン・アンドレーア・フグルセット、トリグヴェ・サイム 編曲)
 Bysjan, bysjan(ねんねんころり)
ヴェストフォルのアンデブー(ノルウェー)伝承の賛美歌(トーネ・クローン、トリグヴェ・サイム、マッツ・アイレットセン 編曲)
 Ska vi ustridig hist(われら主の晩餐へ)
中世ドイツ・オーストリアの賛美歌(『ノルウェー賛美歌集』)(リン・アンドレーア・フグルセット 編曲)
 Krist er oppstanden(キリストはよみがえりぬ)
オステルダーレン(ノルウェー)伝承の子守歌(リン・アンドレーア・フグルセット 編曲)(イントロ:マッツ・アイレットセン)
 So ro, liten tull(おねむりわが子)
グーブランスダーレン(ノルウェー)伝承の子守歌(リン・アンドレーア・フグルセット 編曲)
 Bånsull(子守歌「太陽が谷間にしずんでゆく」)
エストニア・スール=パクリ(スウェーデン)伝承の賛美歌(リン・アンドレーア・フグルセット、トリグヴェ・サイム 編曲)
 Kom, helge Ande(来れ精霊よ)
伝承曲(トリオ・メディイーヴァル 編曲)
 Limu lima(リム・リーマ)
  Solbønn(太陽の祈り)(テレマルク(ノルウェー)伝承曲)
  Limu limu lima(リム・リム・リーマ)(スウェーデン伝承曲)
  Vysssa lulla(ヴュッサ・ルッラ)(おやすみ、かわいいわが子)
  (スウェーデン伝承の子守歌)
スウェーデン伝承の歌(オステルヨートランド・ヴレタ修道院)(アンナ・マリア・フリーマン、マッツ・アイレットセン 編曲)
 I hela naturen(この自然には)
エストニア・ノアローツィ(スウェーデン)伝承の賛美歌
 Pris vare Gud(神を讃えよ)
シニッカ・ランゲラン(1961–)(作詞・作曲)
 Lillebrors hjerte(弟のこころ)
アンデシュ・ヨルミン(1957–)(作詞・作曲)
 Nattens vingar(夜のつばさ)
  トリオ・メディイーヴァル
   アンナ・マリア・フリーマン
   リン・アンドレーア・フグルセット
   ヨールン・ロヴィーセ・フーサン
  マッツ・アイレットセン(ベース)
  トリグヴェ・サイム(サクソフォーン)
 
録音 2020年10月 ソフィエンベルグ教会(オスロ、ノルウェー)
制作・バランスエンジニアリング・編集・ミクシング・マスタリング モッテン・リンドベルグ
 
[DXD (24bit/352.8kHz) 録音]
[Disc 1: SACD hybrid (5.1 multichannel DSD/2.0 stereo DSD) RedBook PCM: MQA CD][Disc 2: Blu-ray: 5.1 Dolby TrueHD (24bit/192kHz), 7.1.4. Auro-3D (96kHz), 7.1.4. Dolby Atmos (48kHz), 2.0 LPCM  (24bit/192kHz), mShuttle: MQA + FLAC + MP3 Region: ABC worldwide]

 
ノルウェーのヴォーカルアンサンブル「トリオ・メディイーヴァル(トリオ・メディーヴァル) Trio Mediæval」は、1997年に結成し、2001年のアルバム第1作『Words of the Angel』で一躍、国際的に知られる存在になりました。リン・アンドレーア・フグルセット Linn Andrea Fuglseth とアンナ・マリア・フリーマン Anna Maria Friman は創設メンバー。ヨールン・ロヴィーセ・フーサン Jorunn Lovise Fusan が、2018年に新たなメンバーとして加わりました。『慰め(Solacium)』は、ECM Records で8枚のアルバムを作ってきた彼らの初めての 2L レーベルへの録音です。
 
賛美歌と子守歌のコレクション。誰が最初に歌ったのか知る由もない伝承の歌、何について歌ったかも定かでない歌。「時代を超えた」これらの歌は、いつとも知れない過去とこれからの未来をつなぐ鎖として、わたしたちに「慰めとやすらぎ」を与えつづけます。このアルバムでは、スウェーデンのベーシスト、アンデシュ・ヨルミン Anders Jormin とノルウェーのトラッド・ミュージシャン、シニッカ・ランゲラン Sinikka Langeland の新しい子守歌も歌われます。どちらも自分たちの子供への「ちょっとした贈り物」として作られた作品です。オスロの教会で行われた録音セッションには、ベースのマッツ・アイレットセン Mats Eilertsen とサックスのトリグヴェ・サイム Trygve Seim という「父親ふたり」も参加しました。トリオ・メディイーヴァルとともに、COVID-19 の今、いろいろな垣根をとりはらい、共通する人間性への讃歌を歌いあげています。
 
価格 4,290円(税込価格)(本体価格 3,900円)
 

Audio Blu-ray ディスクと SACD ハイブリッドディスクをセットにしたアルバムです。Pure Audio Blu–ray ディスクにはインデックスを除き映像は収録されていません。SACD ハイブリッドディスクはSACDブレーヤーとCDプレーヤーで再生できますが、Pure Audio Blu-ray ディスクはCDやDVDのプレーヤーでは再生できないので、Blu–ray プレーヤーもしくは Blu–ray 対応のPCをお使いください。

『Strings Attached(弦楽器に首ったけ)』  Selection
Harmonia Mundi HMN 916110 classical  

 
ウィリアム・バード(1543–1623)
 ロウランド、またはウィロビー卿のご帰還
 (Rowland, or Lord Willoughby’s Welcome Home)
アンナ=リーサ・エッレル(1988–)
 前奏曲(Prelude)(即興による)*
ジョン・ダウランド(1563–1626)
 ラクリメ(Lachrymae)
アンナ=リーサ・エッレル(1988–)
 後奏曲第1番(Postlude I)(即興による)*
ルイ・クープラン(c.1626–1661)
 前奏曲 二短調(Prélude ré-mineur)
ギヨム・ド・マショー(c.1300–1377)
 愛する女(ひと)よ、あなたの優しい姿(Dame, vostre doulz viaire)**
ジャン=フィリップ・ラモー(1683–1764)
 クラヴサン曲集 第1巻 - 前奏曲(Prélude) アルマンド(Allmande)
シルヴィウス・レオポルト・ヴァイス(1687–1750)
 ロジ伯爵の死を悼むトンボー(Tombeau sur la mort de M. Comte de Logy)
ヘレナ・トゥルヴェ(1972–)
 Silmaja(観察者)
アンナ=リーサ・エッレル(1988–)
 間奏曲(Interlude)(即興による)
ジローラモ・フレスコバルディ(1583–1643)
 聖体拝領のためのトッカータ(Toccata cromatica per l' elevatione)
アンナ=リーサ・エッレル(1988–)
 後奏曲第2番(Postlude II)(即興による)
 ミューズたちの対話(L’entretien des Muses)
  アンナ=リーサ・エッレル(カンネル、電子カンネル、プサルテリウム)
 
[楽器 Kannel: Otto Koistinen, 2007/Electric kannel: Hannu Koistinen, 2011 */Psalterium: Peeter Talve, 1991 **]
 
録音 2019年1月–2月 ラ・クーロワ(アントレーグ=シュル=ラ=ソルグ、フランス)
アーティスティック・ディレクション アルバン・モロー
録音・ミクシング アルバン・モロー

 
Harmonia Mundi の「若い才能」を紹介する「Harmonia Nova」プロジェクトの一枚。エストニアの「カンネル」奏者、アンナ=リーサ・エッレルのはじめてのソロ・アルバムです。彼女が弾く、エストニアの楽器「カンネル」は、フィンランドのカンテレと同じく、バルト海沿岸地方の「バルト・プサルタリー」と呼ばれる撥弦楽器のひとつです。伝統的に演奏されながら、20世紀初頭ごろには一部の地方をのぞき、顧みられることも少なくなり、近年、フィンランドのカンテレの再興の影響もあり、ふたたび演奏されるようになったと言われます。アンナ=リーサ・エッレル Anna-Liisa Eller(1988–)は、エストニア音楽アカデミーの修士課程を最優秀で修了。リヨン国立高等音楽舞踊学校とトロッシンゲン州立音楽大学で学び、現在、アカデミーで博士課程の研究に携わっています。彼女は、アーリー・ミュージックとコンテンポラリー・ミュージックの創作に焦点を当てた活動を行い、「Supersonus」「Ensemble Kapsberger」といった古楽アンサンブルとも共同作業をつづけています。「カンネルの声(The Voice of Kannel)」の副題をもつアルバム『Strings Attached(弦楽器に首ったけ)』のプログラムにもそのことを反映させ、バードのヴァージナル曲から、ヴァイスのリュート曲、ラモーのクラヴサン曲まで、エストニアの作曲家ヘレナ・トゥルヴェ Helena Tulve の曲をのぞき、すべて彼女自身の編曲で演奏しています。
 
[追記] バードの《ロウランド》の最初の一音で部屋の空気が変わる、“haunting” と形容したくなる雰囲気をもったアルバムです。
 
価格 2,860円(税込価格)(本体価格 2,600円)

『サミュエル・バーバーの歌』  Selection
Hyperion CDA 67528 classical   [未案内旧譜]

 
サミュエル・バーバー(1910–1981)
 そんなひばりはいない(There’s nae lark)(1927)
 物乞いの歌(The Beggar’s Song)(1936)
 暗い松林のなかで(In the dark pinewood)(1937)
 ベッシー・ボブテイル(Bessie Bobtail) Op.2 no.3(1934)
 隠者の歌(Hermit Songs) Op.29(1952–53)
  聖パトリックの煉獄で(At St. Patrick’s Purgatory)
  夜の教会の鐘(Church Bell at Night)
  聖イタの幻想(St. Ita’s Vision) 天国の饗宴(Heavenly Banquet) 
  キリストの磔刑(The Crucifixion) 海の略奪(Sea Snatch)
  行きずりの交わり(Promiscuity)
  修道僧と猫(The Monk and His Cat) 神の賛美(The Praises of God)
  世捨ての切望(The Desire for Hermitage)
 3つの歌(Three Songs) Op.10(1936)
  雨が降った(Rain has fallen) さあ眠れ(Sleep now)
  軍勢の響きが聞こえる(I hear an army)
 過ぎゆきしものの歌(Mélodies passagères) Op.27(1951)
  すべて過ぎゆくがゆえに(Puisque tout passe) 白鳥(Le cygne)
  公園の墓(Tombeau dans un parc) 鐘が鳴る(La cloche chante)
  出発(Départj)
 ひなぎく(The Daisies) Op.2 no.1(1927)
 悲しみをかかえ、わが心は(With rue my heart is laden) Op.2 no.2(1928)
 夜想曲(Nocturne) Op.13 no.4(1940)
 この輝く夜にきっと(Sure on this shining night) Op.13 no.3(1938)
 ドーヴァー海岸(Dover Beach) Op.3(1931)*
  ジェラルド・フィンリー(バリトン)
  ジュリアス・ドレイク(ピアノ)
  アロノウィツ・アンサンブル *  
 
録音 2005年12月、2007年2月 オールセインツ教会(イースト・フィンチリー、ロンドン、イングランド)
制作 マーク・ブラウン
録音 ジュリアン・ミラード

 
サミュエル・バーバーの歌曲は、彼の芸術が作り出したもっとも優れた業績のひとつとみなされています。文学に造詣が深く、イギリス・ジョージ王朝時代の詩人、アイルランドの吟遊詩人、ジェイムズ・ジョイス、彼と同時代のアメリカの詩人と、彼の選ぶ詩の質の高さには誤りがなく、奥深い抒情から生まれる気品あるメロディと相まって、「サミュエル・バーバーの歌」の世界を創りあげました。イギリスのバリトン歌手、ジェラルド・フィンリー Gerald Finley も文学をこよなく愛するといわれ、このアルバムでも、〈暗い松林のなかで雨が降った〉〈雨が降った〉〈さあ眠れ〉〈軍勢の響きが聞こえる〉といったジョイスの詩、ライナー・マリア・リルケの《過ぎゆきしものの歌》のフランス語の詩、A. E. ハウスマンの『シュロプシャーの若者』の〈悲しみをかかえ、わが心は〉、ジェイムズ・エイジーの〈この輝く夜にきっと〉と、さまざまなスタイルの詩に書かれた曲を「歌う」だけでなく、言葉の響きとリズムを尊重した「朗読」の趣きで聴かせます。バリトン(中声)と弦楽四重奏のために作曲され、バーバー自身による初録音も残されたマシュー・アーノルドの詩による《ドーヴァー海岸》は、アーノルドの悲観的な詩に寄せる作曲者の共感が深い印象を残す作品です。フィンリーとアロノウィツ・アンサンブルの演奏は、この曲の最良の録音のひとつです。
 
《4つの歌》(Op.13)の第3曲〈この輝く夜にきっと〉は、バーバーの歌曲のなかでももっとも広く歌われ、スウェーデンのジャズ・ヴォーカリストのリーナ・ニューベリは、「夜」を歌ったアルバム『The Night and the Music』(Prophone PCD 249)のプログラムにこの歌を組みこんでいます。
 
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円) 

『バーバー、アイヴズ』  Selection
BIS SACD 2360 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
サミュエル・バーバー(1910–1981)
 弦楽四重奏曲 ロ短調 Op.11(1936 rev.1937–43)
 弦楽四重奏曲 ロ短調 Op.11 - 第3楽章(初稿)
チャールズ・アイヴズ(1874–1954)
 弦楽四重奏曲第1番《救世軍から(From the Salvation Army)》(1896)
 Holding Your Own(スケルツォ)(1904)
 (《3つの短い曲のセット(A Set of Three Short Pieces)》から)
 (弦楽四重奏のための)
 弦楽四重奏曲第2番(1907–13)
  エッシャー弦楽四重奏団
   アダム・バーネット=ハート(第1ヴァイオリン)
   ダンビ・ウム(第2ヴァイオリン)
   ピエール・ラポワント(ヴィオラ)
   ブルック・スペルツ(チェロ)
 
録音 2019年2月1日–4日 ポットンホール(サフォーク、イングランド)
制作・録音 トーレ・ブリンクマン

 
マンハッタン音楽学校に学んだ音楽家たちが2005年に結成したニューヨーク市のアンサンブル、エッシャー弦楽四重奏団 Escher String Quartet の新作。バーバーとアイヴズの四重奏曲を演奏したアルバムです。
 
バーバーの《弦楽四重奏曲 ロ短調》は、1935年、彼がパートナーのジャン・カルロ・メノッティとともに滞在していたオーストリアで作曲に着手。予定していたカーティス弦楽四重奏団のコンサートツアーには間に合わず、1936年12月14日、ローマのヴィラ・アウレリアでプロアルテ四重奏団により初演されました。その後、バーバーは、第3楽章を撤回。1937年4月と出版の前に改訂を行い、1943年5月28日、アメリカ議会図書館でブダペスト四重奏団により初演されます。ソナタ形式の第1楽章「モルト・アレグロ・エ・アパッショナート」、《弦楽のためのアダージョ》に編曲された第2楽章「モルト・アダージョ」と、アタッカでつながる「モルト・アレグロ - プレスト」の3楽章の作品です。エッシャー弦楽四重奏団のこのアルバムでは、第3楽章の初稿「アンダンテ・モッソ、ウン・ポコ・アジタート - アレグロ・モルト、アラ・ブレーヴェ」が「小さな贈り物(lagniappe)として演奏されています。
 
アイヴズの《弦楽四重奏曲第1番》は、イェール大学の2年生だったアイヴズが、ニューイングランドでもっとも保守的作風の作曲家ホレイショ・パーカーの指導の下で作曲した作品です。ゴスペル賛美歌を素材にした、アレグロ・コン・モートの「コラール(Chorale)」、アレグロの「前奏曲(Prelude)」、アダージョ・カンタービレの「奉納唱(Offertory)」、アレグロ・マルツィアーレの「後奏曲(Postlude)」の4楽章で構成され、《救世軍から》の他、《信仰復興伝道会(A Revival Service)》の副題でも呼ばれます。《弦楽四重奏曲第2番》は、1907年から1913年の間に作曲され、1946年5月11日、コロンビア大学マクミラン劇場でジュリアード音楽院の学生アンサンブルにより初演されました。「議論(Discussions)」「口論(Arguments)」アイヴズの超越主義理想の要約とされる「山の呼び声(The Call of the Mountains)」の3楽章で書かれ、ラジカルな発想とスタイルの音楽が、エリオット・カーターをはじめとする作曲家たちにインスピレーションを与えました。作曲家ルー・ハリソンは、ウォールデン弦楽四重奏団によるプロ初演を聴き、「50年ないし1世紀にひとつ」との賛辞を贈り、アイヴズ自身も最良の一作とみなしたといわれます。この2曲の間に、もうひとつの小さな贈り物、《3つの短い曲のセット》の第2曲「Holding Your Own」の弦楽四重奏版がはさまれています。
 
エッシャー弦楽四重奏団は、メンバーが創設時から変わりました。第1ヴァイオリンのアダム・バーネット=ハート Adam Barnett-Hart とヴィオラのピエール・ラポワント Pierre Lapointe は、創設メンバー。第2ヴァイオリンは、ダンビ・ウム Danbi Um がアーロン・ボイドの後を受け、現在、ブレンダン・スペルツに代わっています。チェロは、ブルック・スペルツ Brook spletz がデイン・ジョーハンセンの後任として担当しています。
 
サミュエル・バーバーの作品と、ノスタルジーや「良きアメリカ」という共通点をもちながら、彼が敬遠したといわれるアイヴズの作品を組み合わせたアルバムです。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)

『バレエ・リュス(Ballets Russes)』 Selection
Harmonia Mundi HMX 2905342 classical[再リリース]

 
『バレエ・リュス(Ballets Russes)』
[Disc 1: ASM-015]
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882–1971)
 バレエ《春の祭典(Le sacre du printemps)》(1913年初版)
 バレエ《ペトルーシュカ(Pétrouchka)》(1911年初版)
[Disc 2: ASM-06]
アレクサンドル・グラズノフ(1865–1936)
 バレエ《ライモンダ(Raymonda)》 Op.57
 - サラセン人の入場 東洋の踊り
 バレエ《四季(Les Saisons)》 Op.67 - 秋のバッカナール
クリスチャン・シンディング(1856–1941)(チャーリー・パイパー 編曲)
 東洋舞曲(Danse Orientale)
アントン・アレンスキー(1861–1906)
 バレエ《エジプトの夜(Egyptian Nights)》
 - エジプト女の踊り 蛇のシャルムーズ ガジーの踊り
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)(ブルーノ・マントヴァーニ 編曲)
 小さなトロル(小妖精)(Småtrold) Op.71–3(抒情小曲集 第10集 から)
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882–1971)
 バレエ《火の鳥(L'oiseau de feu)》(1910)
  レ・シエクル フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
 
録音 2013年5月14日 メス・アルセナル、5月16日 グルノーブル MC2、9月29日 フランクフルト旧オペラ座(以上、春の祭典)、2013年5月14日 メス・アルセナル、5月16日 グルノーブル MC2(ペトルーシュカ)、2010年10月2日 シテ・ド・ラ・ミュジーク(パリ)、10月9日 ラン大聖堂(以上、Disc 2)(すべてライヴ)

 
フランソワ=グザヴィエ・ロト François-Xavier Roth(1971–)と彼が創設した「レ・シエクル Les Siècle」の「ライヴ録音」は、最初にリリースされたベルリオーズの《幻想交響曲》(ASM-02)から注目され、以後、新作が発表されるたびに評価と人気が高まり、新鮮な発想の音楽を求める各国のリスナーの期待を集めるようになりました。このシリーズは、《幻想交響曲》から『リゲティ』(ASM-026)までは、アルルの出版社 Actes Sud が制作、同じアルルに本社を置く Harmonia Mundi が配給というスタイルでアルバム・リリースが行われていました。そして、2017年のラヴェルの《ダフニスとクロエ》(HMM 905280)以降のアルバムは、国際的な需要に応えるため、Harmonia Mundiが制作も担当するようになりました。
 
Harmonia Mundi がリリースする「2枚組」アルバムには、Actes Sud が制作し、すでに廃盤になった2枚のアルバム、《春の祭典》《ペトルーシュカ》(ASM-015)と、《火の鳥》とグラズノフたちの作品(ASM-06)が合わせて収録されています。《春の祭典》と《ペトルーシュカ》は、いずれも「初版」による演奏です。《春の祭典》は、1913年5月29日、ピエール・モントゥーが指揮したシャンゼリゼ劇場での初演に使った、パウル・ザッハー財団所蔵の自筆譜を基本に、ロシア音楽出版社が1922年に出版した初版スコアとピエール・モントゥーが1920年代の演奏に使ったスコアを合わせて検討、音の誤りやストラヴィンスキーが改訂した個所を明確にして演奏されました。冒頭の旋律を演奏する1900年ビュッフェ・クランポン製のバソン、小型のフレンチ・テューバ、小トロンボーン、ピストンを備えた古い形のホルンなど、楽器も時代を考証して選ばれ、「初演の音」の再現が試みられています。《ペトルーシュカ》は、四管編成の1911年初版により演奏され、1892年製のエラール・ピアノをジャン=ヒサノリ・スギタニが弾いています。1910年6月にピエルネが指揮してパリ・オペラ座で初演された《火の鳥》も、その楽器やコピー楽器を使って当時の響きを再現することを意図した演奏です。
 
価格 3,740円(税込価格)(本体価格 3,400円) 

『永遠(Eilífur)』  Selection
Pentatone PTC 5186950 contemporary/classical

 
ヴィクトル・オッリ・アウルナソン
 Eilífur(永遠)
  Var * The Thread ** Maiden ** Er */** The Faultline **
  The Vision Nectar Animal Mundi Var - Er *
  フォウストブレーズル男声合唱団 * アウルニ・ハルザルソン(指揮)*
  ベネディクト・クリスチャウンソン(テノール)*
  グリームル・ヘルガソン(クラリネット)*
  エーミル・フリズフィンソン(ホルン)*
  ヨーセフ・オグニベーネ(ホルン)*
  シーグルズル・ソルベルグソン(トロンボーン)*
  カルロス・カロ・アギレラ(トロンボーン)*
  男声六重唱 **
   アーロン・ステイン・アウスビャルナソン ビャルニ・クレインソン
   グヴズムンドゥル・ヴィグニル・カルルソン
   ハフステイン・ソウロウルソン オットルン・アルナルソン
   オットルン・イーミル・アーラソン
  ヴィクトル・オッリ・アウルナソン(指揮)** 
  ヴィクトル・オッリ・アウルナソン(ソロ楽器)
  ヤイール・エラザール・グロットマン(コントラバス・ソロ)
  (Var, The Thread)
  シュテファン・バウマン(バスクラリネット、サクフォソーン)
  (The Vision)
  ベネディクト・スマウリ・スクーラソン(ギター)(Anima Mundi)
  ブダペスト・アート・オーケストラ
  ヴィクトル・オッリ・アウルナソン(指揮)
 
録音 2018年・2019年 VOA Studio(ベルリン)(総合録音)、2017年1月 ラングホルト教会(レイキャヴィーク、アイスランド)*、フリーキル教会(ハフナルフィヨルズル、アイスランド)**、2018年・2019年 ハンガリー放送第22スタジオ「East Connection Studios」(ブダペスト)(オーケストラ)
制作・録音・ミクシング ヴィクトル・オッリ・アウルナソン
制作(オーケストラ) ミクローシュ・ルカーチ
録音 シールグズル・ヨウンソン * ベルグル・ソウリソン **
録音(オーケストラ) ガボール・ビューチコ

 
このところ、さまざまなジャンルのアイスランドの音楽家たちが注目を集めてきています。特に有名なのが、チェリストで作曲家のヒルドゥル・グヴズナドウッティル(ヒドゥル・グドナドッティル)。エレクトロニカ・バンドのメンバーでもある彼女は、『チェルノブイリ』などの映画の音楽を手がけ、『ジョーカー』でゴールデングローブ賞とアカデミー賞の作曲賞を受賞しました。Pentatone Records からアルバムがリリースされるヴィクトル・オッリ・アウルナソン Viktor Orri Árnason も、注目される音楽家のひとりです。彼は、アイスランド芸術大学でヴァイオリンとヴィオラ、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で作曲と指揮を学び、バンド「ヒャルタリーン Hjaltalín」のメンバーとしてヴァイオリンと作詞作曲を担当、2008年には現代音楽の弦楽アンサンブル「スタルク Stark」を共同で設立しました。「クラシカル音楽の世界とスタジオ制作芸術の世界を衝突させること」に重点を置いて活動。自身のスタジオ「VOA Studio」をベルリンに構え、ヒルドゥルをはじめとする音楽家たちも創作の場として使っています。
 
『永遠の(Eilífur)」は、ヴィクトル・オッリのソロ・デビュー・アルバムです。「永遠に生きることの展望」を瞑想。「近い日、医学の進歩による自然死の根絶が現実となる」ことをイメージした、わかりやすい近未来の物語を、抽象的なアイスランド語の歌詞と緻密に作られた「音楽の語り」で織りあげてゆく、「生きるに値する命」を支えるものへの頌歌をコンセプトに作られました。男声合唱がメインの3曲は、レイキャヴィークの「フォウストブレーズル男声合唱団(Karlakórinn Fóstbræður)」の創設100年記念コンサートのために委嘱された作品です。《Var》(「見よ、警戒せよ、夜の空気を吸え……」)《Er》(「真ん中でひとつになれ……」)《Var - Er》(「永遠。おまえは私のそばで意識している……」)。オーケストラを中心とする6曲は、「24人の弦楽オーケストラ」「12人のチェロと10人のコントラバス」「2つのバスフルート、2つのサクソフォーン、バスクラリネット、コントラバス・クラリネット、2人の打楽器奏者、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロ」と、3つの異なる編成で演奏され、男声六重唱、ヴィクトル・オッリ自身の楽器ソロ、ヤイール・エラザール・グロットマン Yair Elazar Glotman のコントラバスなどが加わります。クラシカル音楽をベースにしたメロディと調性のあるこれらの「音」は、アイスランドの教会やハンガリー放送のスタジオで録音され、ヴィクトル・オッリがベルリンの彼のスタジオでミックスしました。ゆたかな感性で作られた「音風景」が美しく、余韻を残す作品です。
 
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)

『おとぎ話(Eventyr)』 Selection
2L 2L 163SACD SACD hybrid (5.0 surround/stereo)  classical

 
『おとぎ話(Eventyr)』
ゲイル・トヴェイト(1908–1981)
 風神の竪琴(Eolsparpa)(1945)
クリスチャン・シンディング(1856–1941)
 ピアノソナタ ロ短調 Op.91(1909)
アルフ・フールム(1882–1972)
 おとぎ話の国(Eventyrland) Op.16
  魔法にかけられた庭で(I den forheksede have)
  王女さまが金のリンゴで遊んでいる(Prinsessen leker med gulleplene)
  三匹のトロル(De tre troll) 雪やこんこん(Det sner og det sner)
  鬼の宴(Tusselag) オーロラの娘たち(Nordlysdøtrene)
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)
 バラード(Ballade) ト短調 Op.24(1875–76)
  クリスチャン・グローヴレン(ピアノ) [Piano: Steinway D-model]
 
録音 2019年11月 ソフィエンベルグ教会 (オスロ、ノルウェー)
制作・バランスエンジニアリング・ミクシング・マスタリング モッテン・リンドベルグ
編集 ヨルン・シメンスタ、モッテン・リンドベルグ
 
[DXD(24bit/352.8kHz)録音]
[SACD: 5.0 multichannel DSD/2.0 stereo DSD/RedBook PCM: MQA CD]

 
ノルウェーの人たちは “eventyr” という言葉を聞くと、おとぎ話、冒険談、民話、幻想物語といったことを思い浮かべると言います。ノルウェーのピアニスト、クリスチャン・グローヴレンは、このアルバムで、トヴェイト、シンディング、フールム、グリーグの作品を弾きました。「彼らの、狂気じみていたり、美しかったり、悲しみと喜びにあふれ、魔法と愛がいっぱい『物語』と向き合っていること、それ自体が冒険の物語だった」と彼は語ります。「故郷に帰ったような気分だ」。
 
ゲイル・トヴェイト(ガイル・トヴァイト) Geirr Tveitt(1908–1981)の《風神の竪琴》は、イェールハルド(ゲルハール)・ムンテの絵からインスピレーションを得て作曲された作品です。「…翼をつけた竪琴が、荒れる海を渡ってゆく、空高く、煌く星を弦(つる)にのせて」。フランス印象主義、とりわけラヴェルの《夜のガスパール》の影響が明らかな手法で書かれた、「険しい崖、深いフィヨルド、荒れた天気、そして、雲間から差し込む光がなによりも美しい、ノルウェー西岸を想起させる音楽」(グローヴレン)。手稿譜の日付は「1945年6月22日」。トヴェイト自身の1949年の録音(Simax PSC1805)は、彼の「私的」な版で演奏されたため、初稿を弾いたこの演奏がこの作品の事実上初めての録音です。
 
クリスチャン・シンディング Christian Sinding(1856–1941)の《ピアノソナタ ロ短調》は、1909年の作品です。シンディングの特徴が顕著に表れ、「《春のさざめき》という、たったひとつの作品でほとんどの人に知られている」彼の代表作のひとつとされています。「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」「アンダンテ」「ヴィヴァーチェ」の3楽章の構成。この作品をグローヴレンは、この作品を「シンディングの吠え声(sindingske brus)」と呼び、「私にとっては、ヴァイキング船、大きく膨らんだ帆、ヴァイキングたちの略奪と英雄的な行動という『サガ』のスタイルの作品」と語っています。アルフ・フールム Alf Hurum(1882–1972)も、トヴェイトと同様、フランス音楽の影響を受けたひとりです。1920年の《おとぎ話の国》は、妖精やトロルなどノルウェーの伝説を題材にした作品で知られるテオドール・キッテルセンの絵画に通じる雰囲気をもち、画家でもあったフールムの「音の描画」と呼べる作品です。
 
エドヴァルド・グリーグ Edvard Grieg(1843–1907)の《バラード》は、1876年春、彼がさまざまな苦難をかかえていた時期に作曲されました。悲しい音調のヴァルドレスの民謡《北国の農民》を主題にした「変奏曲」の形式で書かれ、技術的、表現的なチャレンジと「冒険」を克服してはじめて、聴き手の心をとらえる輝かしい音楽として示される作品です。グローヴレンをはじめとする多くのピアニストたちから、ノルウェーのピアノ音楽でもっとも重要な作品とみなされています。
 
クリスチャン・グローヴレン Christian Grøvlend(1990–)は、ベルゲン生まれ。イジー・フリンカに教わった後、ノルウェー国立音楽大学でホーヴァル・ギムセとラーシュ・アンデシュ・トムテルに学びました。ウィーン国立音楽大学に留学、王立デンマーク音楽アカデミーではイェンス・エルヴェケーアのソリスト・クラスで学んでいます。ノルウェー国内の「青少年音楽コンペティション」には三度出場、第1位をソリストとして二度、室内楽奏者として一度獲得。ベルゲン・フィルハーモニックと共演した2007年の回には「聴衆賞」に選ばれました。『おとぎ話(Eventyr)』は、配信だけの『Bach - Inside Polyphony』(2L139)に続く彼のアルバム第2作です。グローヴレンが29歳だった2019年11月、ソフィエンベルグ教会でセッション録音されました。
 
グローヴレンは、トヴェイトの《風神の竪琴》の1945年の楽譜によるこの演奏が世界初録音だということが、にわかには信じがたいと、言っています。そして、「トヴェイトのピアニストとしての素晴らしい技巧を雄弁に語り、ピアノの音の世界とテクスチュアを探求した彼のユニークは想像力を明らかにしてみせた作品を、より多くの聴き手に紹介できることを幸せに思います」と述べています。シンディングの《ソナタ》は、むせかえるようなロマンティシズムが瑞々しい音楽として示され、フールムの《おとぎ話の国》は、6枚の描画が子供の目と心で眺められています。
 
グリーグの《バラード》は、グローヴレンがギムセに学んだことが、はっきりとうかがえる演奏です。この作品は、グローヴレンと同郷のアイナル・ロッティンゲン Einar Røttengen(1963–)も録音(Pro Musica PPC 9053)しています。「この曲は、ロマンティックで、深く、優しく、内省的だ。そして形式の上でも壮大な理念をもっている。その本質的なピアニスティックな構築上の要求は、演奏者にとって試金石である」(大束省三・訳)という、アイナル・ステーン=ノクレベルグの言葉を実際の音として示した、深い印象を残す演奏です。ロッティンゲンが、41歳になる少し前、2004年1月の録音。ノルウェーのピアニストたちは、その折々、それぞれの《バラード》を綴っていきます。 
 
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円) 

『The Night and the Music』 Selection
Prophone PCD 249 jazz

 
『The Night and the Music』
 Night and Day(Cole Porter)
 Let’s Face the Music and Dance(Irving Berlin)*
 Red Sails in the Sunset(Hugh Williams/Jimmy Kennedy)
 ‘Round Midnight(Thelonious Monk/Bernie Hanighen)
 Stardust(Hoagy Carmichael/Mitchell Parish)
 Dream a Little Dream of Me(Fabian Andre/Wilbur Schwandt/Gus Kahn)
 Sure on This Shining Night(Samuel Barber/James Agee)
 You and the Night and the Music(Arthur Schwartz/Howard Dietz)
 In the Wee Small  Hours of the Morning(David Mann/Bob Hilliard)
 Good Morning Starshine(James Rado/Gerome Ragni)
 I Like the Sunrise(Duke Ellington)*
  リーナ・ニューベリ(ヴォーカル)
  ダニエル・カールソン(ピアノ)
 
録音 ルンマロー・コンサートホール(ルンマロー、スウェーデン)、スタジオ・エピデミーン(Studio Epidemin)(ヨーテボリ、スウェーデン)*
制作 リーナ・ニューベリ、ダニエル・カールソン
録音 ヨーラン・ペッテション、ユハンネス・ルンドベリ *

 
1970年、ストックホルム生まれのリーナ・ニューベリ Lina Nyberg と、1973年、ヴェルムランドのクリスティンスハムン生まれのダニエル・カールソン Daniel Karlsson は、スウェーデンと世界のジャズシーンを舞台に輝かしいキャリアを築いてきました。もっとも成功したスウェーデンのジャズ・ミュージシャンのふたりが初めて共演するアルバム『The Night and the Music(夜と音楽)』。夕まぐれ、夜、朝まだき、と移りゆく「夜」の姿と思いを綴った歌から、リーナとダニエルのふたりで入念に選んだ11曲を歌うプログラムです。コール・ポーターの《Night and Day(夜も昼も)》、アーヴィング・バーリンがフレッド・アステアとジンジャー・ロジャーズの映画『Follow the Fleet(艦隊を追って)』のために作った《Let’s Face the Music and Dance》、プラターズのレコードがヒットチャートに載った《Red Sails in the Sunset(夕陽に赤い帆)》、セロニアス・モンクの《’Round Midnight》といったジャズの「エバーグリーン」、ミュージカル『Hair/ヘアー』の《Good Morning Starshine》。サミュエル・バーバーの《Sure on This Shining Night(この輝く夜にきっと)》は、彼が、《ノックスヴィル:1915年の夏》に先立ち、同じジェイムズ・エイジーの詩に作曲した作品です。継ぎ目なくつづく抒情のメロディに始まるこの歌は、優れたバリトン歌手でもあったバーバーが書いた100を超す歌曲の最良の一曲とされ、多くの歌手から愛されています。全ナンバーの編曲とプロデュースをリーナとダニエルが共同で手がけ、ストックホルム群島の島ルンマローのコンサートホールとヨーテボリのスタジオのセッションで録音しました。
 
[追記]
リーナ・ニューベリとダニエル・カールソンのデュオ・アルバム『The Night and the Music(夜と音楽)』を聴きました。良い知らせと悪い知らせがあります。
 
悪い知らせから。このところ Prophone Records の音の性格が、かつての「Prophone の音」からかなり変わってきました。楽器と声の姿とテクスチュアを自然に感じさせる音から、楽器や声の音とテクスチュアをダイレクトに聞かせる音に変わり、それが「Prophone のアルバム」のイメージにオーバーに言うと劇的な変化をもたらしました。いつごろからなのか。記憶をたどると、Nilent Studio のラーシュ・ニルソンが制作や録音を担当するようになった時期と重なっている気がします。このラーシュ・ニルソンは、他のレーベルでも仕事をしており、いずれも高い評価を得てきました。高い技術と音楽に対する独自の哲学をもっていると言われ、スウェーデンのピアニスト、ヤコブ・カールソンとは ACT Music のアルバムを共同で制作するなど、北欧の音楽家たちから信頼が寄せられています。ヨーラン・ペッテション Göran Petersson とユハンネス・ルンドベリ Johannes Lundberg がエンジニアリングを担当したこのニューベリの新作も、ニルソンのスタイルと同じ性格の音質で録音されています。かつての Prophone の音が懐かしい……。
 
そして、良い知らせ。『The Night and the Music』は、ニューベリとカールソンが共演を希望み、ずっと作りたいと思っていたというアルバムです。そのため、アルバムの制作にはふたりが共同であたりました。そのことを考えると、ペッテションとルンドベリが、カールソンのタッチと音、そしてニューベリの声を「リアル」に収録した音は、プロデュースしたふたりが意図したものとみなすのが自然でしょう。実際、この「音」に慣れてくると、ふたりが音楽を創造している、その空間に居合わせている気分になってきます。コンサートホールで収録されていながら、”intimate” な気分が漂い、ストックホルムかボストンか、大都市の片隅にでもあるクラブにいる気分です。《夕陽に赤い帆》の波を模したピアノのアルペッジョや《’Round Midnight》や《スターダスト》のちょっとしたフレーズににんまりする。《この輝く夜にきっと》を聴き、この後、バーバーの歌曲を聴こうかと思ってしまいます。
 
このアルバムのデータには、録音の場所は書かれていますが、時期の記載がありません。ただ、プレスリリースの情報から推測すると2020年の夏あたりの録音だと思われます。もしそうなら、COVID-19 がみんなと音楽家たちの生活と心に大きな影を落としている時期です。シンガーソングライターのイサベラ・ルンドグレーンは、『Look for the Silver Lining(希望の光をさがして』のアルバムで「元気を出そう」と歌いました。そしてニューベリとカールソンは、夜に物を思い、「COVID-19 の前」には戻れないことを知りながら、「わたしは夜明けが好き」と「新しい日」に希望を託しました。ため息のでるアルバムです。 
 
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)

『ピェートゥル・サカリ+セザール・フランク』 Selection
BIS SACD 2349 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
セザール・フランク(1822–1890)
 オルガンのための3つの小品 FWV.35–37(1878)
  幻想曲 イ長調 カンタービレ ロ長調 英雄的小品 ロ短調
 オルガンのための3つのコラール FWV.38–40(1890)
  第1番 ホ長調 第2番 ロ短調 第3番 イ短調
  ピェートゥル・サカリ(オルガン)
 [サント・クロワ大聖堂のカヴァイエ=コル・オルガン(1880年製作)]
 
録音 2020年1月 サント・クロワ大聖堂(オルレアン、ロワレ県、フランス)
制作・録音 ルーカス・コヴァルスキ

 
フィンランドのオルガニスト、ピェートゥル・サカリ Pétur Sakari(1992–)の新作。彼が、20歳の時に録音、2014年1月にリリースした BIS Records 最初のアルバム『フランス・オルガン音楽』(BIS SA-1969)は、トゥルヌミールの《「復活のいけにえに」によるコラール即興曲》始まるプログラムを高い完成度で演奏、サンテティエンヌ・デュ・モン教会のオルガンの響きをリアルに捉えた録音と合わせて高い評価を獲得しました。
 
第2作のアルバムでは、セザール・フランクの晩年の2つの曲集をサント・クロワ大聖堂のオルガンで演奏しています。この大聖堂に設置されたオルガンは、アリスティド・カヴァイエ=コル Aristide Cavallé-Coll(1811–1899)が1880年に製作。手鍵盤三段というカヴァイエ=コルの当時最新鋭の楽器は、ヴィルトゥオーゾ・オルガニストでもあったフランクの《3つのコラール》にインスピレーションを与えたと言われています。《3つのコラール》は、フランクが亡くなる数週間前に完成させた最後の重要な作品です。「この作品で彼は、『疾風怒濤』からも19世紀後期の交響的オルガン音楽からも遠く離れた、清朗、均衡、透明なアンサンブル、洗練された和声を実現した」(ジャン=パスカル・ヴァション)。《オルガンのための3つの小品》は、1878年のパリ万国博覧会に際してフランクが、ウジェーヌ・ジグー、マリー・ヴィドール、サン=サーンスとともに提供した作品です。9月に作曲を終え、10月1日、フランクが、トロカデロ宮殿に設置されたカヴァイエ=コルのオルガンを弾いて初演しました。ピェートゥル・サカリという、もっとも新しい世代のオルガニストによるこのアルバムは、エミール・ベルリナー・スタジオのルーカス・コヴァルスキ Lukas Kowalski が、制作と録音を担当。2020年1月、サント・クロワ大聖堂のセッションで録音されました。
 
[プロフィール]
 
フィンランドのオルガニスト、ピェートゥル・サカリ Pétur Sakari (1992–)。3歳からチェロを習い、両親に連れられて行ったロードス島のオルガン・リサイタルでオルガンに魅せられ、8歳の時から鍵盤楽器の演奏を学び始めました。2005年、13歳でリサイタル・デビュー。ペッカ・スイッカネンの後、トゥオマス・カルヤライネンとカレヴィ・キヴィニエミ、2010年からはパリのエスケシュとヴァルニエの下で学び、その間、トゥルク、ラハティ、ポリとトゥルク大聖堂のオルガンフェスティヴァルに参加、最優秀若手芸術家と最優秀若手オルガニストに選ばれました。彼は、アイスランドの男子名をファーストネームにもち、アイスランド交響楽団の首席指揮者・音楽監督を務めていた父ペトリ Petri Sakari とともに、子供時代の大半をアイスランドで過ごしています。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円) 

『孤独の歌(Songs of Solitude)』 Selection
BIS SACD 2533 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical 

 
『孤独の歌(Songs of Solitude)ヴィオラ・ソロの音楽』
細川俊夫(1955–)[横浜]
 Sakura/Solitude(さくら/孤独)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV.1010》から)
ヨハンナ・ドーデラー(1969–)[シュミダタル、オーストリア]
 Shadows(影)(2020)
ホセ・セレブリエール(1938–)[ニューヨーク]
 Nostalgia(郷愁)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV.1007》から)
ティグラン・マンスリアン(1939–)[イェレヴァン(エレバン)、アルメニア]
 Ode an die Stille(沈黙に寄せる頌歌)(2020)
大島ミチル(1961–)[ニューヨーク]
 Silence(沈黙)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV.1009》から)
カレヴィ・アホ(1949–)[ヘルシンキ]
 Am Horizont(地平線にて)(2020)
ジョン・パウエル(1963–)[ロサンジェルス]
 Perfect Time for a Spring Cleaning(噴水清掃にうってつけの時)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV.1011》から) 
クリスティーナ・スピネイ(1984–)[ナッシュヴィル、テネシー州]
 Keep Moving(動きつづけろ)(2020)
リーアン・サミュエル(1944-)[プルヘリ、ウェールズ]
 Salve Nos(われらを救いたまえ)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV.1008》から) 
ゲイブリエル(ガブリエル)・プロコフィエフ(1975–)[ロンドン]
 Five Impressions of Self-Isolation(自己隔離で思う5つのこと)(2020)
  Calling Out…(掛け声をかける) Wine for One(ひとりで開けるワイン)
  Only Birds in the Sky(空の鳥だけが)
  How Many Weeks…?(いったい何週間…?)
  Back to the English Garden(イギリス式庭園にもどる)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV.1012》から)
フェデリコ・ガルデッラ(1979–)[ミラノ]
 Consolation(慰め)(2020)
  ヒヨリ・トガワ(戸川ひより)(ヴィオラ)
 
[楽器 Viola: Antonio Cassini, Modena, c.1690/Bow: Benoit Rolland]
 
録音 2020年6月、9月、10月 アンドレーアス教会(ベルリン=ヴァンゼー、ドイツ)
制作・録音・編集・ミクシング マルティン・ナゴルニ

 
「孤独の歌(Songs of Solitude)」のプロジェクトは、ひとつのウィルスのせいで世界中の人々が隔離状態に追いこまれた時、ヒヨリ・トガワの思いつきから生まれました。細川俊夫、ヨハンナ・ドーデラー、ホセ・セレブリエール、ティグラン・マンスリアン、大島ミチル、カレヴィ・アホ、ジョン・パウエル、クリスティーナ・スピネイ、リーアン・サミュエル、ゲイブリエル・プロコフィエフ、フェデリコ・ガルデッラ。各国の作曲家たちが、彼女のたっての願いを受け、さまざまな場所で「孤独の時」を過ごしながら作曲したヴィオラ・ソロの曲が、曲間にはさまれるバッハの《無伴奏チェロ組曲》の「ヴィオラ」による6つの〈サラバンド〉と一緒に演奏されます。
 
ヴィオラ奏者のヒヨリ・トガワ(戸川ひより) Hiyoli Togawa は、日本とオーストラリアをルーツにもち、ドイツのラインラントで育ちました。ヴァイオリンを習っていた幼少のころ、父親が大切にしていた古いヴィオラをこっそり弾いたことが、人生を捧げるに値する「声」をもつ楽器との出会いだったと言います。ライナー・モーク、アントワン・タメスティ、ハリオルフ・シュリヒティヒに学び、アルテミス四重奏団からは室内楽の知識を授けられました。シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭をはじめとするフェスティヴァルに定期的に出演、ハンブルク・カメラータ、ノルディック室内管弦楽団などのアンサンブルと共演しています。2017年8月、フィンランドのカレヴィ・アホが彼女の演奏からインスピレーションを得て作曲した《Solo XII - In memoriam EJR》を初演、翌年2月にハンブルク・カメラータのコンサート・シリーズ「Krypta」で再演しました。オンスロウ、メンデルスゾーン、カリヴォダの曲を弾いた『ヴィオラのためのロマンティック・ソナタ』(Naxos)がデビュー・アルバムです。
 
ヒヨリ・トガワは、モデナのアントニオ・カッシーニ Antonia Cassini が1690年ごろに製作したとされるヴィオラを弾いています。「孤独の歌」に似合った深い響きを生む楽器です。このアルバムにつけられた44ページのブックレットには、彼女がプロジェクトについて綴った「プロローグ」と「エピローグ」、それぞれの作曲家についての覚書(英語、ドイツ語、フランス語)が、写真や彼女の描いた絵と一緒に掲載されています。2020年の6月から10月にかけてベルリン=ヴァンゼーのアンドレーアス教会で行われたセッションの録音です。
 
「2020年の春、わたしはまだ、空っぽのベルリンのスタジオで座っていました。そして、晩夏が訪れるころ、わたしの机には新しい楽譜がいっぱい置かれ、壁には新しく描いた絵が掛かっていました。音と色彩に囲まれていることで、孤立しているという感覚はまったくありません。むしろ、支えられ、守られていると感じました。コンサートの聴衆がいないと音楽家としては孤独だと感じることが多かったと思います。でも、この古い音楽と新しい音楽のおかげで、これっぽっちも孤独感はありません。このことも私は『孤独の歌』で表現しました」(ヒヨリ・トガワ「エピローグ」から)
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)

『北欧ラプソディ(Nordic Rhapsody)』  Selection
BIS SACD 2560 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical 

 
『北欧ラプソディ(Nordic Rhapsody)』
クリスチャン・シンディング(1856–1941)
 古風な様式の組曲(Suite im alten Stil) イ短調 Op.10
 (ヴァイオリンとピアノのための)
ヴィルヘルム・ステーンハンマル(1871–1927)
 2つの感傷的なロマンス(Två sentimentala romanser) Op.28(1910)
 (ヴァイオリンとピアノのための)
  アンダンティーノ(Andantino)
  アレグロ・パテティコ(Allegro patetico)
ジャン・シベリウス(1865–1957)
 6つの小品(6 Pièces) Op.79(ヴァイオリンとピアノのための)
  思い出(Souvenir)(1915/1919) 牧歌的舞曲(Tanz-Idylle)(1917)
  子守歌(Berceuse)(1917)
カール・ニルセン(1865–1931)
 ロマンス(Romance) ニ長調 CNW61(c.1883)
 (ヴァイオリンとピアノのための)
エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928–2016)
 夜想曲と踊り(Notturno e danza)(1993)
 (ヴァイオリンとピアノのための)
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)
 ヴァイオリンソナタ第1番 ヘ長調 Op.8(1865)
  ユーハン・ダーレネ(ヴァイオリン)
  クリスチャン・イーレ・ハドラン(ピアノ)
 
[楽器 Violin: Antonio Stradivarius, 1756/Piano: Steinway D]
 
録音 2020年9月 クルトゥルム(ニューショーピング、スウェーデン)
制作・録音 イェンス・ブラウン

 
ノルショーピング生まれのスウェーデンのヴァイオリニスト、ユーハン・ダーレネ Johan Dalene(2000–)は、2019年、サミュエル・バーバーとチャイコフスキーの協奏曲(BIS SA-2440)でアルバム・デビュー。「ここ10年の間でもっとも素晴らしいヴァイオリニストのデビュー作のひとつ」(「BBC Music Magazine」)、「ダーレネの演奏には、彼が特別な感受性をもった音楽家だとわかる『存在』が感じられる」(「Gramophone」)など、各国のメディアから高く評価されました。ダーレネのアルバム第2作。北欧の19世紀から20世紀を代表する作曲家のヴァイオリンとピアノのための作品を演奏しています。
 
シンディングの《古風な様式の組曲》は、ライプツィヒに留学した彼が、バロック音楽、18世紀ドイツ音楽の装飾、バッハのスタイルに「デザイン」した作品。技巧的なパッセージも織りこまれ、クライスラーやハイフェッツが好んで演奏したと言われます。ステーンハンマルが、僚友アウリンとの友情に触発されて書いた、胸をうつリリシズムと明るい陽の光に満ちた「アンダンティーノ」と感情の起伏の激しい「アレグロ・パテティコ」の《2つの感傷的なロマンス》。シベリウスが《交響曲第5番》と同じころに作曲した《6つの小品》から〈思い出〉〈牧歌的舞曲〉〈子守歌〉。カール・ニルセンの《ロマンス》は、彼がコペンハーゲンのアカデミーで学ぶ以前に作曲したと推測されている作品です。ラウタヴァーラの《夜想曲と踊り》は、「ガラスのハーモニー」の上をヴァイオリンが「さまよう」夜の音楽と、白昼のダンス。「夜想曲」の素材は、後に、交響曲《光の天使》に再使用されます。プログラムの最後、グリーグの《ソナタ第1番》は、ノルウェーの民俗音楽とその心を「芸術作品」のうちに再生する道を選んだ彼の「一里塚」とみなされる作品です。
 
ダーレネのこのアルバムのため BIS Records は、ノルウェーのハドラン Christian Ihre Hadland(1983–)を共演者に起用しました。ハドランは、ソリストとしての活動とともに室内楽のピアニストとして忙しく、ヴァイオリニストのクラッゲルードやメゾソプラノのスーザン・グレアムたちと共演。アンドレーアス・ブランテリードと録音したグリーグとグレインジャーの『チェロ作品集』(BIS SA-2120)は、「グラモフォン」誌の「エディターズ・チョイス」に選ばれています。グリーグの《ソナタ》の第2楽章「アレグレット・クワジ・アンダンティーノ」。2019年から2022年の BBC Radio 3 「次世代アーティスト」のひとり、ダーレネと、2011年から2013年のアーティストだったハドランのふたりがグリーグの音楽に共感を寄せ、こよなく美しい「音楽の時」が生まれます。アルバムの制作と録音をイェンス・ブラウン Jens Braun が担当、ニューショーピング市の「クルトゥルム(Culturum)」でセッション録音されました。
 
[プロフィール]
 
ユーハン・ダーレネ Johan Dalene(2000–)。スウェーデンのノルショーピング生まれ。4歳からヴァイオリンを習い、3年後、初めてプロの交響楽団と共演。王立ストックホルム音楽大学でペール・エーノクソンに学び、ドラ・シュヴァルツベルク、パメラ・フランク、ゲルハルト・シュルツ、デトレフ・ハーン、ヘンニング・クラッゲルードのマスタークラスに参加しました。ヨーロッパ、中国、南アフリカのオーケストラにソリストとして客演、ローランド・ペンティネン、イングリ・アンスネスたちと共演。2018年の「ノルウェー・クレッシェンド」プログラムでジャニーヌ・ヤンセン、ライフ・オーヴェ・アンスネス、ギドン・クレーメルに教わりました。デンマークのオーゼンセで行われる「カール・ニルセン国際コンペティション」の2019年ヴァイオリン部門で第1位。2019年から2022年の BBC Radio 3「次世代アーティスト」に選ばれ、2020年/2021年のシーズン、スウェーデン放送交響楽団の「アーティスト・イン・レジデンス」を務めています。楽器は、オスロの「アンデシュ・スヴェオース公益基金」から貸与された1736年製のアントニオ・ストラディヴァリウスです。
 
クリスチャン・イーレ・ハドラン Christian Ihre Hadland(1983–)。ノルウェーのスタヴァンゲル生まれ。スタヴァンゲル大学芸術学部(旧、ローガラン音楽院)でエルリング・ラグナル・エーリクセンに学びました。15歳でノルウェー放送管弦楽団と共演してオーケストラ・デビュー。1999年からイジー・フリンカに私的に教わり、彼が教えるバラット・ドゥーエ音楽学校に入学。2008年、ソリストとしてのデビューコンサートをノルウェー・オペラで行いました。2011年から2013年の BBC Radio 3 「次世代アーティスト」のひとり。イギリスのオーケストラと共演、ウィグモアホールのリサイタル、リーソール室内楽フェスティヴァルへの出演と活動を広げ、音楽の繊細なニュアンスを大切にする演奏スタイルから「ピアノの抒情詩人」と呼ばれています。アンナル・フォレソーの『バルトーク・アルバム』(2L28SACD)で CD 録音デビュー。ヘンニング・クラッゲルードと共演したシンディングのヴァイオリンとピアノの作品集(Naxos)、ショパンとシューマンのピアノ作品集(Simax PSC1307)、ハイドン、ブラームス、ボロディンたちの作品を演奏した『ひばり』(PSC1337)ドメニコ・スカルラッティのソナタ集(Simax PSC1358)と、ソロ・アルバムをリリースしています。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)