過去のウェブサイトでは「北欧」のディスクと北欧以外の音楽のディスクを分けて紹介してきました。しかし、このところ、BIS Records がアメリカのエッシャー弦楽四重奏団やイギリスの歌手たちのアルバムをリリースしたり、Pentatone Records がフィンランドのペッカ・クーシストの録音を制作したりと、その「境界」があいまいになってきています。
 
そうした現状から、「新譜情報」では Nordic Sound Hiroshima の取り扱えるディスクを区別なく掲載し、これまでの "Our Select" と "Choice" をひとつにまとめ、この "Selection" ページで紹介することにしました。

『バーバー、アイヴズ』  Selection
BIS SACD 2360 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
サミュエル・バーバー(1910–1981)
 弦楽四重奏曲 ロ短調 Op.11(1936 rev.1937–43)
 弦楽四重奏曲 ロ短調 Op.11 - 第3楽章(初稿)
チャールズ・アイヴズ(1874–1954)
 弦楽四重奏曲第1番《救世軍から(From the Salvation Army)》(1896)
 Holding Your Own(スケルツォ)(1904)
 (《3つの短い曲のセット(A Set of Three Short Pieces)》から)
 (弦楽四重奏のための)
 弦楽四重奏曲第2番(1907–13)
  エッシャー弦楽四重奏団
   アダム・バーネット=ハート(第1ヴァイオリン)
   ダンビ・ウム(第2ヴァイオリン)
   ピエール・ラポワント(ヴィオラ)
   ブルック・スペルツ(チェロ)
 
録音 2019年2月1日–4日 ポットンホール(サフォーク、イングランド)
制作・録音 トーレ・ブリンクマン

 
マンハッタン音楽学校に学んだ音楽家たちが2005年に結成したニューヨーク市のアンサンブル、エッシャー弦楽四重奏団 Escher String Quartet の新作。バーバーとアイヴズの四重奏曲を演奏したアルバムです。
 
バーバーの《弦楽四重奏曲 ロ短調》は、1935年、彼がパートナーのジャン・カルロ・メノッティとともに滞在していたオーストリアで作曲に着手。予定していたカーティス弦楽四重奏団のコンサートツアーには間に合わず、1936年12月14日、ローマのヴィラ・アウレリアでプロアルテ四重奏団により初演されました。その後、バーバーは、第3楽章を撤回。1937年4月と出版の前に改訂を行い、1943年5月28日、アメリカ議会図書館でブダペスト四重奏団により初演されます。ソナタ形式の第1楽章「モルト・アレグロ・エ・アパッショナート」、《弦楽のためのアダージョ》に編曲された第2楽章「モルト・アダージョ」と、アタッカでつながる「モルト・アレグロ - プレスト」の3楽章の作品です。エッシャー弦楽四重奏団のこのアルバムでは、第3楽章の初稿「アンダンテ・モッソ、ウン・ポコ・アジタート - アレグロ・モルト、アラ・ブレーヴェ」が「小さな贈り物(lagniappe)として演奏されています。
 
アイヴズの《弦楽四重奏曲第1番》は、イェール大学の2年生だったアイヴズが、ニューイングランドでもっとも保守的作風の作曲家ホレイショ・パーカーの指導の下で作曲した作品です。ゴスペル賛美歌を素材にした、アレグロ・コン・モートの「コラール(Chorale)」、アレグロの「前奏曲(Prelude)」、アダージョ・カンタービレの「奉納唱(Offertory)」、アレグロ・マルツィアーレの「後奏曲(Postlude)」の4楽章で構成され、《救世軍から》の他、《信仰復興伝道会(A Revival Service)》の副題でも呼ばれます。《弦楽四重奏曲第2番》は、1907年から1913年の間に作曲され、1946年5月11日、コロンビア大学マクミラン劇場でジュリアード音楽院の学生アンサンブルにより初演されました。「議論(Discussions)」「口論(Arguments)」アイヴズの超越主義理想の要約とされる「山の呼び声(The Call of the Mountains)」の3楽章で書かれ、ラジカルな発想とスタイルの音楽が、エリオット・カーターをはじめとする作曲家たちにインスピレーションを与えました。作曲家ルー・ハリソンは、ウォールデン弦楽四重奏団によるプロ初演を聴き、「50年ないし1世紀にひとつ」との賛辞を贈り、アイヴズ自身も最良の一作とみなしたといわれます。この2曲の間に、もうひとつの小さな贈り物、《3つの短い曲のセット》の第2曲「Holding Your Own」の弦楽四重奏版がはさまれています。
 
エッシャー弦楽四重奏団は、メンバーが創設時から変わりました。第1ヴァイオリンのアダム・バーネット=ハート Adam Barnett-Hart とヴィオラのピエール・ラポワント Pierre Lapointe は、創設メンバー。第2ヴァイオリンは、ダンビ・ウム Danbi Um がアーロン・ボイドの後を受け、現在、ブレンダン・スペルツに代わっています。チェロは、ブルック・スペルツ Brook spletz がデイン・ジョーハンセンの後任として担当しています。
 
サミュエル・バーバーの作品と、ノスタルジーや「良きアメリカ」という共通点をもちながら、彼が敬遠したといわれるアイヴズの作品を組み合わせたアルバムです。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)

『バレエ・リュス(Ballets Russes)』 Selection
Harmonia Mundi HMX 2905342 classical[再リリース]

 
『バレエ・リュス(Ballets Russes)』
[Disc 1: ASM-015]
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882–1971)
 バレエ《春の祭典(Le sacre du printemps)》(1913年初版)
 バレエ《ペトルーシュカ(Pétrouchka)》(1911年初版)
[Disc 2: ASM-06]
アレクサンドル・グラズノフ(1865–1936)
 バレエ《ライモンダ(Raymonda)》 Op.57
 - サラセン人の入場 東洋の踊り
 バレエ《四季(Les Saisons)》 Op.67 - 秋のバッカナール
クリスチャン・シンディング(1856–1941)(チャーリー・パイパー 編曲)
 東洋舞曲(Danse Orientale)
アントン・アレンスキー(1861–1906)
 バレエ《エジプトの夜(Egyptian Nights)》
 - エジプト女の踊り 蛇のシャルムーズ ガジーの踊り
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)(ブルーノ・マントヴァーニ 編曲)
 小さなトロル(小妖精)(Småtrold) Op.71–3(抒情小曲集 第10集 から)
イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882–1971)
 バレエ《火の鳥(L'oiseau de feu)》(1910)
  レ・シエクル フランソワ=グザヴィエ・ロト(指揮)
 
録音 2013年5月14日 メス・アルセナル、5月16日 グルノーブル MC2、9月29日 フランクフルト旧オペラ座(以上、春の祭典)、2013年5月14日 メス・アルセナル、5月16日 グルノーブル MC2(ペトルーシュカ)、2010年10月2日 シテ・ド・ラ・ミュジーク(パリ)、10月9日 ラン大聖堂(以上、Disc 2)(すべてライヴ)

 
フランソワ=グザヴィエ・ロト François-Xavier Roth(1971–)と彼が創設した「レ・シエクル Les Siècle」の「ライヴ録音」は、最初にリリースされたベルリオーズの《幻想交響曲》(ASM-02)から注目され、以後、新作が発表されるたびに評価と人気が高まり、新鮮な発想の音楽を求める各国のリスナーの期待を集めるようになりました。このシリーズは、《幻想交響曲》から『リゲティ』(ASM-026)までは、アルルの出版社 Actes Sud が制作、同じアルルに本社を置く Harmonia Mundi が配給というスタイルでアルバム・リリースが行われていました。そして、2017年のラヴェルの《ダフニスとクロエ》(HMM 905280)以降のアルバムは、国際的な需要に応えるため、Harmonia Mundiが制作も担当するようになりました。
 
Harmonia Mundi がリリースする「2枚組」アルバムには、Actes Sud が制作し、すでに廃盤になった2枚のアルバム、《春の祭典》《ペトルーシュカ》(ASM-015)と、《火の鳥》とグラズノフたちの作品(ASM-06)が合わせて収録されています。《春の祭典》と《ペトルーシュカ》は、いずれも「初版」による演奏です。《春の祭典》は、1913年5月29日、ピエール・モントゥーが指揮したシャンゼリゼ劇場での初演に使った、パウル・ザッハー財団所蔵の自筆譜を基本に、ロシア音楽出版社が1922年に出版した初版スコアとピエール・モントゥーが1920年代の演奏に使ったスコアを合わせて検討、音の誤りやストラヴィンスキーが改訂した個所を明確にして演奏されました。冒頭の旋律を演奏する1900年ビュッフェ・クランポン製のバソン、小型のフレンチ・テューバ、小トロンボーン、ピストンを備えた古い形のホルンなど、楽器も時代を考証して選ばれ、「初演の音」の再現が試みられています。《ペトルーシュカ》は、四管編成の1911年初版により演奏され、1892年製のエラール・ピアノをジャン=ヒサノリ・スギタニが弾いています。1910年6月にピエルネが指揮してパリ・オペラ座で初演された《火の鳥》も、その楽器やコピー楽器を使って当時の響きを再現することを意図した演奏です。
 
価格 3,740円(税込価格)(本体価格 3,400円) 

『永遠(Eilífur)』  Selection
Pentatone PTC 5186950 contemporary/classical

 
ヴィクトル・オッリ・アウルナソン
 Eilífur(永遠)
  Var * The Thread ** Maiden ** Er */** The Faultline **
  The Vision Nectar Animal Mundi Var - Er *
  フォウストブレーズル男声合唱団 * アウルニ・ハルザルソン(指揮)*
  ベネディクト・クリスチャウンソン(テノール)*
  グリームル・ヘルガソン(クラリネット)*
  エーミル・フリズフィンソン(ホルン)*
  ヨーセフ・オグニベーネ(ホルン)*
  シーグルズル・ソルベルグソン(トロンボーン)*
  カルロス・カロ・アギレラ(トロンボーン)*
  男声六重唱 **
   アーロン・ステイン・アウスビャルナソン ビャルニ・クレインソン
   グヴズムンドゥル・ヴィグニル・カルルソン
   ハフステイン・ソウロウルソン オットルン・アルナルソン
   オットルン・イーミル・アーラソン
  ヴィクトル・オッリ・アウルナソン(指揮)** 
  ヴィクトル・オッリ・アウルナソン(ソロ楽器)
  ヤイール・エラザール・グロットマン(コントラバス・ソロ)
  (Var, The Thread)
  シュテファン・バウマン(バスクラリネット、サクフォソーン)
  (The Vision)
  ベネディクト・スマウリ・スクーラソン(ギター)(Anima Mundi)
  ブダペスト・アート・オーケストラ
  ヴィクトル・オッリ・アウルナソン(指揮)
 
録音 2018年・2019年 VOA Studio(ベルリン)(総合録音)、2017年1月 ラングホルト教会(レイキャヴィーク、アイスランド)*、フリーキル教会(ハフナルフィヨルズル、アイスランド)**、2018年・2019年 ハンガリー放送第22スタジオ「East Connection Studios」(ブダペスト)(オーケストラ)
制作・録音・ミクシング ヴィクトル・オッリ・アウルナソン
制作(オーケストラ) ミクローシュ・ルカーチ
録音 シールグズル・ヨウンソン * ベルグル・ソウリソン **
録音(オーケストラ) ガボール・ビューチコ

 
このところ、さまざまなジャンルのアイスランドの音楽家たちが注目を集めてきています。特に有名なのが、チェリストで作曲家のヒルドゥル・グヴズナドウッティル(ヒドゥル・グドナドッティル)。エレクトロニカ・バンドのメンバーでもある彼女は、『チェルノブイリ』などの映画の音楽を手がけ、『ジョーカー』でゴールデングローブ賞とアカデミー賞の作曲賞を受賞しました。Pentatone Records からアルバムがリリースされるヴィクトル・オッリ・アウルナソン Viktor Orri Árnason も、注目される音楽家のひとりです。彼は、アイスランド芸術大学でヴァイオリンとヴィオラ、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学で作曲と指揮を学び、バンド「ヒャルタリーン Hjaltalín」のメンバーとしてヴァイオリンと作詞作曲を担当、2008年には現代音楽の弦楽アンサンブル「スタルク Stark」を共同で設立しました。「クラシカル音楽の世界とスタジオ制作芸術の世界を衝突させること」に重点を置いて活動。自身のスタジオ「VOA Studio」をベルリンに構え、ヒルドゥルをはじめとする音楽家たちも創作の場として使っています。
 
『永遠の(Eilífur)」は、ヴィクトル・オッリのソロ・デビュー・アルバムです。「永遠に生きることの展望」を瞑想。「近い日、医学の進歩による自然死の根絶が現実となる」ことをイメージした、わかりやすい近未来の物語を、抽象的なアイスランド語の歌詞と緻密に作られた「音楽の語」りで織りあげてゆく、「生きるに値する命」を支えるものへの頌歌をコンセプトに作られました。男声合唱がメインの3曲は、レイキャヴィークの「フォウストブレーズル男声合唱団(Karlakórinn Fóstbræður)」の創設100年記念コンサートのために委嘱された作品です。《Var》(「見よ、警戒せよ、夜の空気を吸え……」)《Er》(「真ん中でひとつになれ……」)《Var - Er》(「永遠。おまえは私のそばで意識している……」)。オーケストラを中心とする6曲は、「24人の弦楽オーケストラ」「12人のチェロと10人のコントラバス」「2つのバスフルート、2つのサクソフォーン、バスクラリネット、コントラバス・クラリネット、2人の打楽器奏者、ヴァイオリン、ヴィオラとチェロ」と、3つの異なる編成で演奏され、男声六重唱、ヴィクトル・オッリ自身の楽器ソロ、ヤイール・エラザール・グロットマン Yair Elazar Glotman のコントラバスなどが加わります。クラシカル音楽をベースにしたメロディと調性のあるこれらの「音」は、アイスランドの教会やハンガリー放送のスタジオで録音され、ヴィクトル・オッリがベルリンの彼のスタジオでミックスしました。ゆたかな感性で作られた「音風景」が美しく、余韻を残す作品です。
 
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)

『おとぎ話(Eventyr)』 Selection
2L 2L 163SACD SACD hybrid (5.0 surround/stereo)  classical

 
『おとぎ話(Eventyr)』
ゲイル・トヴェイト(1908–1981)
 風神の竪琴(Eolsparpa)(1945)
クリスチャン・シンディング(1856–1941)
 ピアノソナタ ロ短調 Op.91(1909)
アルフ・フールム(1882–1972)
 おとぎ話の国(Eventyrland) Op.16
  魔法にかけられた庭で(I den forheksede have)
  王女さまが金のリンゴで遊んでいる(Prinsessen leker med gulleplene)
  三匹のトロル(De tre troll) 雪やこんこん(Det sner og det sner)
  鬼の宴(Tusselag) オーロラの娘たち(Nordlysdøtrene)
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)
 バラード(Ballade) ト短調 Op.24(1875–76)
  クリスチャン・グローヴレン(ピアノ) [Piano: Steinway D-model]
 
録音 2019年11月 ソフィエンベルグ教会 (オスロ、ノルウェー)
制作・バランスエンジニアリング・ミクシング・マスタリング モッテン・リンドベルグ
編集 ヨルン・シメンスタ、モッテン・リンドベルグ
 
[DXD(24bit/352.8kHz)録音]
[SACD: 5.0 multichannel DSD/2.0 stereo DSD/RedBook PCM: MQA CD]

 
ノルウェーの人たちは “eventyr” という言葉を聞くと、おとぎ話、冒険談、民話、幻想物語といったことを思い浮かべると言います。ノルウェーのピアニスト、クリスチャン・グローヴレンは、このアルバムで、トヴェイト、シンディング、フールム、グリーグの作品を弾きました。「彼らの、狂気じみていたり、美しかったり、悲しみと喜びにあふれ、魔法と愛がいっぱい『物語』と向き合っていること、それ自体が冒険の物語だった」と彼は語ります。「故郷に帰ったような気分だ」。
 
ゲイル・トヴェイト(ガイル・トヴァイト) Geirr Tveitt(1908–1981)の《風神の竪琴》は、イェールハルド(ゲルハール)・ムンテの絵からインスピレーションを得て作曲された作品です。「…翼をつけた竪琴が、荒れる海を渡ってゆく、空高く、煌く星を弦(つる)にのせて」。フランス印象主義、とりわけラヴェルの《夜のガスパール》の影響が明らかな手法で書かれた、「険しい崖、深いフィヨルド、荒れた天気、そして、雲間から差し込む光がなによりも美しい、ノルウェー西岸を想起させる音楽」(グローヴレン)。手稿譜の日付は「1945年6月22日」。トヴェイト自身の1949年の録音(Simax PSC1805)は、彼の「私的」な版で演奏されたため、初稿を弾いたこの演奏がこの作品の事実上初めての録音です。
 
クリスチャン・シンディング Christian Sinding(1856–1941)の《ピアノソナタ ロ短調》は、1909年の作品です。シンディングの特徴が顕著に表れ、「《春のさざめき》という、たったひとつの作品でほとんどの人に知られている」彼の代表作のひとつとされています。「アレグロ・マ・ノン・トロッポ」「アンダンテ」「ヴィヴァーチェ」の3楽章の構成。この作品をグローヴレンは、この作品を「シンディングの吠え声(sindingske brus)」と呼び、「私にとっては、ヴァイキング船、大きく膨らんだ帆、ヴァイキングたちの略奪と英雄的な行動という『サガ』のスタイルの作品」と語っています。アルフ・フールム Alf Hurum(1882–1972)も、トヴェイトと同様、フランス音楽の影響を受けたひとりです。1920年の《おとぎ話の国》は、妖精やトロルなどノルウェーの伝説を題材にした作品で知られるテオドール・キッテルセンの絵画に通じる雰囲気をもち、画家でもあったフールムの「音の描画」と呼べる作品です。
 
エドヴァルド・グリーグ Edvard Grieg(1843–1907)の《バラード》は、1876年春、彼がさまざまな苦難をかかえていた時期に作曲されました。悲しい音調のヴァルドレスの民謡《北国の農民》を主題にした「変奏曲」の形式で書かれ、技術的、表現的なチャレンジと「冒険」を克服してはじめて、聴き手の心をとらえる輝かしい音楽として示される作品です。グローヴレンをはじめとする多くのピアニストたちから、ノルウェーのピアノ音楽でもっとも重要な作品とみなされています。
 
クリスチャン・グローヴレン Christian Grøvlend(1990–)は、ベルゲン生まれ。イジー・フリンカに教わった後、ノルウェー国立音楽大学でホーヴァル・ギムセとラーシュ・アンデシュ・トムテルに学びました。ウィーン国立音楽大学に留学、王立デンマーク音楽アカデミーではイェンス・エルヴェケーアのソリスト・クラスで学んでいます。ノルウェー国内の「青少年音楽コンペティション」には三度出場、第1位をソリストとして二度、室内楽奏者として一度獲得。ベルゲン・フィルハーモニックと共演した2007年の回には「聴衆賞」に選ばれました。『おとぎ話(Eventyr)』は、配信だけの『Bach - Inside Polyphony』(2L139)に続く彼のアルバム第2作です。グローヴレンが29歳だった2019年11月、ソフィエンベルグ教会でセッション録音されました。
 
グローヴレンは、トヴェイトの《風神の竪琴》の1945年の楽譜によるこの演奏が世界初録音だということが、にわかには信じがたいと、言っています。そして、「トヴェイトのピアニストとしての素晴らしい技巧を雄弁に語り、ピアノの音の世界とテクスチュアを探求した彼のユニークは想像力を明らかにしてみせた作品を、より多くの聴き手に紹介できることを幸せに思います」と述べています。シンディングの《ソナタ》は、むせかえるようなロマンティシズムが瑞々しい音楽として示され、フールムの《おとぎ話の国》は、6枚の描画が子供の目と心で眺められています。
 
グリーグの《バラード》は、グローヴレンがギムセに学んだことが、はっきりとうかがえる演奏です。この作品は、グローヴレンと同郷のアイナル・ロッティンゲン Einar Røttengen(1963–)も録音(Pro Musica PPC 9053)しています。「この曲は、ロマンティックで、深く、優しく、内省的だ。そして形式の上でも壮大な理念をもっている。その本質的なピアニスティックな構築上の要求は、演奏者にとって試金石である」(大束省三・訳)という、アイナル・ステーン=ノクレベルグの言葉を実際の音として示した、深い印象を残す演奏です。ロッティンゲンが、41歳になる少し前、2004年1月の録音。ノルウェーのピアニストたちは、その折々、それぞれの《バラード》を綴っていきます。 
 
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円) 

『The Night and the Music』 Selection
Prophone PCD 249 jazz

 
『The Night and the Music』
 Night and Day(Cole Porter)
 Let’s Face the Music and Dance(Irving Berlin)*
 Red Sails in the Sunset(Hugh Williams/Jimmy Kennedy)
 ‘Round Midnight(Thelonious Monk/Bernie Hanighen)
 Stardust(Hoagy Carmichael/Mitchell Parish)
 Dream a Little Dream of Me(Fabian Andre/Wilbur Schwandt/Gus Kahn)
 Sure on This Shining Night(Samuel Barber/James Agee)
 You and the Night and the Music(Arthur Schwartz/Howard Dietz)
 In the Wee Small  Hours of the Morning(David Mann/Bob Hilliard)
 Good Morning Starshine(James Rado/Gerome Ragni)
 I Like the Sunrise(Duke Ellington)*
  リーナ・ニューベリ(ヴォーカル)
  ダニエル・カールソン(ピアノ)
 
録音 ルンマロー・コンサートホール(ルンマロー、スウェーデン)、スタジオ・エピデミーン(Studio Epidemin)(ヨーテボリ、スウェーデン)*
制作 リーナ・ニューベリ、ダニエル・カールソン
録音 ヨーラン・ペッテション、ユハンネス・ルンドベリ *

 
1970年、ストックホルム生まれのリーナ・ニューベリ Lina Nyberg と、1973年、ヴェルムランドのクリスティンスハムン生まれのダニエル・カールソン Daniel Karlsson は、スウェーデンと世界のジャズシーンを舞台に輝かしいキャリアを築いてきました。もっとも成功したスウェーデンのジャズ・ミュージシャンのふたりが初めて共演するアルバム『The Night and the Music(夜と音楽)』。夕まぐれ、夜、朝まだき、と移りゆく「夜」の姿と思いを綴った歌から、リーナとダニエルのふたりで入念に選んだ11曲を歌うプログラムです。コール・ポーターの《Night and Day(夜も昼も)》、アーヴィング・バーリンがフレッド・アステアとジンジャー・ロジャーズの映画『Follow the Fleet(艦隊を追って)』のために作った《Let’s Face the Music and Dance》、プラターズのレコードがヒットチャートに載った《Red Sails in the Sunset(夕陽に赤い帆)》、セロニアス・モンクの《’Round Midnight》といったジャズの「エバーグリーン」、ミュージカル『Hair/ヘアー』の《Good Morning Starshine》。サミュエル・バーバーの《Sure on This Shining Night(この輝く夜にきっと)》は、彼が、《ノックスヴィル:1915年の夏》に先立ち、同じジェイムズ・エイジーの詩に作曲した作品です。継ぎ目なくつづく抒情のメロディに始まるこの歌は、優れたバリトン歌手でもあったバーバーが書いた100を超す歌曲の最良の一曲とされ、多くの歌手から愛されています。全ナンバーの編曲とプロデュースをリーナとダニエルが共同で手がけ、ストックホルム群島の島ルンマローのコンサートホールとヨーテボリのスタジオのセッションで録音しました。
 
[追記]
リーナ・ニューベリとダニエル・カールソンのデュオ・アルバム『The Night and the Music(夜と音楽)』を聴きました。良い知らせと悪い知らせがあります。
 
悪い知らせから。このところ Prophone Records の音の性格が、かつての「Prophone の音」からかなり変わってきました。楽器と声の姿とテクスチュアを自然に感じさせる音から、楽器や声の音とテクスチュアをダイレクトに聞かせる音に変わり、それが「Prophone のアルバム」のイメージにオーバーに言うと劇的な変化をもたらしました。いつごろからなのか。記憶をたどると、Nilent Studio のラーシュ・ニルソンが制作や録音を担当するようになった時期と重なっている気がします。このラーシュ・ニルソンは、他のレーベルでも仕事をしており、いずれも高い評価を得てきました。高い技術と音楽に対する独自の哲学をもっていると言われ、スウェーデンのピアニスト、ヤコブ・カールソンとは ACT Music のアルバムを共同で制作するなど、北欧の音楽家たちから信頼が寄せられています。ヨーラン・ペッテション Göran Petersson とユハンネス・ルンドベリ Johannes Lundberg がエンジニアリングを担当したこのニューベリの新作も、ニルソンのスタイルと同じ性格の音質で録音されています。かつての Prophone の音が懐かしい……。
 
そして、良い知らせ。『The Night and the Music』は、ニューベリとカールソンが共演を希望み、ずっと作りたいと思っていたというアルバムです。そのため、アルバムの制作にはふたりが共同であたりました。そのことを考えると、ペッテションとルンドベリが、カールソンのタッチと音、そしてニューベリの声を「リアル」に収録した音は、プロデュースしたふたりが意図したものとみなすのが自然でしょう。実際、この「音」に慣れてくると、ふたりが音楽を創造している、その空間に居合わせている気分になってきます。コンサートホールで収録されていながら、”intimate” な気分が漂い、ストックホルムかボストンか、大都市の片隅にでもあるクラブにいる気分です。《夕陽に赤い帆》の波を模したピアノのアルペッジョや《’Round Midnight》や《スターダスト》のちょっとしたフレーズににんまりする。《この輝く夜にきっと》を聴き、この後、バーバーの歌曲を聴こうかと思ってしまいます。
 
このアルバムのデータには、録音の場所は書かれていますが、時期の記載がありません。ただ、プレスリリースの情報から推測すると2020年の夏あたりの録音だと思われます。もしそうなら、COVID-19 がみんなと音楽家たちの生活と心に大きな影を落としている時期です。シンガーソングライターのイサベラ・ルンドグレーンは、『Look for the Silver Lining(希望の光をさがして』のアルバムで「元気を出そう」と歌いました。そしてニューベリとカールソンは、夜に物を思い、「COVID-19 の前」には戻れないことを知りながら、「わたしは夜明けが好き」と「新しい日」に希望を託しました。ため息のでるアルバムです。 
 
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)

『ピェートゥル・サカリ+セザール・フランク』 Selection
BIS SACD 2349 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical

 
セザール・フランク(1822–1890)
 オルガンのための3つの小品 FWV.35–37(1878)
  幻想曲 イ長調 カンタービレ ロ長調 英雄的小品 ロ短調
 オルガンのための3つのコラール FWV.38–40(1890)
  第1番 ホ長調 第2番 ロ短調 第3番 イ短調
  ピェートゥル・サカリ(オルガン)
 [サント・クロワ大聖堂のカヴァイエ=コル・オルガン(1880年製作)]
 
録音 2020年1月 サント・クロワ大聖堂(オルレアン、ロワレ県、フランス)
制作・録音 ルーカス・コヴァルスキ

 
フィンランドのオルガニスト、ピェートゥル・サカリ Pétur Sakari(1992–)の新作。彼が、20歳の時に録音、2014年1月にリリースした BIS Records 最初のアルバム『フランス・オルガン音楽』(BIS SA-1969)は、トゥルヌミールの《「復活のいけにえに」によるコラール即興曲》始まるプログラムを高い完成度で演奏、サンテティエンヌ・デュ・モン教会のオルガンの響きをリアルに捉えた録音と合わせて高い評価を獲得しました。
 
第2作のアルバムでは、セザール・フランクの晩年の2つの曲集をサント・クロワ大聖堂のオルガンで演奏しています。この大聖堂に設置されたオルガンは、アリスティド・カヴァイエ=コル Aristide Cavallé-Coll(1811–1899)が1880年に製作。手鍵盤三段というカヴァイエ=コルの当時最新鋭の楽器は、ヴィルトゥオーゾ・オルガニストでもあったフランクの《3つのコラール》にインスピレーションを与えたと言われています。《3つのコラール》は、フランクが亡くなる数週間前に完成させた最後の重要な作品です。「この作品で彼は、『疾風怒濤』からも19世紀後期の交響的オルガン音楽からも遠く離れた、清朗、均衡、透明なアンサンブル、洗練された和声を実現した」(ジャン=パスカル・ヴァション)。《オルガンのための3つの小品》は、1878年のパリ万国博覧会に際してフランクが、ウジェーヌ・ジグー、マリー・ヴィドール、サン=サーンスとともに提供した作品です。9月に作曲を終え、10月1日、フランクが、トロカデロ宮殿に設置されたカヴァイエ=コルのオルガンを弾いて初演しました。ピェートゥル・サカリという、もっとも新しい世代のオルガニストによるこのアルバムは、エミール・ベルリナー・スタジオのルーカス・コヴァルスキ Lukas Kowalski が、制作と録音を担当。2020年1月、サント・クロワ大聖堂のセッションで録音されました。
 
[プロフィール]
 
フィンランドのオルガニスト、ピェートゥル・サカリ Pétur Sakari (1992–)。3歳からチェロを習い、両親に連れられて行ったロードス島のオルガン・リサイタルでオルガンに魅せられ、8歳の時から鍵盤楽器の演奏を学び始めました。2005年、13歳でリサイタル・デビュー。ペッカ・スイッカネンの後、トゥオマス・カルヤライネンとカレヴィ・キヴィニエミ、2010年からはパリのエスケシュとヴァルニエの下で学び、その間、トゥルク、ラハティ、ポリとトゥルク大聖堂のオルガンフェスティヴァルに参加、最優秀若手芸術家と最優秀若手オルガニストに選ばれました。彼は、アイスランドの男子名をファーストネームにもち、アイスランド交響楽団の首席指揮者・音楽監督を務めていた父ペトリ Petri Sakari とともに、子供時代の大半をアイスランドで過ごしています。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円) 

『孤独の歌(Songs of Solitude)』 Selection
BIS SACD 2533 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical 

 
『孤独の歌(Songs of Solitude)ヴィオラ・ソロの音楽』
細川俊夫(1955–)[横浜]
 Sakura/Solitude(さくら/孤独)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第4番 変ホ長調 BWV.1010》から)
ヨハンナ・ドーデラー(1969–)[シュミダタル、オーストリア]
 Shadows(影)(2020)
ホセ・セレブリエール(1938–)[ニューヨーク]
 Nostalgia(郷愁)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第1番 ト長調 BWV.1007》から)
ティグラン・マンスリアン(1939–)[イェレヴァン(エレバン)、アルメニア]
 Ode an die Stille(沈黙に寄せる頌歌)(2020)
大島ミチル(1961–)[ニューヨーク]
 Silence(沈黙)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第3番 ハ長調 BWV.1009》から)
カレヴィ・アホ(1949–)[ヘルシンキ]
 Am Horizont(地平線にて)(2020)
ジョン・パウエル(1963–)[ロサンジェルス]
 Perfect Time for a Spring Cleaning(噴水清掃にうってつけの時)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第5番 ハ短調 BWV.1011》から) 
クリスティーナ・スピネイ(1984–)[ナッシュヴィル、テネシー州]
 Keep Moving(動きつづけろ)(2020)
リーアン・サミュエル(1944-)[プルヘリ、ウェールズ]
 Salve Nos(われらを救いたまえ)(2020)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第2番 ニ短調 BWV.1008》から) 
ゲイブリエル(ガブリエル)・プロコフィエフ(1975–)[ロンドン]
 Five Impressions of Self-Isolation(自己隔離で思う5つのこと)(2020)
  Calling Out…(掛け声をかける) Wine for One(ひとりで開けるワイン)
  Only Birds in the Sky(空の鳥だけが)
  How Many Weeks…?(いったい何週間…?)
  Back to the English Garden(イギリス式庭園にもどる)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
 サラバンド(《無伴奏チェロ組曲第6番 ニ長調 BWV.1012》から)
フェデリコ・ガルデッラ(1979–)[ミラノ]
 Consolation(慰め)(2020)
  ヒヨリ・トガワ(戸川ひより)(ヴィオラ)
 
[楽器 Viola: Antonio Cassini, Modena, c.1690/Bow: Benoit Rolland]
 
録音 2020年6月、9月、10月 アンドレーアス教会(ベルリン=ヴァンゼー、ドイツ)
制作・録音・編集・ミクシング マルティン・ナゴルニ

 
「孤独の歌(Songs of Solitude)」のプロジェクトは、ひとつのウィルスのせいで世界中の人々が隔離状態に追いこまれた時、ヒヨリ・トガワの思いつきから生まれました。細川俊夫、ヨハンナ・ドーデラー、ホセ・セレブリエール、ティグラン・マンスリアン、大島ミチル、カレヴィ・アホ、ジョン・パウエル、クリスティーナ・スピネイ、リーアン・サミュエル、ゲイブリエル・プロコフィエフ、フェデリコ・ガルデッラ。各国の作曲家たちが、彼女のたっての願いを受け、さまざまな場所で「孤独の時」を過ごしながら作曲したヴィオラ・ソロの曲が、曲間にはさまれるバッハの《無伴奏チェロ組曲》の「ヴィオラ」による6つの〈サラバンド〉と一緒に演奏されます。
 
ヴィオラ奏者のヒヨリ・トガワ(戸川ひより) Hiyoli Togawa は、日本とオーストラリアをルーツにもち、ドイツのラインラントで育ちました。ヴァイオリンを習っていた幼少のころ、父親が大切にしていた古いヴィオラをこっそり弾いたことが、人生を捧げるに値する「声」をもつ楽器との出会いだったと言います。ライナー・モーク、アントワン・タメスティ、ハリオルフ・シュリヒティヒに学び、アルテミス四重奏団からは室内楽の知識を授けられました。シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭をはじめとするフェスティヴァルに定期的に出演、ハンブルク・カメラータ、ノルディック室内管弦楽団などのアンサンブルと共演しています。2017年8月、フィンランドのカレヴィ・アホが彼女の演奏からインスピレーションを得て作曲した《Solo XII - In memoriam EJR》を初演、翌年2月にハンブルク・カメラータのコンサート・シリーズ「Krypta」で再演しました。オンスロウ、メンデルスゾーン、カリヴォダの曲を弾いた『ヴィオラのためのロマンティック・ソナタ』(Naxos)がデビュー・アルバムです。
 
ヒヨリ・トガワは、モデナのアントニオ・カッシーニ Antonia Cassini が1690年ごろに製作したとされるヴィオラを弾いています。「孤独の歌」に似合った深い響きを生む楽器です。このアルバムにつけられた44ページのブックレットには、彼女がプロジェクトについて綴った「プロローグ」と「エピローグ」、それぞれの作曲家についての覚書(英語、ドイツ語、フランス語)が、写真や彼女の描いた絵と一緒に掲載されています。2020年の6月から10月にかけてベルリン=ヴァンゼーのアンドレーアス教会で行われたセッションの録音です。
 
「2020年の春、わたしはまだ、空っぽのベルリンのスタジオで座っていました。そして、晩夏が訪れるころ、わたしの机には新しい楽譜がいっぱい置かれ、壁には新しく描いた絵が掛かっていました。音と色彩に囲まれていることで、孤立しているという感覚はまったくありません。むしろ、支えられ、守られていると感じました。コンサートの聴衆がいないと音楽家としては孤独だと感じることが多かったと思います。でも、この古い音楽と新しい音楽のおかげで、これっぽっちも孤独感はありません。このことも私は『孤独の歌』で表現しました」(ヒヨリ・トガワ「エピローグ」から)
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)

『北欧ラプソディ(Nordic Rhapsody)』  Selection
BIS SACD 2560 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical 

 
『北欧ラプソディ(Nordic Rhapsody)』
クリスチャン・シンディング(1856–1941)
 古風な様式の組曲(Suite im alten Stil) イ短調 Op.10
 (ヴァイオリンとピアノのための)
ヴィルヘルム・ステーンハンマル(1871–1927)
 2つの感傷的なロマンス(Två sentimentala romanser) Op.28(1910)
 (ヴァイオリンとピアノのための)
  アンダンティーノ(Andantino)
  アレグロ・パテティコ(Allegro patetico)
ジャン・シベリウス(1865–1957)
 6つの小品(6 Pièces) Op.79(ヴァイオリンとピアノのための)
  思い出(Souvenir)(1915/1919) 牧歌的舞曲(Tanz-Idylle)(1917)
  子守歌(Berceuse)(1917)
カール・ニルセン(1865–1931)
 ロマンス(Romance) ニ長調 CNW61(c.1883)
 (ヴァイオリンとピアノのための)
エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928–2016)
 夜想曲と踊り(Notturno e danza)(1993)
 (ヴァイオリンとピアノのための)
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)
 ヴァイオリンソナタ第1番 ヘ長調 Op.8(1865)
  ユーハン・ダーレネ(ヴァイオリン)
  クリスチャン・イーレ・ハドラン(ピアノ)
 
[楽器 Violin: Antonio Stradivarius, 1756/Piano: Steinway D]
 
録音 2020年9月 クルトゥルム(ニューショーピング、スウェーデン)
制作・録音 イェンス・ブラウン

 
ノルショーピング生まれのスウェーデンのヴァイオリニスト、ユーハン・ダーレネ Johan Dalene(2000–)は、2019年、サミュエル・バーバーとチャイコフスキーの協奏曲(BIS SA-2440)でアルバム・デビュー。「ここ10年の間でもっとも素晴らしいヴァイオリニストのデビュー作のひとつ」(「BBC Music Magazine」)、「ダーレネの演奏には、彼が特別な感受性をもった音楽家だとわかる『存在』が感じられる」(「Gramophone」)など、各国のメディアから高く評価されました。ダーレネのアルバム第2作。北欧の19世紀から20世紀を代表する作曲家のヴァイオリンとピアノのための作品を演奏しています。
 
シンディングの《古風な様式の組曲》は、ライプツィヒに留学した彼が、バロック音楽、18世紀ドイツ音楽の装飾、バッハのスタイルに「デザイン」した作品。技巧的なパッセージも織りこまれ、クライスラーやハイフェッツが好んで演奏したと言われます。ステーンハンマルが、僚友アウリンとの友情に触発されて書いた、胸をうつリリシズムと明るい陽の光に満ちた「アンダンティーノ」と感情の起伏の激しい「アレグロ・パテティコ」の《2つの感傷的なロマンス》。シベリウスが《交響曲第5番》と同じころに作曲した《6つの小品》から〈思い出〉〈牧歌的舞曲〉〈子守歌〉。カール・ニルセンの《ロマンス》は、彼がコペンハーゲンのアカデミーで学ぶ以前に作曲したと推測されている作品です。ラウタヴァーラの《夜想曲と踊り》は、「ガラスのハーモニー」の上をヴァイオリンが「さまよう」夜の音楽と、白昼のダンス。「夜想曲」の素材は、後に、交響曲《光の天使》に再使用されます。プログラムの最後、グリーグの《ソナタ第1番》は、ノルウェーの民俗音楽とその心を「芸術作品」のうちに再生する道を選んだ彼の「一里塚」とみなされる作品です。
 
ダーレネのこのアルバムのため BIS Records は、ノルウェーのハドラン Christian Ihre Hadland(1983–)を共演者に起用しました。ハドランは、ソリストとしての活動とともに室内楽のピアニストとして忙しく、ヴァイオリニストのクラッゲルードやメゾソプラノのスーザン・グレアムたちと共演。アンドレーアス・ブランテリードと録音したグリーグとグレインジャーの『チェロ作品集』(BIS SA-2120)は、「グラモフォン」誌の「エディターズ・チョイス」に選ばれています。グリーグの《ソナタ》の第2楽章「アレグレット・クワジ・アンダンティーノ」。2019年から2022年の BBC Radio 3 「次世代アーティスト」のひとり、ダーレネと、2011年から2013年のアーティストだったハドランのふたりがグリーグの音楽に共感を寄せ、こよなく美しい「音楽の時」が生まれます。アルバムの制作と録音をイェンス・ブラウン Jens Braun が担当、ニューショーピング市の「クルトゥルム(Culturum)」でセッション録音されました。
 
[プロフィール]
 
ユーハン・ダーレネ Johan Dalene(2000–)。スウェーデンのノルショーピング生まれ。4歳からヴァイオリンを習い、3年後、初めてプロの交響楽団と共演。王立ストックホルム音楽大学でペール・エーノクソンに学び、ドラ・シュヴァルツベルク、パメラ・フランク、ゲルハルト・シュルツ、デトレフ・ハーン、ヘンニング・クラッゲルードのマスタークラスに参加しました。ヨーロッパ、中国、南アフリカのオーケストラにソリストとして客演、ローランド・ペンティネン、イングリ・アンスネスたちと共演。2018年の「ノルウェー・クレッシェンド」プログラムでジャニーヌ・ヤンセン、ライフ・オーヴェ・アンスネス、ギドン・クレーメルに教わりました。デンマークのオーゼンセで行われる「カール・ニルセン国際コンペティション」の2019年ヴァイオリン部門で第1位。2019年から2022年の BBC Radio 3「次世代アーティスト」に選ばれ、2020年/2021年のシーズン、スウェーデン放送交響楽団の「アーティスト・イン・レジデンス」を務めています。楽器は、オスロの「アンデシュ・スヴェオース公益基金」から貸与された1736年製のアントニオ・ストラディヴァリウスです。
 
クリスチャン・イーレ・ハドラン Christian Ihre Hadland(1983–)。ノルウェーのスタヴァンゲル生まれ。スタヴァンゲル大学芸術学部(旧、ローガラン音楽院)でエルリング・ラグナル・エーリクセンに学びました。15歳でノルウェー放送管弦楽団と共演してオーケストラ・デビュー。1999年からイジー・フリンカに私的に教わり、彼が教えるバラット・ドゥーエ音楽学校に入学。2008年、ソリストとしてのデビューコンサートをノルウェー・オペラで行いました。2011年から2013年の BBC Radio 3 「次世代アーティスト」のひとり。イギリスのオーケストラと共演、ウィグモアホールのリサイタル、リーソール室内楽フェスティヴァルへの出演と活動を広げ、音楽の繊細なニュアンスを大切にする演奏スタイルから「ピアノの抒情詩人」と呼ばれています。アンナル・フォレソーの『バルトーク・アルバム』(2L28SACD)で CD 録音デビュー。ヘンニング・クラッゲルードと共演したシンディングのヴァイオリンとピアノの作品集(Naxos)、ショパンとシューマンのピアノ作品集(Simax PSC1307)、ハイドン、ブラームス、ボロディンたちの作品を演奏した『ひばり』(PSC1337)ドメニコ・スカルラッティのソナタ集(Simax PSC1358)と、ソロ・アルバムをリリースしています。
 
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)