ウェブサイトで過去に紹介した北欧と北欧以外のディスクからピックアップして掲載するページです。

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『悲劇のバラード(Ballade Tragica)』
Simax PSC 1343 classical

 
ハルフダン・クレーヴェ(1879–1951) 室内楽作品集
 ピアノ五重奏曲 変ホ長調 Op.9(1905–06)*
 ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 Op.21(1918–19)
 悲劇のバラード(Ballade Tragica) Op.22(1949)
 (ヴァイオリンとピアノのための)*
 ロマンス(Romance) Op.27(1949)(ヴァイオリンとピアノのための)*
 メロディ(Melodi)(ヴァイオリンとピアノのための)*
 無窮動(Perpetuum Mobile) Op.2 no.3(pub.1902 arr.c.1946)
 (ヴァイオリンとピアノのための)*
  フラガリア・ヴェスカ
   トール・ヨハン・ボーエン(ヴァイオリン)
   アリソン・レイナー(ヴァイオリン)
   ベネディクト・ロワイエ(ヴィオラ)
   オレリエンヌ・ブローネ(チェロ)
   吉田沙苗(ピアノ)
 
[Piano: Steinway D.274, 1983 New York, restored in 2010, Steinway & Sons, Hamburg][* 初録音]
 
録音 2016年7月26日–29日、2017年7月4日–6日 ソフィエンベルグ教会(オスロ、ノルウェー)
制作 ヨールン・ペーデシェン、スティーヴン・フロスト
録音エンジニア アルネ・アクセルベルグ、マイク・ハッチ

 
アンサンブル「フラガリア・ヴェスカ Fragaria Vesca」は、ヴァイオリニストのトール・ヨハン・ボーエン Tor Johan Bøen を中心に、2006年、オスロで結成されました。オーストラリア出身のアリソン・レイナー Alison Raynor、フランスのベネディクト・ロワイエ Bénédicte Royer とオレリエンヌ・ブローネ Aurélienne Brauner。イジー・フリンカとホーコン・アウストボーに学んだ吉田沙苗がピアノを担当しています。1930年代ノルウェーの新しいロマンティックな流れに光を当てるシリーズ。ガイル・トヴァイト(ゲイル・トヴェイト)(PSC 1222)、モンラード・ヨハンセン(PSC 1334)につづくアルバムは、作曲家でピアニスト、ハルフダン・クレーヴェの室内楽作品集です。
 
クレーヴェ Halfdan Cleve は、1879年、コングスベルグ生まれ。コングスベルグ教会のオルガニストだった父アンドレーアスからピアノ、オルガン、作曲と即興を教わりました。地元のコンサートや父の代役として教会でオルガンを弾き、その合間にひとりで釣り旅行に出かけ、山の散策に楽しみを見出すという時間を過ごしています。森で聞く鳥の歌、雨、嵐、冬場の雪。子供のころの自然との触れ合いは、心を慰め、さまざまなインスピレーションを与えてくれたといいます。1895年秋、クレーヴェはクリスチャニア(現 オスロ)に移り、オトー・ヴィンテル=イェルム にピアノと作曲を学び、リンデマン音楽院の彼の音楽理論とオルガンのクラスに加わりました。1899年からべルリン音楽大学とクリントヴォルト=シャルヴェンカ音楽院で学び、1902年、自作のピアノ協奏曲第1番と第3番をトンキュンストラー管弦楽団の共演で演奏。ブルーノ・シュラーダーが彼の才能を称賛した批評を寄せています。帰国後は作曲家、ピアニストとして活動。オスロの音楽院(現 ノルウェー国立音楽大学)でピアノを教え、1951年に没しました。
 
フラガリア・ヴェスカのアルバム『悲劇のバラード』では、これまで顧みられることの少なかったクレーヴェの作品から6曲が演奏されます。クリスチャン・シンディングの系列の後期ロマンティシズム・スタイルの音楽。《ピアノ五重奏曲 変ホ長調》は、クレーヴェがベルリンのデビュー・コンサートで演奏したピアノ協奏曲第3番の原曲。「春を謳う詩を想わせる」とゲルハルド・シェルレルプから評された《ヴァイオリン・ソナタ ホ短調》。ピアノ曲が原曲の《悲劇のバラード》。《4つのピアノの小品》(Op.25)の第2曲〈春の気分(Vaarstemning)〉と音楽的なつながりをもつ《ロマンス》。ピアノのための《7つの前奏曲》(Op.28)の第3曲を編曲した《メロディ》。《3つのピアノの小品》(Op.2)の第3曲をヴァイオリンとピアノのために編曲した《無窮動》は、カミラ・ウィックスに献呈された作品です。出版譜のあるヴァイオリン・ソナタと《ロマンス》以外の作品は、ボーエンが手稿譜を校訂した版により演奏されました。
 
税込価格 2,750円(本体価格 2,500円)

『旅日記から(From a Travel Diary)』
Simax PSC 1222 classical

 
ゲイル・トヴェイト(1908–1981)
 旅日記から(Frå ei reisedagbok)(弦楽四重奏のための組曲形式の8楽章)
  地中海(Middelhavet) アッピア街道(Via Appia) シチリア(Sicilia)
  トリポリ(Tripoli) シロッコ(Sirocco)
  エル・エスコリアル(El Escorial) セビーリャ(Sevilla)
  サハラの星空(Stjernehimmel over Sahara)
 バレエ《家の守り神(Husguden)》 Op.184
  (フルート、オーボエ、ホルン、ハープと弦楽四重奏のための)
 七重奏曲(Septet)(2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、
  コントラバス、オーボエとホルンのための)
 聖ヨハネの夕べ(Jonsokkvelden)(2つのヴァイオリン、ヴィオラ、
  チェロ、コントラバス、コーラアングレとホルンのための七重奏曲)
  フラガリア・ヴェスカ
   トール・ヨハン・ボーエン(ヴァイオリン)
   イ・ヤン(ヴァイオリン) ベネディクト・ロワイエ(ヴィオラ)
   ヨハンネス・マッテンス(チェロ)
   セシーリ・ローケン(フルート)
   クリスチャン・モッテンセン(コントラバス)
   ヨハンナ・ノウシアイネン(ハープ) ルネ・ブルーダール(ホルン)
   ステフェン・ブリンドハイム(オーボエ、コーラングレ)
 
[録音 2009年11月21日–22日 ソフィエンベルグ教会(オスロ)(旅日記から)、11月13日–15日 ホフ教会(オストレ・トーテン、ノルウェー)
制作 トニー・ハリソン
録音エンジニア ジェフ・マイルズ

 
ゲイル・トヴェイト(ガイル・トヴァイト) Geirr Tveitt(1908–1981)は、《ハルダンゲルの100の旋律》組曲やピアノ協奏曲で知られる、20世紀ノルウェーを代表する作曲家のひとりです。作品番号をもち作品目録に記載された曲だけでも250曲を超すものの、1970年7月12日、自宅だったハルダンゲルのトヴェイト農場が火事に遭い、多くの楽譜と手稿譜が失われてしまいました。近年、その音楽遺産を救うため、楽譜の調査と発掘、ノルウェー国立音楽大学ーの作曲クラスを中心とする復元作業が行われてきました。
 
Simax のアルバム『旅日記から』では、世界初録音の室内楽作品が4曲紹介されます。「弦楽四重奏のための組曲形式の8楽章」の副題をもつ《旅日記から》は、地中海と周辺の国々の伝統音楽からもインスピレーションを得たとされ、トヴェイトが弦楽四重奏のために書いた現存する唯一の作品です。べルゲン室内楽協会の委嘱により作曲、1960年5月10日に初演されました。楽譜の失われてしまった〈シロッコ〉の楽章は、トール・ヨハン・ボーエン Tor Johan Bøen(1971–)がラジオ放送の録音を基に復元した楽譜によって演奏されています。
 
室内アンサンブルのためのバレエ《家の守り神》は、ハルダンゲル地方の民話に基づく作品です。ハリング、ルール、スプリンガル、ガンガル……ノルウェーの民俗舞曲を自然のロマンティックな雰囲気で彩色し、抒情的な間奏を配した音楽が、フルート、オーボエ、ホルン、ハープと弦楽四重奏により演奏されます。ベルゲン国際フェスティヴァルが委嘱し、1956年5月27日、ニューゴールスパルケンの野外ステージで上演されました。
 
2曲の七重奏曲は、スンフィヨルド生まれの作家、民謡歌手のヤーコブ・サンデ Jakob Sande(1906–1967)の詩による歌曲、《一日が黄昏に向かう時(Når dagen till Skyming)》と《聖ヨハネの夕べ》を弦楽器と木管楽器のために書き直した作品。1967年5月1日、サンデを追悼するノルウェー放送の番組で演奏されました。
 
「フラガリア・ヴェスカ Fragaria Vesca」(オランダイチゴ属エゾヘビイチゴ、英名 Wild strawberry ワイルドストロベリー)は、イザイの『弦楽のための三重奏曲集』(PSC1295)で国際的な評価を上げたヴァイオリニスト、トール・ヨハン・ボーエンが創設したオリジナル楽器アンサンブルです。
 
税込価格 2,750円(本体価格 2,500円)

『国王はフランスへ行く』
Ondine ODE 1066–2D 2CD's classical

 
アウリス・サッリネン(1935–)
 歌劇 《国王はフランスへ行く(Kuningas lähtee Ranskaan)》 Op.53(1983)(全曲)
  トンミ・ハカラ(バリトン、皇太子)
  ユルキ・コルホネン(バス、首相)
  リーカ・ランタネン(ソプラノ、楽しいカロライン)
  リッリ・パーシキヴィ(メゾソプラノ、ふさふさ髪のカロライン)
  マリ・パロ(ソプラノ、泥棒するアン)
  ラウラ・ニュカネン(アルト、服を脱ぐアン)
  ユルキ・アンティラ(テノール、案内人)
  ヘルマン・ヴァッレーン(バリトン、弓の射手)
  キルシ・トゥム(ソプラノ、女王)
  サンテリ・キンヌネン(台詞、フロワサール)
  フィンランド・フィルハーモニック合唱団
  タピオラ室内合唱団
  ヘルシンキ・フィルハーモニック管弦楽団
  オッコ・カム(指揮)
 
録音 2005年4月 フィンランディアホール(ヘルシンキ)
制作 セッポ・シーララ
録音エンジニア エンノ・マエメツ

 
「新たな氷河期がやってくる。英国王への即位が決まった皇太子は、首相の進言を入れ、4人の后候補を伴い、軍隊を率いて、氷結したイギリス海峡をフランスに渡る。クレシーの戦い、カレーの包囲。皇太子は600年前、エドワード黒太子がフランス軍を破った百年戦争の世界に……」。
 
アウリス・サッリネン Aulis Salline(1935–)の3作目のオペラ《国王はフランスへ行く》は、「大人のための童話」です。パーヴォ・ハーヴィッコ Paavo Haavikko の同名の放送劇に基づき、作者自身が台本を執筆。《来るべき氷河期のミュージックシアターのための年代記(Kronikka musiikkiteatterille tulevan jääkauden ajasta)》の副題がつけられました。フィンランドのサヴォンリンナ・オペラフェスティヴァル、コヴェントガーデン王立オペラ、BBCの共同委嘱。オッコ・カム Okko Kamu(1946–)が初演の指揮を執りました。時空を超えるファンタジー、劇的な展開、多彩な管弦楽、美しい旋律。コミックオペラへのオマージュ。サッリネンのカンタータ《生と死の歌》やTV映画『カレヴァラ』の音楽による《鉄の時代》組曲(ともに ODE 844–2) を思わせるページ。20世紀フィンランドを代表するオペラのひとつに挙げられています。2005年春の公演に合わせて行われた録音。制作が進んでいるという映画のサウンドトラックにも使われます。全3幕。フィンランド語・英語対訳台本つき。この音楽はカンタータとしても楽しめるでしょう。
 
価格 3,410円(税込価格)(本体価格 3,100円)

『エピタフィオ(Epitaffio)』
Simax PSC 1318 contemporary/classical

 
アルネ・ヌールハイム(1931-2010) 管弦楽のための作品集
 モノリス(Monolith)(1990)(管弦楽のための)
 エピタフィオ(Epitaffio)(墓碑銘)(1963 rev.1978)
 (管弦楽と磁気テープのための)
 カンツォーナ(Canzona)(1960)(管弦楽のための)
 フォノス(Fonos)(2003)
 (トロンボーンと管弦楽のための3つの忘れられないもの) *
 アデュー(Adieu)(1994)(弦楽オーケストラと鐘の音の楽器のための)
  オスロ・フィルハーモニック管弦楽団
  ロルフ・グプタ(指揮)
  ユッカ=ペッカ・サラステ(指揮) *
  マリウス・ヘスビュー(トロンボーン) *
 
録音 2010年3月10日-12日、5月10日-12日(フォノス) オスロ・コンサートホール
制作 クシシュトフ・ドラーブ
録音エンジニア アルネ・アクセルベルグ、マーリト・アスケラン *、エリサベト・ソンメルネス *
ミクシング アルネ・アクセルベルグ、クシシュトフ・ドラーブ

 
アルネ・ヌールハイム Arne Nordheim(1931-2010)。1950年代、ナショナルロマンティックな空気が支配していたノルウェーの音楽をモダニズムという世界の潮流へと導き、世界大戦後のノルウェー音楽がアイデンティティを確立することができた、その最大の功労者とされる音楽家です。2011年には80歳の誕生日を迎えることになっていた彼が没したのは2010年6月5日。その数週間前にすべての録音の完了したアルバム『エピタフィオ』がリリースされます。
 
1960年の《カンツォーナ(Canzona)》は《管弦楽のためのカンツォーナ(Canzona per orchestra)》が正式名称です。ヌールハイムは、ヴェネツィアの作曲家ジョヴァンニ・ガブリエーリのカンツォーナを聴き、高声域と低声域のコントラストの生む効果からこの曲のインスピレーションを得たといわれています。ノルウェー作曲家協会のメンバーに選ばれたヌールハイムがベルゲン国際フェスティヴァルの委嘱を受けて作曲、1961年のフェスティヴァルで演奏され、ヌールハイムの成功を決定づけた作品です。1963年にアムステルダムで開催された ISCM(国際現代音楽協会) フェスティヴァルにノルウェーを代表する作品として参加しました。
 
1963年の《管弦楽と磁気テープのためのエピタフィオ(Epitaffio per orchestra e nastro magnetico)》。「墓碑銘」。イタリアの詩人、サルヴァトーレ・クワジモド Salvatore Quasimodo の詩「Ognuno sta solo sul cuor della terra. traffito da un raggio di sole: ed è súbito sera(人はみな、ひとり大地の中心に立つ ひとすじの陽の光に貫かれ そして気づくと夕暮れの時)」がスコアに引用されています。再録音のこの演奏に使われたテープ録音は、スウェーデン出身のエレクトロ=アクースティック音楽作曲家マッツ・クラーソン Mats Claesson とヌールハイムが制作しました。クラーソンは、アイナル・ステーン=ノクレベルグのアルバム『ヌールハイム-ベートーヴェン-ヌールハイム』(PSC 1269) の《Listen - Inside Outside》でライヴエレクトロニクスを担当するなど、ノルウェーで活躍しています。
 
《管弦楽のためのモノリス(Monolith for orchestra)》は1990年の作品です。インスピレーションの源になったのはオスロのヴィルゲラン公園にならぶ彫刻。それも、ヴィルゲランの作品そのものではなく、材料となった大理石です。ヌールハイムは大理石の色彩と光の反射に魅せられ、「岩は、生命のない塊ではなく、人の生を象徴している」と考えたといわれます。この曲は、東京の「International Program for Music Competitions(音楽コンペティション国際プログラム)」の委嘱を受けて作曲され、1991年に新日本フィルハーモニーによりサントリーホールで初演されました。
 
「弦楽オーケストラと鐘の音の楽器のための(pour orchestre à cordes et instruments avec sons de cloches)」《アデュー(Adieu)》は、1994年2月に亡くなったヴィトルト・ルトスワフスキ(1913-1994)追悼のために作曲され、同年秋、ワルシャワで行われたフェスティヴァルで演奏されました。「ヌールハイム・ライトモティーフ」と「ヌールハイム・コード」をはじめとする素材が挽歌調の主題とともに音楽を紡ぎます。
 
「トロンボーンと管弦楽のための3つの忘れられないもの(3 memorables for trombone and orchestra)」の副題をもつ《フォノス(Fonos)》は、単一楽章の《モノリス》を3楽章の協奏曲に書き直した作品です。トロンボーンのファンファーレに始まり、強いエネルギーとリズミカルな推進力が特徴的な音楽です。2003年に作曲され、初演は2005年。その年の最優秀管弦楽作品に与えられるノルウェー作曲家協会のエドヴァルド賞(Edvardpris)に選ばれました。
 
クリスチャンサン交響楽団の首席指揮者を務める作曲家のロルフ・グプタ Rolf Gupta(1967-)、2006年-2007年のシーズンから音楽監督としてオスロ・フィルハーモニックを指揮するユッカ=ペッカ・サラステ Jukka-Pekka Saraste(1956-)、ヌールハイム作品の音と構造を理解しているオーケストラ、「音楽」とオスロ・コンサートホールの音響を熟知する録音スタッフ。《フォノス》のソロを演奏するマリウス・ヘスビュー Marius Hesby(1976-)は、この作品の初演者です。ノルウェー国立音楽大学でディプロマを取得した後、王立ノルウェー海軍軍楽隊に所属し、オスロ、ベルゲン、トロンハイムをはじめとする内外のオーケストラにソロイストとして出演しています。ヨン・オイヴィン・ネスの《獰猛なケンタッキーの運命の母たち》も彼が初演した作品です。
 
ヌールハイムは、1982年、オスロの王宮の一角にある家「グロッテン」に住むというノルウェーの芸術家にとって最高の栄誉を与えられ、死後、グリーグ、セーヴェルーと同様にノルウェー王国国葬で送られました。彼の業績をしのぶ、よき記念碑となるアルバムです。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『夢の詩(Draumkvedet)』
Simax PSC 1169 2CD’s classical

 
アルネ・ヌールハイム(1931–2010)
 夢の詩(夢のバラード)(Draumkvedet)(1994)
  ニョル・スパルボ(バスバリトン、オラヴ・オステソン)
  ユンニ・ローヴリ(ヴォイス、女、太古の女)
  カール・ホグセット(カウンターテナー、聖ペテロ、司祭、聖ヤコブ)
  ラスムス・ホグセット(カウンターテナー、天使)
  トールン・オストレム・オッスム(メゾソプラノ、神の聖母)
  フランク・ハーヴロイ(バリトン、
   グルッテ・グローシェグ(灰色髭グルッテ)、聖ミカエル、天使)
  シグヴェ・ボーエ(テノール、イエス、堕天使)
  ベンヤミン・イーサクセン(ボーイソプラノ、少年)
  シグムン・ソーヴェルー(台詞、イエス)
  パウル・オッタル・ハーガ(台詞、
   グルッテ・グローシェグ(灰色髭グルッテ)、聖ミカエル、天使)
  オースヒル・ブライエ・ニューフース(ハリングフェレ)
  マッツ・クレーソン(エレクトロ=アコースティク)
  グレクス・ヴォーカリス
  ノルウェー放送管弦楽団 インガル・ベルグビュー(指揮)
 
録音 2001年2月21日–3月2日 ノルウェー放送(NRK)大スタジオ(オスロ)
制作・編集 ハルドル・クローグ
録音エンジニア モッテン・ヘルマンセン、ペール・アルネ・フロー、オイスタイン・ハルヴォシェン、ヤン・エーリク・トルモーエン、インゲル・クヴァルヴィーク
マスタリング アウドゥン・ストリーペ、エーリク・ガルド・アムンセン

 
アルネ・ヌールハイム Arne Nordheim(1931–2010)の《夢の詩》。ノルウェー南部のテレマルク地方に伝わるバラード『夢の詩(夢のバラード)(Draumkvedet/Dramkvædet)』を題材に作曲されました。沼地を抜け、いばらの茂る荒れ野を越え、死者の歩む道をたどる巡礼の旅。煉獄と地獄、天国の祝福された魂。キリストと天使長ミカエルと天使が悪魔の軍団と戦い、最後の審判の日を迎える。オラヴ・オステソン Olav Åsteson という名の若者が、クリスマスイヴ(12月24日)に眠りに落ち、公現祭(1月6日)に目を覚ますまでに見た「夢」が歌われます。中世から歌い継がれてきたこのバラードは、ノルウェーの魂の故郷と言われ、作曲家たちにもインスピレーションを与えました。スパッレ・オールセン Sparre Olsen(1903–1984)の「独唱、合唱、朗読と管弦楽のための」《夢の詩(Draumkvedet)》(1937)、クラウス・エッゲ Klaus Egge(1906–1979)のピアノ曲《夢の詩ソナタ(Draumkvedet–Sonate)》、アイヴィン・グローヴェン Eivind Groven(1901–1977)の「独唱、合唱と管弦楽のための」《夢の詩(Draumkvedet)》(1963)。
 
ヌールハイムの作品は、〈お召し(Påkalling)〉から〈多くの夢(Draumar mange)〉まで、14の情景で構成されています。クラシカルの歌手、民謡歌手、台詞役の俳優、民俗楽器のハリングフェレ、エレクトロニクス、合唱と管弦楽により演奏され、舞台作品としてもコンサート作品としても上演することができます。この作品は、リレハンメルで開催された冬季オリンピックの文化プログラムの一環として作曲され、1994年1月19日にオスロのノルウェー劇場で初演されました。
 
ヌールハイムの75歳誕生日を記念してリリースされるこのアルバムは、2001年2月から3月にかけてノルウェー放送のホールで行われたセッションで録音されました。ニョル・スパルボ Njål Sparbo、カール・ホグセット Carl Høgset、ラスムス・ホグセット Rasmus Høgset、民謡歌手のユンニ・ローヴリ Unni Løvilid、ハリングフェレ奏者のオースヒル・ブライエ・ニューフース Åshild Breie Nyfus、ヴォーカルアンサンブル「グレクス・ヴォーカリス Grex Vocalis」と、初演とほぼ同じメンバーのアーティストたちが参加。インガル・ベルグビュー Ingar Bergby 指揮のノルウェー放送管弦楽団とともに壮大な世界を描きました。
 
価格 3,520円(税込価格)(本体価格 3,200円)

『テンペスト』
Aurora NCD-B 4932 contemporary/classical

 
アルネ・ヌールハイム(1931–2010)
 バレエ《テンペスト(Stormen/The Tempest)》組曲(1979)
 (ソプラノ、バリトンと管弦楽のための)
  穏やかな海(Calm Sea)
  稲妻光り雷鳴轟く大嵐(Storm with Lightning and Thunder)
  目覚め(Awakening) 魔法円(Magic Circle)
  ラクリメ(Lacrymae) 迷路を歩いているようなもの(A Mazed Trod)
  脚が四本、声ふたつ(Four Legs and Two Voices)
  キャリバンの警告(Caliban’s Warning)
  スーザン・キャンベル(ソプラノ)
  クリストファー・ケイト(バリトン)
  マサアキ・ヤマモト(トロンボーン)
  エンリケ・サンチャゴ(ヴィオラ)
  アルフレート・ゲマインハート(チェロ)
  南ドイツ放送交響楽団・合唱団
  チャールズ・ダーデン(指揮) [Philips 9598 043(LP)]

 
アルネ・ヌールハイム Arne Nordheim の《テンペスト(The Tempest)》は、ヌールハイムの音楽を代表する作品のひとつです。
 
シェイクスピアが単独で手がけた最後の戯曲『テンペスト』は、大嵐の海を行く船の場面から始まり、魔術師プロスペローの住む島で物語が展開する作品です。彼の娘ミランダ、プロスペローが召使にしている怪物キャリバンと大気の精エアリエル、ミラノ大公アントーニオ、ナポリ王のアロンゾーと王子ファーディナンドたち。この戯曲は、エアリエルの歌う「水底深く父は眠る(Full Fathom Five」「蜜蜂が吸う蜜を吸い(Where the Bee Sucks)」をはじめとする「歌」がいくつも含まれ、さらに、人の手による騒音、魔法、魔術師のトリックといった魅力的な世界がつづくため、シェイクスピアのもっとも「音楽的」な劇とされています。
 
ヌールハイムのバレエ《テンペスト》は、アメリカの振付師グレン・テトリー Glen Tetley とのコラボレーションによる作品です。この作品のためヌールハイムは、シェイクスピアの戯曲を何ヶ月も何年もかけて研究し、そのあいだに訪れる国や都市、それぞれの季節と気候の変化をインスピレーションにしたと言います。「私の知るかぎり、シェイクスピアの全戯曲の中で『テンペスト』ほど音楽がひんぱんに登場して大きな役割を担う作品はない。それぞれの人物が音楽で性格づけられる。奴隷にされたキャリバンでさえ、そうだ」。バレエは、1979年にドイツで初演され、1981年のベルゲン国際フェスティヴァルでノルウェー初演されました。
 
バレエ《テンペスト》から8曲を選んだ組曲。チャールズ・ダーデン Charled Darden 指揮の南ドイツ放送交響楽団によるこのディスクが最初の録音です。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『Written in Sand(砂に書かれた)』
Simax PSC 1301 contemporary/classical

 
ポウル・ルーザス(1949–)
 変奏曲(Variations)(1989)(ヴァイオリン独奏のための)
ハブリジ・ハトルグリームソン(1941–)
 奉献誦(カール・クヴァーラン追悼)
 (Offerto(in memoriam Karl Kvaran))(1991)
 (ヴァイオリン独奏のための)
エサ=ペッカ・サロネン(1958–)
 Lachen verlernt(学ばざる笑い)(2002)(ヴァイオリン独奏のための)
ハブリジ・ハトルグリームソン(1941–)
 ポエミ(Poemi) Op.7(ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための)*
  ソルヴェ・シーゲルラン(ヴァイオリン)
  リーソール音楽祭弦楽アンサンブル *
  ペール・クリスチャン・スカルスタード(指揮)*
 
録音 2007年6月28日–29日、2008年7月6日 ウラニエンボルグ教会(オスロ)、2004年6月26日 聖霊教会(リソール、ノルウェー)(ライヴ)(ポエミ)
制作 ジェフ・マイルズ、ソルヴェ・シーゲルラン
録音エンジニア ジェフ・マイルズ、ショーン・ルイス(ポエミ)

 
グリーグ三重奏団のヴァイオリニスト、ソルヴェ・シーゲルラン Sølve Sigerland(1969–) の『ブルースタのヴァイオリン音楽』(PSC1 229)に次ぐソロアルバム第2作。アルバムタイトルの『Written in Sand(砂に書かれた)』は、ハブリジ・ハトルグリームソンの《奉献誦》の曲名からとられました。この作品は、アイスランドの作曲家ハブリジ・ハトルグリームソン Hafliði Hallgrímsson が、親友だった画家、カール・クヴァーラン Karl Kvaran(1924–1989)を追悼して作曲したエレジーです。〈Written in Sand(砂に書かれた)〉〈Lines without Words(言葉のないくだり)〉〈The Flight of Time(時の飛翔)〉〈Almost a Hymn(賛美歌まであと一歩)〉。クヴァーレンの描いた絵をタイトルとする、ゆったりした3つの楽章とスケルツォの性格をもつ第3楽章で構成されています。
 
ポウル・ルーザス Poul Ruders は、《侍女の物語》(dacapo 8.224165–66)とそれにつづく《カフカの審判》(8.226042–43)のオペラ2作の成功により、デンマークを代表する作曲家のひとりに挙げられるようになりました。《変奏曲》は、伝統的な変奏技法とコラージュ技法を組み合わせたとされる音楽。表現的、突発的なページと抒情のページが対照を見せながら、メランコリックで深い感情をもったモノローグに収束していきます。
 
シェーンベルクのメロドラマ《Pierrot Lunaire(月に憑かれたピエロ)》の第9曲〈ピエロへの祈り(Gebet an Pierrot)〉に因む曲名をもつ《Lachen verlernt(学ばざる笑い)》 は、指揮者としての知名度が高いエサ=ペッカ・サロネン Esa-Pekka Salonen が2002年に作曲した曲です。「シャコンヌ……ひとつの和声進行がなんどとなく繰り返され……和声はそのままに、音楽の表層だけが変わる」(サロネン)。2002年8月のラホヤ・サマーフェストでチョーリャン・リンにより初演されました。
 
ヴァイオリンと弦楽オーケストラのための《ポエミ》は、チェロ奏者としても活躍するハブリジ・ハトルグリームソンが弦楽器の特色を活かして作曲、1986年のNOMUS(北欧音楽委員会)賞を受け、彼の出世作となりました。〈The Dream of Jacob(ヤコブの夢)〉〈The Sacrifice of Isaac(イサクの捧げ物)〉〈Jacob in Combat with the Angels(天使と戦うヤコブ)〉。旧約聖書をモチーフとするマルク・シャガールの作品からインスピレーションを授かり、その題名を楽章のタイトルとしました。2004年リーソール音楽祭のライヴ録音。オスロ弦楽四重奏団の創設メンバー、ノルウェー室内管弦楽団に在籍し指揮者としても活動するペール・クリスチャン・スカルスタード Per Kristian Skalstad(1972–) が、リーソール音楽祭弦楽アンサンブルを指揮して共演しています。
 
ジョヴァンニ・バッティスタ・ガダニーニ(1752年)を弾いたヴァイオリン独奏の3曲(《ポエミ》は、ジャン・バプティスト・ヴィヨム) は、オスロのウラニエンボルグ教会でセッション録音されました。教会の空間で弾く演奏者の姿が見えるくらい臨場感のある素晴らしい録音です。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『フォルクレ』
Simax PSC 1317 2CD’s early music

 
G・B・アントワーヌ・フォルクレ(1671–1745)/ジャン・バティスト・フォルクレ(1699–1782)
 クラヴサン曲集に編曲されたヴィオール曲集
 (Pièces de viole mises en pièces de clavecin)(pub.1747)
  第1組曲 第2組曲 第3組曲 第4組曲 第5組曲
  シェティル・ハウグサン(チェンバロ)
 
[楽器 Harpsichord: Double Manual Late-Flemish type instrument, built by Ketil Haugsand, 1971]
 
録音 2010年3月15日–19日 ドイツ放送室内楽ホール(ケルン)
制作 フランソワ・エッケルト
録音エンジニア エーファ・ペプライン

 
父G・B・アントワーヌ G. B. Antoine(1761–1745)は作曲家、ガンバのヴィルトゥオーゾ。子ジャン・バティスト Jean Baptiste(1699–1782)は作曲家、洗練された技巧をもつヴィオール奏者。ともに「太陽王」ルイ十四世の宮廷に仕えたフォルクレ Forqueray 父子は、息子の才能に対する父の嫉妬のため、良好な関係になかったことが伝わっています。父が没した2年後の1747年にジャン・バティストが出版した、自分を投獄しフランスから追放という憂き目に遭わした父の名を冠した『クラヴサン曲集に編曲されたヴィオール曲集』。この曲集は、「編曲」とされているものの、実質はジャン・バティストの作曲だろうと言われます。第1組曲から第5組曲まで全32曲。多くの曲はジャン・バティストの友人と知人たちに敬意を表して命名され、いくつかの曲にはフォルクレ、クープラン(第1組曲)、ルクレール(第2組曲)、ラモー、ギニョン(第5組曲) といった音楽家たちの名がつけられました。
 
シェティル・ハウグサン Ketil Haugsand はノルウェーのチェンバロ奏者です。今日を代表するアーリーミュージックの音楽家のひとり。トロンハイム、オスロ、プラハ、ハーレムで学び、1975年グスタフ・レオンハルトに学んだアムステルダム音楽院の Prix d'Excellence を獲得、現在はケルンの音楽大学でチェンバロ科の教授を務めています。J・S・バッハの《クラヴィア練習曲集 第1部》(6つのパルティータ)(PSC 1086)、《クラヴィア練習曲集 第2部》(フランス風序曲、イタリア協奏曲、他)(PSC 1032)、《ゴルトベルク変奏曲》(PSC 1192)、ルイ・マルシャンの《クラヴサン曲集 第1巻・第2巻》(PSC 1007)、ラモーの《コンセール・クラヴサン曲集》(PSC 1095) が代表的録音です。
 
ハウグサンがフォルクレの曲集に出会ったのは、1972年9月、南ドイツのフライブルク近郊のシュタウフェンで行われたアーリーミュージックのワークショップだったといいます。レオンハルトとヴィーラント・クイケンがマスタークラスを担当。以来、この曲集はハウグサンにとってもっとも大切な音楽のひとつになりました。この曲集を完全な姿に録音したい。その願いがかない、Simax とケルンのドイツ放送(Deutschlandfunk)が共同で制作にあたりました。後期フランドル・タイプの楽器を基にハウグサン自身が製作した2段鍵盤、5オクターヴ(FF-g’’’)のチェンバロが演奏に使われ、この楽器を垂直に置き「ガンバ」に見立てた写真がブックレットのアートワークにあしらわれました。
 
価格 3,520円(税込価格)(本体価格 3,200円)

『イルゲンス・イェンセン』
Naxos 8.572312 classical

 
ルードヴィーグ・イルゲンス・イェンセン(1894–1969)
 管弦楽のための作品集
 交響曲 ニ短調(Sinfonia in re)(1941)(初稿)
 アリア(Air)(1959)
 パッサカリア(Passacaglia)(1928)
  ボーンマス交響楽団 ビャッテ・エンゲセット(指揮)

 
ルードヴィーグ・イルゲンス・イェンセン Ludvig Irgens–Jensen(1894–1969)はクリスチャニア(現オスロ) 生まれ。大学入学資格試験を優秀な成績で通過し、教養学科に在籍して言語学、文学、哲学を修めながら、ピアノと音楽理論を学びました。作曲法は独学で身につけ、ドイツ、デンマーク、フランスを訪れては作曲の知識と技巧を深めています。イルゲンス=イェンセンは、後期ロマンティシズムにノルウェー民俗音楽の要素も加えながら自身の音楽語法を確立、「グリーグ後」のノルウェー音楽を彩る作曲家のひとりに挙げられます。生涯を通じて山と登山を愛し、音楽の高みに向かう探究をつづけた彼を同時代の作曲家オイスタイン・ソンメルフェルトは「精神の登山家」と呼びました。代表作とされるのが劇的交響曲《帰郷(Heimferd)》です。キリスト教を擁護した聖オラヴ(オラヴ二世)の物語に題材をとり「聖オラヴのオラトリオ」と呼ばれるこの作品は、聖オラヴ没後900年の1930年に行われた作曲コンペティションで第1位を獲得しました。《主題と変奏(Tema con variazioni)》、《パルティータ・シンフォニカ(Partita Sinfonica)》、シューベルト没後100年の1928年にイギリスのコロンビア蓄音機(Columbia Gramophone Company) が行った作曲コンペティションの第2位に選ばれた、表現の豊かな《パッサカリア》など、管弦楽のための曲に優れた作品が多く、平安時代から江戸時代の和歌のハンス・ベートゲによるドイツ語詩をテクストとする歌曲集《日本の春(Japanischer Frühling)》 もノルウェーのソプラノ歌手たちに愛されている美しい作品です。
 
《交響曲 ニ短調》は、ナチス・ドイツ軍占領下の1941年に作曲され、翌1942年、ノルウェー作曲家協会創設25周年記念コンペティションの第1位に選出されました。作品の姿が見えてきたころイルゲンス・イェンセンは『引き波(Dragsug)』と題する詩を書き、その暗い気分と作者の信念の反映する交響曲は、占領と圧政への抵抗を示した作品とも考えられています。初演はノルウェー解放後の1945年秋です。当初3楽章構成で書かれたこの交響曲は、その後、2楽章に変更され、終楽章の音楽は《ロンド・マルツィアーレ(Rondo Marziale)》として単独で演奏されるようになりました。オスロ・フィルハーモニックとオイヴィン・フィエルスタの録音(Simax PSC 3118)は2楽章版による演奏。ボーンマス交響楽団とビャッテ・エンゲセット Bjarte Engeset(1958–)のこの演奏が、第3楽章を加えた版の世界初録音です。
 
価格 1,925円(税込価格)(本体価格 1,750円)

『YR』
Simax PSC 1315 contemporary/classical/traditional

 
ラッセ・トーレセン(1949–)
 Yr Op.23(ヴァイオリンソロのための)(1991)
スパッレ・オールセン(1903–1984)
 ロムの6つの民謡(Seks bygdevisur frå Lom)
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)
 ヴァイオリンソナタ第1番 ヘ長調 Op.8
ハルダンゲル地方伝承のフィドルの旋律
 弾きにくいメロディ(Den vande låtten)
 ヨルン・ヒルメによる《低音のハリング》
 (Halling på låg bas – etter Jørn Hilme)
 オーラ・ボーの形式によるスプリンガル《ぶよ》
 (Mehanken – springar i form etter Ola Bøe)
 オラヴ・モーの形式によるリューダルロット《ヴァングのフルドラの歌》
 (Huldrelått frå Vang – lydarlått i form etter Olav Moe)
  ラグンヒル・ヘムシング(ヴァイオリン、ハリングフェレ)
  トゥール・エスペン・アスポース(ピアノ)

 
オスロの北。夏はハイキングとサイクリングと釣り、冬はクロスカントリーとさまざまなスポーツ活動の行われるヴァルドレス地方 Valdres は、ノルウェー民謡の故郷としても知られます。グリーグが《バラード ト短調》の変奏主題に使った《北国の農民》もヴァルドレスの人々に歌われてきた一曲です。ヴァイオリニスト、ラグンヒル・ヘムシング Ragnhild Hemsing(1988–)は、このヴァルドレスに生まれました。5歳からヴァイオリンを弾き、9歳でオスロのバラット・デューエ音楽学校に入学しました。ベルゲン・フィルハーモニック、トロンハイム交響楽団、オスロ・フィルハーモニック、デンマーク国立交響楽団をはじめとするオーケストラと共演。2010年にはノルウェー放送(NRK)の企画したオーレ・ブルのドキュメンタリー番組の音楽を妹のエルビョルグ Eldbjørg Hemsing(1990–)の共演で録音しました。ラグンヒルは、現在、ウィーンのボリス・クシュニールの下で学んでいます。
 
『YR』は、彼女の最初のソロアルバムです。タイトル曲としたラッセ・トーレセン Lasse Thoresen の《Yr》は、オスロ・フィルハーモニックのコンサートマスター、スティーグ・ニルソンのための委嘱曲。「不思議なリアリズムをもった」小品とされ、ラグンヒルの演奏は「信じられないくらい立派な、伝説的な演奏」と評されました。グリーグの第1番のヴァイオリンソナタ、民謡を素材とした(カール・グスタフ・)スパッレ・オールセン(Carl Gustav) Sparre Olsen の曲集、ヴァルドレスと同じように民謡の宝庫とされるハルダンゲル地方のフィドルの音楽。ヘムシングは、デクストラ・ムジカ・ファウンデーションから貸与された1694年クレモナのフランチェスコ・ルッゲーリとノルウェーの民俗フィドル、ハリングフェレを弾きわけています。
 
ピアニストのトゥール・エスペン・アスポース Tor Espen Aspaas(1971–)は、ノルウェーの同世代を代表する音楽家のひとりに挙げられます。世界各地のフェスティヴァルとコンサートで演奏し、2007年からは母校のノルウェー音楽アカデミーの教授を務めています。欧米のメディアから賞賛されたデュカスのピアノ作品全集(PSC 1177)と、ベートーヴェン、シェーンベルク、ヴェーベルン、ベルクの作品を弾いた『鏡のカノン(Mirror Canon)』(2L 49SACD)が代表的録音です。
 
このCDには、フォークダンスグループ「FRIKAR」のハルグリーム・ハンセゴー Hallgrim Hansegård がヘムシングの演奏に合わせて踊る《Yr》の映像も収録されています。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『お尋ね者(Wanted)』
Aurora ACD 5071 contemporary

 
ピエール・ブーレーズ(1925–2016)
 ソナタ第3番(Troisième Sonate)(1957)
エリオット・カーター(1908–2012)
 Night Fantasies(1980)
アスビョルン・スコートゥン(1961–)
 FΥSΙS(Physis)(ピュシス)(1986 rev.2003)
 (増幅ピアノと5台のデジタル・ハーモナイザーのための)
 アダージョとアレグロ(Adagio and Allegro)(1976 rev.2010)
  ホーコン・アウストボー(ピアノ)
 
録音 2011年4月11日–13日、5月3日–4日 ソフィエンベルグ教会(オスロ)
制作 ホーコン・アウストボー
録音エンジニア アルネ・アクセルベルグ

 
ホーコン・アウストボー Håkon Austbø(1948–)はノルウェーのコングスベルグ生まれ。1970年、パリで開催される 「Concours National de la Guilde Françoise des Artistes Solistes」にフランス以外の国からはじめての優勝者に選ばれ、翌1971年にはオリヴィエ・メシアン現代音楽コンペティションの第1位を獲得しました。「われらの時代の音楽」のよき理解者として名を挙げ、30年以上に渡ってオランダを本拠に活動をつづけた後、ノルウェーに戻り、スタヴァンゲル大学でピアノを教えながら、ヨーロッパ全土を視野に置いた活動を行っています。
 
『お尋ね者(Wanted)』は、ファッテイン・ヴァーレン、クラウス・エッゲ、フィン・モッテンセン、ロルフ・ヴァリーンの曲を弾いた『ノルウェーの命令(Norwegian imperative)』(ACD 5060)に次ぐ、ノルウェー作曲家協会のレーベル Aurora のソロアルバムです。
 
ジョン・ケージと彼の偶然性の音楽からインスピレーションを授かったとされ、作曲者自身が「都市計画」になぞらえるピエール・ブーレーズ Pierre Boulez の《ソナタ第3番》。現代アメリカを代表する作曲家エリオット・カーター Elliot Carter の《Night Fantasies》(夜の夢想) は、ブーレーズの3曲のソナタと同様に二十世紀ピアノ音楽の「里程標」とみなされる作品。「夜、眠つけないでいる時、心に去来する束の間の想いと感覚をほのめかしつつ、絶えず気分を変えていく」。
 
ノルウェーの作曲家アスビョルン・スコートゥン Asbjørn Schaathun のエレクトロニクスも使った《FΥSΙS(Physis)》 -- 「自然」……人間の主観を離れて独立に存在し、変化する現象の根底をなす永遠に真なるもの -- そして、「ささやかなアンコール」の《アダージョとアレグロ》が、「アヴァンギャルドとわたしたち自身の時をつなぐ」(スコートゥン)。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『フィン・モッテンセン』
Simax PSC 1306 classical

 
フィン・モッテンセン(1922–1983) 管弦楽作品集
 交響曲(Symfoni) Op.5(1953)
 Pezzo orchestrale(ペッツォ・オルケストラーレ)(管弦楽の小品) Op.12(1957)
 Evolution(エヴォリューション)(展開) Op.23(1961)
 Per orchestra(ペル・オルケストラ)(管弦楽のために) Op.30(1967)
  ミュンヘン放送管弦楽団 テリエ・ミケルセン(指揮)
 
録音 2011年3月21日–25日 バイエルン放送第1スタジオ(ミュンヘン)
制作 トルステン・シュライアー
録音エンジニア ウルリケ・シュヴァルツ

 
ノルウェーの指揮者テリエ・ミケルセンは、「演奏してはならぬ」と作曲者がスコアに記し、長らくベルゲンの公立図書館に封印されていたグリーグの交響曲ハ短調の初録音(Simax PSC 1091)を手がけ、一般に知られていない作品の紹介に取り組むことで知られます。時代の変化とともに影の薄くなってしまっていたような彼が、ノルウェー音楽におけるモダニズムの先駆者に挙げられるフィン・モッテンセン Finn Mortensen の管弦楽作品を録音しました。
 
《交響曲》は、モッテンセンが、留学先のコペンハーゲンで「十二音音楽」に触れる前の1953年に作曲、ベルゲンの「ハルモニエン」オーケストラ(ベルゲン・フィルハーモニック管弦楽団)が1963年に初演した作品です。「アレグロ・モデラート」「アダージョ」「アレグロ・ヴィヴァーチェ」「アレグロ・モデラート」の4楽章。約37分の情感ゆたかな音楽は、ブルックナーからインスピレーションを授かったといわれ、後期ロマンティシズムのスタイルで書かれています。マリス・ヤンソンスとオスロ・フィルハーモニック管弦楽団のアナログ録音がCD化(Aurora NCD–B 4935) されており、モッテンセンが残した6曲の管弦楽曲ではもっともよく知られた作品です。
 
《ペッツォ・オルケストラーレ(管弦楽の小品)》は、モッテンセンのモダニズム期の一曲です。異なる12の響きによる「12のテクスチュア列」が試みられ、曲名の "pezzo" には「小品」と「部品」 -- 管弦楽のセクション(テクスチュア) -- の二重の意味がもたされたと解釈されています。この作品は、作曲者の生前には演奏されず、2002年10月4日、オスロの現代音楽祭「ウルティマ(Ultima)」でオスロ・フィルハーモニックがスサンナ・マルッキの指揮で初演しました。
 
「ヴェーベルンがいなければ、この作品は書けなかった」と作曲者が語ったという《エヴォリューション(展開)》は、厳格な十二音技法で作曲されました。垂直、水平、自在に操られる管弦楽のパレットによるダイナミックで色彩あふれる音楽が「展開」します。初演は1962年10月。オスロ・フィルハーモニックの芸術監督に就任して間もないヘルベルト・ブロムシュテット が指揮しています。
 
1967年の《ペル・オルケストラ(管弦楽のために)》は、50周年を迎えるノルウェー作曲家協会の委嘱により作曲されました。静寂、二度のダイナミックなアタック、そして、ふたたび静寂。ネオロマンティックな傾向も示唆する、モダニズムの自由な語法による作品です。オイヴィン・フィエルスタ指揮オスロ・フィルハーモニックによる初演(10月27日)を聴いた、モッテンセンの友人で作曲家のオイスタイン・ソンメルフェルトは「冒頭、われわれは穏やかな平和を経験するが、アダムはいつまで楽園にとどまれるだろう」と批評に書き、アルネ・ヌールハイムは、《ペル・オルケストラ》をモッテンセンの最良の作品のひとつと讃えました。カシュテン・アンデシェン指揮のベルゲン・フィルハーモニックによる演奏(Aurora NCD–B 4942)に次ぐ録音です。
 
テリエ・ミケルセン Terje Mikkelsen(1957–)は、ノルウェー国立音楽大学で学び、シベリウス・アカデミーでヨルマ・パヌラのクラスに加わりました。管弦楽指揮法のディプロマを取得。オスロとサンクトペテルブルクでマリス・ヤンソンスに学んだ後、ウクライナ、リトアニア、ラトビアの交響楽団の首席指揮者と客演指揮者を務めました。グリーグ、スヴェンセン、ハルヴォシェン、アルネス、テレフセンの作品など録音も多く、音とバランスとテクスチュアのコントロールに長け、作品を劇的にまとめる巧さが、高い評価を受けています。
 
ミュンヘン放送管弦楽団 Münchner Rundfunkorchester との共同制作によるアルバムです。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『美しくあること(Being Beautious)』
Alba ABCD331 SACD hybrid (5.1 multichannel/stereo) classical

 
ベンジャミン・ブリテン(1913–1976)
 イリュミナシヨン(Les Illuminations) Op.18
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(1926–2012)
 美しくあること(Being Beautious)(1963)
アルノルト・シェーンベルク(1874–1951)
 心のしげみ(Herzgewächse) Op.20
ニコロ・カスティリョーニ(1932–1996)
 テルツィーナ(Terzina)(1992–93)
カロル・シマノフスキ(1882–1937)
 スウォピエフニェ(Slopiewnie) Op.46b(1921)
  アヌ・コムシ(ソプラノ)
  オストロボスニア室内管弦楽団 * ユハ・カンガス(指揮)*
  ウーシンタ室内アンサンブル サカリ・オラモ(指揮)
 
録音 2010年10月28日–30日 セッロ・ホール(エスポー)、2011年5月27日–28日 スネルマン・ホール(コッコラ、フィンランド)
制作・録音エンジニア サイモン・フォックス=ガール

 
主に現代の作品をレパートリーにヨーロッパのオペラとコンサートのステージで活躍するフィンランドのソプラノ、アヌ・コムシ Anu Komsi(1967–)の『エイノ・レイノの詩を歌う』 (ABCD231) につぐアルバム。彼女は、プログラムの曲を結ぶ「赤い糸」に詩人のアルチュール・ランボーを設定し、彼と男性の恋人ポール・ヴェルレーヌの「情熱の交歓」を表したとも解釈されている詩『美しくあること』をアルバムのタイトルに選びました。『美しくあること』は、ランボーの詩によるブリテンの歌曲集《イリュミナシヨン》に含まれ、「カムアウト」したヘンツェもこの詩を歌曲に歌い上げました。シェーンベルク自身がメーテルランクの作品をドイツ語に訳した詩をテクストとする《心のしげみ》。ニコロ・カスティリョーニ Niccolò Castiglioni の《テルツィーナ》は、ドイツの改革派作家ゲルハルト・テルステーゲン Gerhard Tersteegen(1697–1769)の詩による「陶酔」の歌。アヌ・コムシはこの「三部作」を2010年3月、オリヴァー・ナッセン指揮ロンドン・シンフォニエッタのコンサート「Castiglioni Revisited」でも歌っています。ブリテン、ヘンツェと同じ性的嗜好をもつとされるシマノフスキが、ポーランドの詩人ユリアン・トゥヴィム Julian Tuwim(1894–1953)の詩に作曲した5つの歌曲集《スウォピエフニェ》でアルバムは閉じられます。
 
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)

『伝説(Legends)』
Alba ABCD 264 classical

 
トイヴォ・クーラ(1883–1918) 作品集
 交響的伝説曲《農奴の息子(Orjan poika)》 Op.14(1910)
 (バリトン、ソプラノ、合唱と管弦楽のための)
 不死の望み(Kuolemattomuuden toivo) Op.15(1910)
 (バリトン、合唱と管弦楽のための)
 結婚行進曲(Häämarssi) Op.3b no.2(管弦楽のための)
 舟歌(Venelaulu) Op.21 no.2(1912)(混声合唱のための)
 海の歌(Meren virsi) Op.11 no.2(1909)(混声合唱のための)
 りんごの木(Omenapuut) Op.11 no.1(1908)(混声合唱のための)
 朝の歌(Aamulaulu) Op.2 no.3(管弦楽のための)
  ユハ・ウーシタロ(バスバリトン) タイナ・ピーラ(ソプラノ) 
  タンペレ・フィルハーモニック管弦楽団・合唱団
  レイフ・セーゲルスタム(指揮)
  ティモ・ヌオランネ(合唱指揮)
 
録音 2005年9月 タンペレホール、2008年2月 ユロヤルヴィ教会(タンペレ、フィンランド)
制作 ラウラ・ヘイキンヘイモ
録音エンジニア エンノ・マエメツ

 
トイヴォ・クーラ Toivo Kuula(1883–1918)の作品集。詩人エイノ・レイノ Eino Leino(1878–1926)の詩をテクストに独唱と合唱と管弦楽のために作曲された《農奴の息子》と《不死の望み》。『カンテレタル』の詩をテクストとする《舟歌》などアカペラ混声合唱のための3曲。クーラのもっとも知られたピアノ曲《結婚行進曲》と歌曲《朝の歌》の管弦楽編曲。演奏されることの少なかった作品に人気曲を加えたアルバムです。
 
セーゲルスタムをサポートする合唱指揮のティモ・ヌオランネ Timo Nuoranne はフィンランド放送室内合唱団を指揮したラウタヴァーラの合唱曲などの録音で知られます。
 
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)

『伝説 2(Legends 2)』
Alba ABCD326 SACD hybrid (5.0 multichannel/stereo) classical

 
トイヴォ・クーラ(1883–1918) 作品集
 海の賛歌(Meren virsi) Op.11 no.2(混声合唱と管弦楽のための)
 (レーヴィ・マデトヤ 編曲)
 祝祭行進曲《ラプア行進曲》(Juhlamarssi "Lapuan marssi") Op.5
 (混声合唱と金管アンサンブルのための)
 こだまを揺らす(Keinutan kaikua) Op.11 no.6(混声合唱のための)
 弔いの歌(Hautalaulu) Op.11 no.5(混声合唱のための)
 祝祭カンタータ《イソキュロ・カンタータ》
 (Juhlakantaatti "Isonkyrön kantaatti”)(1904)
 (バリトン、合唱、オルガンとピアノのための)
  ものみな滅ぶ(Kaikki kaatuu, sortuu maatuu)
  今日こそ主の御業の日(Tää on se päivä)
 わが子をトゥオネラに(Tuuti lasta Tuonelahan) Op.11 no.4
 (混声合唱のための)
 調べ(Sävel) Op.29b no.1(混声合唱のための)
 ヌイヤミエスト行進曲(Nuijamiesten marssi) Op.28 no.4a
 (混声合唱と管弦楽のための)
 祝祭行進曲《ラプア行進曲》(Juhlamarssi "Lapuan marssi") Op.5
 (混声合唱と管弦楽のための)
  カテドラリス・アボエンシス合唱団(CCA)
  ティモ・レヘトヴァーラ(合唱指揮)
  エサ・ルートゥネン(バリトン)
  マルック・ヒエタハルユ(オルガン) パシ・ヘリン(ピアノ)
  衛兵金管アンサンブル ライネ・アンプヤ(指揮)
  トゥルク・フィルハーモニック管弦楽団 ペトリ・サカリ(指揮)
 
録音 2009年11月17日 トゥルク墓地復活礼拝堂、2010年11月8日–10日 トゥルク・コンサートホール、11月11日 マルティン教会(トゥルク、フィンランド)
制作 ラウラ・ヘイキンヘイモ
録音エンジニア エンノ・マエメツ、マッティ・ヘイノネン

 
初めて録音で紹介される曲が魅力のひとつ、トイヴォ・クーラ Toivo Kuula の作品集『伝説』。第1集(ABCD 264)につづく2作目では、トゥルクに本拠を置くカテドラリス・アボエンシス合唱団 Chorus Cathedralis Aboensis(CCA)の歌を中心にプログラムが組まれました。この合唱団の創設は1982年。技術をもったアマチュア歌手を集め、フィンランドの旧都トゥルク(スウェーデン名、オーブ Åbo)の大聖堂にちなみ命名されました。大聖堂の典礼に参加するほか、トゥルク・フィルハーモニクと共演を重ね、フィンランド放送交響楽団、ヘルシンキ・フィルハーモニック、タピオラ・シンフォニエッタをはじめとするオーケストラのコンサートに出演し、フランスのロレーヌ国立管弦楽団とも共演しています。2008年秋に就任したティモ・レヘトヴァーラ Timo Lehtovaara(1965–)が音楽監督を務めます。
 
『伝説 2』に収録された初録音曲は3曲。「演奏がむずかしいことで悪名高い」(キンモ・コルホネン) 混声合唱のための原曲をレーヴィ・マデトヤが混声合唱と管弦楽用に編曲した《海の賛歌》、A・フォシュマンの詩による《ものみな滅ぶ》と『詩編118番』をテクストとする《今日こそ主の御業の日》の2曲からなる《祝祭カンタータ》(作品番号なし)、そして《祝祭行進曲》。《ラプア行進曲》の別名をもつ《祝祭行進曲》は、合唱と金管アンサンブル、合唱と管弦楽の2つの版が演奏されています。
 
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)

『ペリマンニの春(Pelimannin kevät)』
Alba ABCD 330 SACD hybrid (5.1 multichannel/stereo) classical

 
グスターヴ・ホルスト(1874–1934)
 セントポール組曲(St Paul's Suite) Op.29 no.1
  ジグ(Jig) オスティナート(Ostinato) 間奏曲(Intermezzo)
  終曲(ダーガソン)(Finale, The Dargason)
エイノユハニ・ラウタヴァーラ(1928–2016)
 ペリマンニたち(Pelimannnit) Op.1
  とても元気なナルボの村人たち(Närböläisten braa speli)
  コプシのヨナス(Kopsin Jonas)
  鈴鳴らし役のサムエル・ディクストレム(Klockar Samuel Dikström) 
  悪魔のポルスカ(Pirun polska) 村の踊り(Hypyt)
ラーシュ=エーリク・ラーション(1908–1986)
 民謡の夜(Folkvisenatt)(1941)(弦楽オーケストラのための)
テューレ・ラングストレム(1884–1947)
 スペルマンの春(Spelmansvår)(1943)
ペール・ヘンリク・ノルドグレン(1944–2008)
 田舎の昔の情景(Kuvia maaseudun menneisyydestä) Op.139(2006)
  ハルキナ・マルティンテュタルの挽歌
  (H'arkina Martintyttären "kuollu itku")
  牛と牧夫たちが川の堤に(Karja ja paimenet joen rannalla)
  ラウンドレイ(Rekilaulu)
  アメリカへ旅立つ青年の別れ
  (Nuorukaisen hyvästijättö Amerikaan lähtiessä)
  ペリマンニ(Pelimanni)
レオー・ヴェイネル(1885–1960)
 ディヴェルティメント第1番 Op.20(1923)
ルドルフ・トビアス(1873–1918)(エドゥアルド・トゥビン(1905–1982) 編曲)
 夜曲(Nachtstück/Yökappale)(1902 arr.1939)
  オストロボスニア室内管弦楽団 ユハ・カンガス(指揮)
 
録音 2010年5月3日–6日 スネルマン・ホール(コッコラ、フィンランド)
制作・録音エンジニア サイモン・フォックス=ガール

 
民俗音楽に素材や題材を求めたクラシカル作品は民俗音楽にそのルーツをもつオストロボスニア室内管弦楽団と芸術監督ユハ・カンガス Juha Kangas(1945–)の重要なレパートリーのひとつです。『ペリマンニの春』と題されたアルバムは、ノルドグレン、ブルッフ、バルトーク、サッリネン、ラウタヴァーラ、グリーグ、ヤルカネンの曲による第1作『ペリマンニの肖像』(ABCD 205) につづく2作目の「肖像画集」。イギリスのホルスト、フィンランドのラウタヴァーラとノルドグレン、スウェーデンのラーションとラングストレム、ハンガリーのヴェイネル、エストニアのトビアスの「芸術音楽とともに息づく民俗の調べ」が紹介されます。ピアノの曲を作曲者自身がオーケストレーションしたラウタヴァーラの《ペリマンニたち》は、1973年の初演以後、フィンランドをはじめ各国の弦楽オーケストラのレパートリーとして定着しました。この作品をオストロボスニア室内管弦楽団が録音するのは、これが2度目です。ノルドグレンの《田舎の昔の情景》は、《ペリマンニの肖像》と同様、ペリマンニが弾いた民俗音楽を弦楽とハープのために自由に編曲した5曲の作品。これが初録音です。
 
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)

『アーレ・メリカント』
Alba ABCD 336 SACD hybrid (5.1 multichannel/stereo) classical

 
アーレ・メリカント(1893–1958)
 交響曲第1番 ロ短調 Op.5(1914–16)
 交響曲第3番(1952–53)
  トゥルク・フィルハーモニック管弦楽団
  ペトリ・サカリ(指揮)
 
録音 2010年3月7日–10日 トゥルク・コンサートホール(トゥルク、フィンランド)
制作・録音エンジニア サイモン・フォックス=ガール

 
ナショナルロマンティシズムの人気作曲家オスカル・メリカントを父に生まれたアーレ・メリカント Aarre Merikanto は、エルネスト・パングー、ヴァイノ・ライティオとともに1920年代フィンランドのモダニズムを代表する作曲家のひとりです。モダニズムへの無理解に苦しめられ挫折を味わった時期がありながらも彼は作曲をつづけ、民俗舞曲のリズムなどフィンランドの国民的要素とモダニズムを結びつける、独自の道を見出していきました。1951年にはシベリウス・アカデミー作曲家の教授に就任し、コッコネン、サッリネン、パーヴォ・ヘイニネン、ラウタヴァーラが彼のクラスで学びました。3曲の交響曲を含む管弦楽作品、8曲の協奏曲、室内楽作品、声楽曲が作品リストに残り、彼の唯一のオペラ、1921年から1922年にかけて完成させた《ユハ》は、フィンランドモダニズムを代表する傑作のひとつとみなされ、オーケストラの響きを巧みに使った管弦楽法とフィンランド語のイディオムを活かした声楽書法はバルトークの《青ひげ公の城》とも比較されています。
 
メリカントの《交響曲第1番》は「アレグロ」「スケルツォ・ファンタスティーク。ヴィヴァーチェ」「アンダンテ・コン・モート」」「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の4楽章。「気後れすることなくロマンティックな、しかし未熟な」(キンモ・コルホネン)この交響曲は、ライプツィヒに留学しマックス・レーガーの下で対位法を学んでいた1914年に行われたコンサートで演奏され、父オスカルに捧げられました。ナショナルロマンティックな色彩をとどめる交響詩《レンミンカイネン》も同じ時代の作品です。
 
《第3番》は1952年から1953年にかけて作曲されました。メリカントが「交響曲第3番」として作曲を始めた1923年の《管弦楽のための幻想曲》とは別の作品です。3楽章構成。ネオクラシカルなトーンをもつ舞曲風の「スケルツォ。ヴィヴァーチェ」、ロマンティックな心の動きが支配する「アンダンテ」、民俗舞曲のリズムの用法がモダニズム期のメリカントを思わせる「アレグロ」。ネオクラシカルなスタイルと後期ロマンシズムの要素の融合させることに成功した、メリカントの最後の大作です。アイスランド交響楽団を指揮して録音したシベリウス交響曲全集で知られるペトリ・サカリ Petri Sakari(1958–)が、トゥルク・フィルハーモニックを指揮。これが初録音です。
 
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)

『ガメラン地形(Gamelan Terrains)』
Aurora ACD 5073 contemporary

 
ルーベン・スヴェッレ・イェットセン(1977–)
 Gamelan Terrains(ガメラン地形)(2008)(16人のミュージシャンのための)
 Rituals II(儀式 II)(2002 rev.2003)(8人のミュージシャンのための)
 Lied(歌曲)(2005)(ソプラノとプリペアドピアノのための)
 Rituals I(儀式 I)(2000 rev.2003)(16人のミュージシャンのための)
 Miniatures II(ミニアチュア II)(1999)(トロンボーンと打楽器のための
 tReMbLiNg(2002–05)(14人のミュージシャンのための)
 Grains(粒子)(2003)(打楽器、ハープとヴィオラのための)
  BIT20 アンサンブル
  ピエール=アンドレ・ヴァラード(指揮)

 
ルーベン・スヴェッレ・イェットセン Ruben Sverre Gjertsen は、ノルウェー中部、オーレスンの南にあるヴォルダに生まれました。ベルゲンでモッテン・アイデ・ペーデシェンとジェイムズ・クラパトンに作曲を学び、客員のブライアン・ファーニホウ、クラウス・フーバー、ヘルムート・ラッヘンマンをはじめとする作曲家たちのマスタークラスに参加しました。ヘルシンキ、オーフス、オスロ、ストックホルムのフェスティヴァルやパリのアンサンブル・アンテルコンタンポランで作品が演奏され、ピエール・ブーレーズとルツェルン・フェスティヴァル・アカデミーの委嘱を受けて作曲した2006年の《Circles》によって彼の名と音楽が国際的に知られるようになりました。
 
イェットセンの音楽は、こする音、きしむ音、ひっかく音を中心にテクスチュアが選択され、時に暴力的に、時に優しく、時に輝かしく、また透明にと表情を変えていきます。バリ島の「ガメラン」を音楽上の暗喩とする《Gamelan Terrains(ガメラン地形)》を2009年のベルゲン国際フェスティヴァルで初演した、グリーグホールに本拠を置く BIT20 アンサンブルが、イェットセンのきわめて技巧的な7曲をピエール=アンドレ・ヴァラード Pierre-André Valade の指揮で録音。イェットセンの美的世界を鳥瞰します。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

『天の歌(Himmelkvad)』
2L 2L 075SABD Pure Audio Blu-ray + SACD hybrid (5.0 surround/stereo) contemporary/classical/traditional

 
ラッセ・トーレセン(1949–) 宗教的声楽作品
 六重唱曲(Vocal sextet) Op.42 *
  太陽の祈り(Solbøn)(2007/2008)
  弔いの歌(Likferdssælmin)(2009/2011)
  天にまします父よ(Himmelske Fader)(2009/2011)
  二重旋律(Tvetrall)(2009/2011)
 聖なる歌(Hellingkvad) Op.19(1993/2001) **
  わたしのうちに無垢の心をお創りください(Skap i meg et rent hjerte)
  わたしの食べ物があなたの美となり(La meg næres av din skjønnhet)
  おお、あなたはわれらの生と光(O du som er vårt liv og lys)
  わたしの魂を元気づけ喜びを与えてください(Forfrisk og gled min ånd)
  人類のための(For menneskeheten)
  神は唯一の神であることを証明する(Gud bevitner at han er én)
   ノルディック・ヴォイセズ *
   ベーリト・オプハイム・ヴェシュト(ヴォーカル) **
 
録音 2010年6月、10月 ソフィエンベルグ教会(オスロ)
制作・バランスエンジニアリング・編集・ミクシング・マスタリング モッテン・リンドベルグ

 
[DXD(24bit/352.8kHz)録音]
[Blu-ray: 5.0 DTS-HD MA(24bit/192kHz), 2.0 LPCM (24bit/192kHz), mShuttle: FLAC + MP3 Region: ABC worldwide]
[SACD hybrid(5.0 multichannel DSD/2.0 stereo DSD)]
 
北欧5ヶ国で作る北欧音楽委員会(NOMUS)が主催する「NOMUS 賞」の2010年の受賞者にノルウェーの作曲家ラッセ・トーレセン Lasse Thoresen が選ばれました。受賞の対象となった《六重唱曲》は、ノルウェーの人々が歌い継いできた宗教的な民謡を微分音やスペクトラル・オーバートーンなどのモダニズムの手法と統合し、きわめて現代的な響きの音楽に再生した作品です。この作品は「ノルディック・ヴォイセズ Nordic Voices」とのコラボレーションから生まれました。1996年に結成し、モンテヴェルディやチャールズ五世の宮廷の音楽から現代の実験的な作品まで幅広いレパートリーをもって活動しするアンサンブルの技術と音楽を念頭に置いて作曲。2008年から2010年にかけて4曲が初演され「Op.42」にまとめられました。
 
2L のアルバム『天の歌』では、《太陽の祈り》に始まり《二重旋律》に終わる《六重唱曲》の間に、バハーイー教の創始者、ペルシャのバハーウッラー Bahá'u'lláh(1817–1892)の祈りの書をテクストとする5曲の《聖なる歌》が、《おお、あなたはわれらの生と光》を初演したベーリト・オプハイム・ヴェシュト Berit Opheim Versto(1967–)のソロヴォーカルで歌われます。ベーリトは、フォークシンガー、メッツォソプラノ歌手としてさまざまなジャンルに活躍し、グリーグもピアノ曲に書いたノルウェーの農民たちの踊り、スロッテルをヴォーカル曲として演奏したアルバム(『口で真似するスロッテル』 2L 46SACD)を 2L からリリースしています。
 
録音セッションはオスロのソフィエンベルグ教会で行われ、グラミー賞の演奏部門とサラウンドサウンド技術部門へのノミネートがつづく 2L のモッテン・リンドベルグ Morten Lindberg が制作とエンジニアリングを担当しました。サンプリング周波数 352.8kHz の DXD 録音による収録。この録音が、トーレセンのイメージした「6声」と「独唱」を超える音楽空間の表現に貢献しています。
 
価格 4,675円(税込価格)(本体価格 4,250円)
 

Pure Audio Blu-ray ディスクと SACD ハイブリッドディスクをセットにしたアルバムです。Pure Audio Blu–ray ディスクにはインデックスを除き映像は収録されていません。SACD ハイブリッドディスクはSACDブレーヤーとCDプレーヤーで再生できますが、Pure Audio Blu-ray ディスクはCDやDVDのプレーヤーでは再生できないので、Blu–ray プレーヤーもしくは Blu–ray 対応のPCをお使いください。

『ライツ・アウト(Lights Out)』
Aurora ACD 5048 contemporary/classical

 
オルヤン・マトレ(1979–)
 管弦楽のための4つの小品(Four Miniatures for Orchestra)(2005)
エヴァン・ガードナー(1978–)
 ライツ・アウト(Lights Out)(2006)(管弦楽のための)
ヨルゲン・カールストレム(1981–)
 トリスタンフィルター II(Tristanfilter II)(2003)(管弦楽のための)
ヤン・エーリク・ミカルセン(1979–)
 悪鬼と月(Ghouls and Moons)(2004)(管弦楽のための)
  ノルウェー放送管弦楽団
  ロルフ・グプタ(指揮)

 
オラヴ・アントン・トンメセン、ラッセ・トーレセン、ペア・ヌアゴーの下で作曲法を学び、作曲家、指揮者として活動するロルフ・グプタ Rolf Gupta(1967–)がノルウェー放送管弦楽団を指揮した『ライツ・アウト(Lights Out)』。2006年にリリースされたこのアルバムは、現代の音楽シーンでさまざまなプロジェクトに携わる、当時20代の4人の作曲家の作品を紹介しています。
 
アルバムタイトルの《ライツ・アウト》を作曲したエヴァン・ガードナー Evan Gardner はマサチューセッツ州ローレンス生まれのアメリカ人です。オーバリン音楽院で学んだ後、オスロのノルウェー国立音楽大学でヘルステニウスとトンメセンのクラスに参加しました。彼の作品は、アンサンブル・アンテルコンタンポラン、オランダ放送室内フィルハーモニーをはじめとするオーケストラや合唱団によって演奏され、ベルゲン・フィルハーモニックなどの団体が作品を委嘱しています。ノルウェーの短編映画『Sniffer』のプロジェクトではオリジナル音楽を担当、作品は2006年カンヌ映画祭の短編部門でパルム・ドールを受賞しました。2006年の《ライツ・アウト》は、同年オランダのガウデアームス音楽週間でガウデアームス賞の決勝に進んだ作品です。
 
オルヤン・マトレ Ørjan Martre はベルゲン生まれ。ノルウェー国立音楽大学ではビョルン・クルーセ、ラッセ・トーレセン、トンメセン、ヘルステニウスに学びました。《管弦楽のための4つの小品》は、作曲家としての成功の第一歩となったという作品です。ヨルゲン・カールストレム Jørgen Karlstrøm は、ベルゲンのグリーグ・アカデミー、ベルリンのハンス・アイスラー音楽大学、ノルウェー国立音楽大学で学びました。近年の彼の作品では、エレクトロニクスの応用と、ギター奏者としての背景が反映していることが特徴的と言われます。
 
ヤン・エーリク・ミカルセン Jan Erik Mikalsen は、グリーグ・アカデミーとコペンハーゲンの王立デンマーク音楽アカデミーで学び、オスロを本拠に活動しています。2011年度の武満徹作曲賞で彼の《管弦楽のためのパーツ II(Parts II for Orchestra)》が第3位に選ばれました。2004年の《悪鬼と月(Ghouls and Moons)》は、2人の打楽器奏者、ハープ、チェレスタ、ピアノを加えた三管編成の管弦楽のために書かれ、2005年10月にスタヴァンゲル交響楽団が初めて演奏し、シベリウス・アカデミー交響楽団によってヘルシンキ初演されました。
 
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)

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