ウェブサイトで過去に紹介した北欧と北欧以外のディスクからピックアップして掲載するページです。

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『あり得べき諸都市』
2L 2L 083SABD Pure Audio Bluray + SACD hybrid (5.1 surround/stereo) contemporary/classical

 
アイヴィン・ビューエネ(1973–)
 あり得べき諸都市(まちまち)/本質を衝く風景
 (Possible Cities/Essential Landscapes)
  あり得べき諸都市(Possible Cities)(2005)(9つの楽器のための)(断片)
  配列図式(Grid)(9つの楽器のための)
  あり得べき諸都市(Possible Cities)(2005)(9つの楽器のための)
  廃墟のある風景(Landscape with Ruins)(2006)(ピアノ三重奏のための)
  超牧歌的な研究/夜の小品/ミニチュアの風景
  (Ultrabucolic Studies/Night Piece/Miniature Landscape)(2006)
  (フルート、クラリネット、ヴァイオリン、チェロ、コントラバスと
   打楽器のための)
  モルト・フルイード(Molto fluido)(きわめてなめらかに)(2007)
  (クラリネットと弦楽三重奏のための)
  静物(Nature morte)(2008)(フルート、バスクラリネット、
   ヴィブラフォーン、ピアノ(+ eBow) と弦楽四重奏のための)
  チカーダ・アンサンブル クリスチャン・エッゲン(指揮)
 
録音 2010年4月、12月 ヘニ・オンスタ芸術センター(バールム、ノルウェー)
制作・録音 モッテン・リンドベルグ
 
[DXD(24bit/352.8kHz) 録音]
[Disc 1: SACD hybrid(5.1 multichannel DSD/2.0 stereo DSD)][Disc 2: Blu-ray: 5.1 DTS HDMA (24bit/192kHz), 2.0 LPCM  (24bit/192kHz), mShuttle: FLAC 96kHZ + MP3 Region: ABC worldwide]

 
《あり得べき諸都市(まちまち)/本質を衝く風景》は、アイヴィン・ビューエネ Eivind Buene(1973–)がチカーダ Cikada とアンサンブル・アンテルコンタンポラン Ensemble Intercontemporain からそれぞれ委嘱を受け、2005年から2009年の間に作曲した6曲の室内楽とアンサンブル作品の集成です。「都市の中を移動することは新しい音楽を聴くことによく似ていると常に私は思っている。大都会を歩くと、見も知らぬ通りがあり、暗い路地に入ったと思うと突然明るい広場に出る」(ビューエネ)。「物語が姿を現し、増殖し、消えていく」。そうした都市の風景を音として聴けるものとする。作曲者ビューエネは、この連作によってそのことを試みています。
 
ビューエネの思索とイマジネーションと創造の背景にあるのが、イタリアの作家、イタロ・カルヴィーノ Italo Calvino(1923–1985)の『見えない都市(Le città invisibili/Invisible Cities)』です。マルコ・ポーロがフビライ汗にさまざまな空想都市について報告するという形式をとった、都市論とも現代文明批判とも考えられる小説。作曲者スコートゥンは、「都市を歩く」聴き手のための「旅行案内」として、第9章と、連作のタイトルが採られた第4章と第8章から英訳文を一節ずつブックレトに引用しています。「『時おり、その方の声が遥か遠くから聞こえて来るように思われることがあるが、それでいながらこの身は目に見えぬくせして目くらますばかりの現在に囚われておるのだ……』」(第9章)(米川良夫・訳 河出文庫版)。連作としての初演は、2009年11月14日、オスロ。1989年創設、2005年に NOMUS(北欧音楽委員会) 賞を受けた、固定メンバー10人のアンサンブル、チカーダ Cikada をクリスチャン・エッゲン Christian Eggen(1957–)が指揮しました。
 
このアルバムの録音セッションは、初演の翌年、オスロ・フィヨルドを望むヘニ・オンスタ芸術センター Henie Onstad Kunstsenter で行われました。24bit/352.8kHz の DXD 録音です。映画を楽しむための Blu–ray プレーヤーが手元にあるなら、それをオーディオ装置につないでみてください。"24bit/192kHz" の録音により、作曲者と演奏者の意図する「都市の風景」が、より鮮やかに、よりリアルに見えてくるでしょう。
 
作曲者のビューエネは、『見えない都市』の言葉をもうひとつ、ノーツの最後に引用しています。「物語を支配するものは声ではございません、耳でございます」(第9章)(米川良夫・訳)
 
価格 4,675円(税込価格)(本体価格 4,250円)
 

Pure Audio Blu-ray ディスクと SACD ハイブリッドディスクをセットにしたアルバムです。Pure Audio Blu–ray ディスクにはインデックスを除き映像は収録されていません。SACD ハイブリッドディスクはSACDブレーヤーとCDプレーヤーで再生できますが、Pure Audio Blu-ray ディスクはCDやDVDのプレーヤーでは再生できないので、Blu–ray プレーヤーもしくは Blu–ray 対応のPCをお使いください。

『Garland(花輪)』
Aurora ACD 5085 contemporary/classical

 
アイヴィン・ビューエネ(1973–)
 Garland(For Matthew Locke)(花輪(マシュー・ロックのために))(2007)
 Langsam und schmachtend(ゆるやかに、思い悩むように)(2003)(弦楽のための)
 Palimpsest(パリンプセスト)(2004)(シンフォニエッタのための)
 Stilleben(静物)(2006)(弦楽オーケストラのための)
  ノルウェー室内管弦楽団 テリエ・トンネセン(指揮)
 
録音 2016年2月15日–20日 ヤール教会(ベールム、ノルウェー)
制作 ヨルン・ペーデシェン
録音 アルネ・アクセルベルグ

 
ノルウェー室内管弦楽団 Det Norske Kammerorkester は、1977年、優れた器楽奏者を集めたプロジェクト・オーケストラとして設立されました。アイオナ・ブラウン、ライフ・オーヴェ・アンスネス、イザベル・ファン・クーレンたちが芸術監督や客演コンサートマスターに招かれ、創設者のテリエ・トンネセン Terje Tønnesen(1955–)が現在、音楽監督を務めています。
 
『Garland(花輪)』は、2017年のノルウェー室内管弦楽団の創設40周年を記念するアルバムです。「高校で音楽を学んでいた17歳の時、第1回ウルティマ・フェスティヴァルでノルウェー室内管弦楽団の演奏する『現代』音楽を聴き、これこそやりたい音楽だと思った」と語る、アイヴィン・ビューエネ Eivind Buene(1973–)の作品が4曲、演奏されます。ビューエネは、3つの小説とエッセイ集を発表した著述家としても活動、彼の音楽ではしばしば、文学やその他の芸術作品がイメージされ、あるいは素材に採られます。その代表的な作品のひとつ、イタロ・カルヴィーノの『見えない都市』を背景にもつ《あり得べき諸都市(まちまち)/本質を衝く風景》(2L 083SABD)が、2012年のスペルマン賞(ノルウェー・グラミー賞)を受賞しています。
 
バーミンガム・コンテンポラリーミュージック・グループの委嘱による《Garland(花輪)》は、「マシュー・ロックのために(For Matthew Locke)」の副題をもち、イギリス・バロック期の作曲家ロックの《4声のコンソート(Consorts of Fower Parts)》の3曲の序奏部に基づいて作曲されました。ヌーヴェル・アンサンブル・モデルンが初演した《Palimpsest(パリンプセスト)》(元の字句を消して別の字句を上書きした羊皮紙の写本)は「レイヤーを重ねた構造」をもつ作品。《Langsam und schmachtend(ゆるやかに、思い悩むように)》は、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》の第1幕前奏曲、冒頭の一分間の音楽による「幻覚」。アメリカの作家ドン・デリーロの小説『ボディ・アーティスト(The Body Artist)』を読んでいた時、主人公のボディ・アーティスト「ローレン・ハートケのために(For Lauren Hartke)」作曲した《Stilleben(静物)》。モーツァルトのピアノ協奏曲第17番の「アンダンテ」の旋律が最後に姿をみせます。この2曲はノルウェー室内管弦楽団の委嘱で作曲された作品です。
 
税込価格 2,695円(本体価格 2,450円)

『雪のかけら(Fjon)』
Losen Records LOS 153-2 jazz

 
『雪のかけら(Fjon)』
 Achille(アシル)(Rune Klakegg) Slapback(Rune Klakegg)
 Din meg(私はあなたのもの)(Rune Klakegg)
 Blue Club(Rune Klakegg)
 Moon River(ムーン・リバー)(Henry Mancini/Johnny Mercer)*
 Det er noe muffens her(なにか怪しいものがここに)(Rune Klakegg)
 Fjon(雪のかけら)(Rune Klakegg)
  シーエン・ジャズオーケストラ
   グットルム・グットルムセン(アルトサックス、フルート)
   アンドレ・カッセン(ソプラノサックス、テナーサックス)
   ヨン・オイスタイン・ロースラン(テナーサックス)
   リーネ・ビョルノル・ロースラン(クラリネット、バスクラリネット)
   フィン・アルネ・ダール・ハンセン(リード・トランペット)
   トマス・ユーハンソン(トランペット)
   マグネ・ルートレ(リード・トロンボーン)
   ベネディクテ・フォレッグ・ホル(トロンボーン)
   オースゲイル・グロング(バストロンボーン)
   ソンドレ・ストールダーレン(ギター)
   ルネ・クラーケグ(ピアノ)
   ヤン・オラヴ・レンヴォーグ(ベース)
   アウドゥン・クライヴェ(ドラム)
  ゲスト・ミュージシャン
   ロブ・ウェアリング(ヴィブラフォーン)
   ニーナ・グロムスタ(ヴォーカル)*
 
録音 2016年1月21日–23日 レインボースタジオ(オスロ)
制作 ルネ・クラーケグ、ヤン・オラヴ・レンヴォーグ
録音エンジニア ヤン・エーリク・コングスハウグ

 
ピアニスト、作曲家、アレンジャー。ルネ・クラーケグ Rune Klakegg(1955–)は、バンドリーダー、サイド・ミュージシャン、音楽教師、ライター、ジャズ雑誌「Jazznytt(ニュージャズ)」の編集者としても活動し、ノルウェーのジャズ・シーンに40年以上にわたり大きな足跡を残してきました。2006年、彼は、オスロの南西約130キロ、生まれ故郷の町シーエン Skien(1814年までは “Scheen”)に本拠を移し、新たな活動を始めました。そのひとつ、彼が創設に関わり芸術監督を務めるシーエン・ジャズオーケストラ Scheen Jazzorkester は、2015年、60歳を迎える彼のために「ルネのラウンド(Runes runde)」と題するコンサートを企画。14人の音楽家で演奏するために編曲した自作曲、新作、スタンダードナンバーが演奏されました。『雪のかけら』は、このコンサートで演奏したナンバーを彼らがオスロのレインボースタジオにもちこみベテランの録音技師ヤン・エーリク・コングスハウグ Jan Erik Kongshaug の手に委ねて生まれたアルバムです。
 
フランスの作曲家ドビュッシーのミドルネームを曲名にとり、クラシカル音楽の印象主義を想わせるピアノに始まる《アシル》、「ピアニストの復讐」のつもりで「ピアノが主役」となるよう旧作を編曲し直した《なにか怪しいものがここに》。このプロジェクトにはヴィブラフォーン奏者のロブ・ウェアリング Rob Waring がゲスト参加。ヘンリー・マンシーニとジョニー・マーサーが映画『ティファニーで朝食を』のために書いた《ムーン・リバー》は、クラーケグがトロンハイムのグループ、ソイル Søyr のために手がけた編曲をもうひとりのゲスト、女性ヴォーカルのニーナ・グロムスタ Nina Gromstad が素敵な気分の歌に歌います。
 
税込価格 2,365円(本体価格 2,150円)

『Inside the Rainbow』
Phono Suecia PSCD 42 jazz

 
モニカ・ドミニク(1940–)
 Kärleken(愛)
  モニカ・ドミニク・カルテット
   モニカ・ドミニク(ピアノ)
   ヨアキム・ミルデル(テナーサックス)
   パレ・ダニエルソン(ベース) リーロイ・ロウ(ドラム)
 [録音 1988年9月20日 スウェーデン放送第9スタジオ(ストックホルム)]
 Inside the Rainbow *
  Red Orange Yellow Green Blue Lilac
  モニカ・ドミニク・ビッグバンド
 [録音 1988年5月25日–26日 アトランティス・スタジオ
  (Atlantis Studios)(ストックホルム)]
 Tillägnan(献呈)(ラーシュ・フォシェル 作詞)**
  モニカ・ドミニク(ピアノ)
  ザ・リアル・グループ
 [録音 1988年10月12日 プロデューサー協会(Producenterna)スタジオ
  (ストックホルム)]
 Blues Local Nine
  モニカ・ドミニク・カルテット
   モニカ・ドミニク(ハモンドオルガン)
   ヨアキム・ミルデル(テナーサックス)
   パレ・ダニエルソン(ベース) リーロイ・ロウ(ドラム)
 [録音 1988年9月21日 スウェーデン放送第9スタジオ(ストックホルム)]
 Vem kan segla förutan vind?(風がなくて誰が船を出せるだろう)
 (伝承曲:モニカ・ドミニク 編曲)
  モニカ・ドミニク・トリオ
   モニカ・ドミニク(ピアノ) パレ・ダニエルソン(ベース)
   リーロイ・ロウ(ドラム)
 [録音 1988年9月20日 スウェーデン放送第9スタジオ(ストックホルム)]
 
制作 ホーカン・エルムクヴィスト
録音エンジニア イアン・シーダホルム、* ヤンネ・ハンソン、** ミッケ・ニルソン
編集 アン・マリーエ・ベルフラーゲ

 
スウェーデン著作権協会(STIM)が、スウェーデンの音楽シーンで活動する音楽家をプロモートする「ポートレート」アルバム。ピアニストで作曲家のモニカ・ドミニクのアルバムが制作されました。
 
モニカ・ドミニク(旧姓 ダニエルソン) Monica Dominique は1940年生まれ。ストックホルムのアドルフ・フレードリク音楽学校と王立ストックホルム音楽大学で学び、主にジャズの分野で活動しています。1970年代の初期にグループ「Solar Plexus」で演奏、女優としてもデビューしました。ピアニストで作曲家のカール=アクセル・ドミニク Carl-Axel Dominique が夫、ベーシストのパレ・ダニエルソン Palle Danielsson が弟です。
 
『Inside the Rainbow』は、彼女にとって最初のソロ・アルバムです。《Kärleken》と《Blues Local Nine》ではカルテット、伝承曲をアレンジした《Vem kan segla förutan vind?》はトリオ、《Inside the Rainbow》はビッグバンドと、彼女のリーダーとしての実力がうかがえるナンバーです。ザ・リアル・グループと彼女が共演した《Tillägnan》は、作家ラーシュ・フォシェル Lars Forssell(1928–2007)が作詞。「一度聴いたら忘れられない」メロディは、広く愛され、この後、スウェーデンの結婚式に欠かせないとまで言われる人気曲になりました。
 
税込価格 2,695円(本体価格 2,450円)

『《ハウス・オブ・カード》交響曲(House of Cards Symphony)』
BIS SACD2299 2SACD’s hybrid (5.0 surround/stereo) contemporary/classical

 
ジェフ・ビール(1963–)
[Disc 1]
 《ハウス・オブ・カード》交響曲(House of Cards Symphony)*
  Forward March(フォワード・マーチ) Betrayal(裏切り)
  New Deal(新たな取引) Clair Underwood(クレア・アンダウッド)
  Russia(ロシア) Portrait of a Marriage(結婚の肖像)
  Power(権力) Dignity(威厳) Puppet Master(人形使い)
  Making History(歴史作り)
[Disc 2]
 《ハウス・オブ・カード》幻想曲(House of Cards Fantasy)
  (フルートと管弦楽のための)**
 シックス・シクスティーン(Six Sixteen)
 (ギターと室内管弦楽のための)***
 頌歌(Canticle)(弦楽オーケストラのための)†
 フルートと管弦楽のための協奏曲(Concerto for Flute and Orchestra)††
  ジョーン・ビール(ソプラノ)*
  ジェフ・ビール(フリューゲルホルン)(即興)*
  ヘンリー・ビール(ベースギター)*/††
  ヨアキム・ルンドストレム(ギター)*
  マッティン・オッラリード(ドラムキット)*
  フレードリク・インゴー(ピアノ)*
  エーリク・モンソン(ピアノ)*
  シャロン・べザリー(フルート)**/††
  ジェイソン・ヴィオー(ギター)***
  ヘンリク・ユン・ペーテシェン(ヴァイオリン・ソロ)†
  ノルショーピング交響楽団 ジェフ・ビール(指揮)
 
録音 2017年6月 ルイ・ド・イェール・コンサートホール(ノルショーピング、スウェーデン)
制作 トーレ・ブリンクマン
録音 ファビアン・フランク

 
「ひとりの下院議員が、彼に劣らず狡猾な妻と手を携え、裏切り者たちへの復讐を進めていく」(IMDb)。ケヴィン・スペイシー主演の Netflix テレビ・シリーズ『House of Cards』(邦題『ハウス・オブ・カード 野望の階段』)は、2013年から2018年まで6シーズン、66のエピソードが制作されました。「ポリティカル・スリラー」のドラマは人気を集め、テレビを変えたとまでいわれる評価を獲得しました。このシリーズの音楽は、ロサンジェルスを本拠にテレビの分野を中心に活躍するジェフ・ビール Jeff Beal(1963–)が担当。シリーズのクリエーター、ボー・ウィリモン Beau Willimon は、急展開するドラマの中で移ろう人々の心理を各エピソードの全体像を見据えながら「独自の声」で表現した音楽がシリーズに欠かせない要素だったと語っています。
 
《ハウス・オブ・カード》交響曲は、シリーズの音楽を約83分の管弦楽曲とした作品です。ワシントンのジョン・F・ケネディ・センター、マイアミ、オランダ、デンマーク、イェルサレムで行われた「『ハウス・オブ・カード』イン・コンサート」を基に創られました。作曲者ビールは、〈Forward March(フォワード・マーチ)〉から〈Making History(歴史作り)〉まで10の楽章を、時系列によらず、アンダウッド家を取りまくドラマの情緒的、劇的な流れに沿って配置。サウンドトラックの演奏に使われたエレクトリックベース、ギター、フリューゲルホルンといった楽器とソプラノの声を残しながらフルオーケストラのためのオーケストレーションを行なっています。《ハウス・オブ・カード》幻想曲は、メインタイトル、フランクとクレアの「愛と策略」のテーマ、フランク・アンダウッドの人形使いのモチーフを素材に使い、「シャロン・べザリー・フォン・バールのため」に《フルート協奏曲》のアンコールとして作られた小品です。
 
《シックス・シクスティーン》は、ギターと室内オーケストラのための「急-緩-急」3楽章の作品。曲名は、室内楽のために書かれた原曲の「弦の数」(ギターの6本、弦楽四重奏の楽器の弦の数4本の4倍)からとられ、「白日夢」や「記憶の感覚」のストーリーをイメージした、時刻(午前6時16分)、部屋番号、番地、特別の日なども示しています。「クラシカル・ギタリストのエリート」のひとり、アメリカのジェイソン・ヴィオー Jason Vieaux(1973–)がソロを弾いています。弦楽オーケストラのための《頌歌》は、憧れや大きな喪失といった気分を歌った「ショートストーリー」あるいは「祈り」の音楽です。《フルート協奏曲》は、2015年6月、北欧の夏の太陽に照らされたストックホルム港で作曲者のビールがシャロン・べザリーとコーヒーを飲みながら雑談していていて浮かんだアイデアにより作曲されました。「テスラを運転しながらアクセル性能の良さを見せびらかすべザリーとフルートを吹くべザリー」のイメージされた「喜び、活力、リズムにあふれた協奏曲」。ミネソタ管弦楽団の『American Voices(アメリカの声)』と題するコンサートで、べザリーのソロ、オスモ・ヴァンスカの指揮で初演されました。
 
『ハウス・オブ・カード』に熱中したという BIS レーベルのオーナー、ローベット・フォン・バールのたっての願いで制作されたアルバムです。
 
[プロフィール]
 
ジェフ・ビール Jeff Beal は、1963年、カリフォルニアのヘイワード生まれ。サンフランシスコのベイエリアでトランペットを習いながら育ち、70年代ジャズ、クラシカル、ロック、ポップと幅広いジャンルに熱中。高校時代からビッグバンドやオーケストラのために作曲を始め、イーストマン音楽学校に進んでからはクリストファー・ラウス、レイバーン・ライト、ビル・ドビンズたちに学びました。ニューヨークとサンフランシスコでジャズの録音と作曲を経験した後、ロサンジェルスに移り、エド・ハリス監督・主演の『Pollock』(邦題『ポロック 2人だけのアトリエ)』)(2000)の音楽が World Soundtrack Awards の「Discovery of the Year」にノミネートされ、彼の映画音楽作家としての活動が始まりました。『Monk』(2002)第1シーズンの主題歌でエミー賞を初めて受賞。共和制ローマの最後の日々を描いた『Rome(ローマ)』(2005)のテーマとスコアもノミネートされています。トム・セレック制作・主演の「ジェッシー(ジェッシィ)・ストーン」シリーズは、ロバート・B・パーカーの小説に基づく第1作『Stone Cold』(原作邦題『影に潜む』)から全作品のスコアを担当。マサチューセッツの港町の雰囲気と登場する人たちの内面を静かな音楽で表現したスコアが作品の高い評価に寄与、第9作『Jesse Stone: Lost in Paradise』(2015)のスコアがエミー賞にノミネートされました。『House of Cards』は、第32章と第63章のスコアが2015年と2017年のエミー賞を獲得しています。
 
価格 5,500円(税込価格)(本体価格 5,000円)

『ギター協奏曲』
Ondine ODE 1219–2 contemporary/classical

 
キンモ・ハコラ(1958–)
 ギター協奏曲(2008)
細川俊夫(1955–)
 旅 IX - 目覚め -(Voyage IX ‘Awakening’)(2007)
 (ギター、弦楽、打楽器のための)
 開花 II(Blossoming II)(2011)(室内管弦楽のための)
  ティモ・コルホネン(ギター)
  オウル交響楽団
  サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(指揮)
 
録音 2012年10月22日–25日 マデトヤ・ホール(オウル、フィンランド)
制作 セッポ・シーララ
録音エンジニア・マスタリング エンノ・マエメツ

 
フィンランドのギタリスト、ティモ・コルホネン Timo Korhohen(1964–)のために書かれた2つのギター協奏曲を中心とするアルバム。
 
キンモ・ハコラ Kimmo Hakola は、コスモポリタン性が強く、さまざまなスタイルの音楽を融合して目の覚めるような音風景を創る作曲家として知られます。《ギター協奏曲》は、アラブ人、ユダヤ人、ジプシー、キリスト教徒が共に平穏に暮らしていた中世アンダルシアを念頭に置き、書かれました。「アレグロ・ブリランテ」の第1楽章、スペイン系ユダヤのラディーノ語の歌《Adio Querida》に因み〈Adio〉と題した「アモローソ」の第2楽章、アンダルシアのどこかにある架空のユダヤ人街の夢姿を表す「ゲットー」の副題をつけた「アレグロ、クワジ・カデンツァ」の第3楽章。テューバを含まない2管の管楽器、弦楽合奏、ハープ、ティンパニ、そして、グロッケンシュピール、ヴィブラフォーン、マリンバ、テューブラーベル、ペルー発祥の体鳴楽器カホンなど多種の楽器を楽器を演奏する2群の打楽器という編成の作品です。コルホネンがマデトヤ財団の支援を受けて委嘱。2008年4月10日、ヘルシンキ、フランク・オッル指揮ヘルシンキ・フィルハーモニックと共演して初演しました。
 
細川俊夫もコスモポリタン性をもった作曲家とみなされているひとりです。《旅 IX - 目覚め -》は、カメラータ・アテネとトゥルク・フィルハーモニックから共同委嘱され、1997年に彼が始めた「旅(Voyage)」シリーズの9番目の作品として書かれました。ギターを「蓮の花」に、弦楽オーケストラを「水(池)」に見立て、「花と自分はひとつ……花の歌は、わたしの歌。花の目覚めは、わたしの自然浄化、わたしの自我の目覚め」(細川俊夫)とした音楽です。コルホネンが、2007年9月の「第50回 ワルシャワの秋音楽祭」でクリストファー・ウォレン=グリーン指揮「カメラータ・アテネ」の共演で初演しました。室内管弦楽のための《開花 II》も「蓮の花」のイメージされた作品です。「時の止まったところのひとつの気分」。エディンバラ国際フェスティヴァル協会の委嘱で作曲され、2011年8月21日、ロビン・ティチアーティ指揮スコットランド室内管弦楽団によって初演されました。
 
2012年10月、マデトヤ・ホールでのセッション録音。タピオラ・シンフォニエッタの「アーティスト・イン・アソシエーション」を務め、タンペレ・フィルハーモニックの次期首席指揮者に指名されたサントゥ=マティアス・ロウヴァリ Santtu-Matias Rouvali(1965–)とオウル交響楽団の演奏です。
 
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)

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