ウェブサイトで過去に紹介した北欧と北欧以外のディスクからピックアップして掲載するページです。
『Side by Side(ならべてみると)』
Alba ABCD 388 SACD hybrid (5.0 multichannel/stereo)
『Side by Side(ならべてみると)- バッハのパルティータとカウスティネンの民俗音楽』
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番 ニ短調 BWV1004
1. ヒントリーキ・ペルトニエミの葬送行進曲
(Peltoniemen Hintrikin surumarssi)(伝承曲)- アルマンド
2. 吊り橋のハンボ(Riippusillan hambo)(アルト・ヤルヴェラ(1964–))
- クラント
3. 短調のポルスカ(Mollipolska)
(ヴィルヤミ・ニーテュコスキ(1895–1985))
- サラバンド
4. ヤーナのワルツ(Valssi Jaanalle)(コンスタ・ユルハ(1910–1984))
- ジグ
無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第3番 ホ長調 BWV1006
5. 前奏曲 - ポルスカ(Polska)(伝承曲)
6. ルール(遅いジグ)- ポルスカ=マズルカ(Polkkamasurkka)
(ヴィルヤミ・ニーテュコスキ(1895–1985))
7. ロンド形式のガヴォット – 小さいカントルのショッティーシュ
(Pikkulukkarin sotiisi)(伝承曲)
8. メヌエット I & II – パロカンガスの若者たちのよりよいワルツ
(Palokankaan poikain parempi valssi)(伝承曲)
9. ブレー – フリーティ・オヤラのポルカ(Ojalan Friitin polkka)(伝承曲)
– ジグ
クレータ=マリア・ケンタラ(バロック・ヴァイオリン)
録音 2015年5月18日–21日 カウスティネン教会(カウスティネン、フィンランド)
制作・録音 サイモン・フォックス=ガール
クレータ=マリア・ケンタラ Kreeta-Maria Kentala は、フィンランドを代表するバロック・ヴァイオリニストのひとり。スカンディナヴィア最大の民俗音楽祭でも知られるカウスティネンに生まれ、オストロボスニア音楽学校でマウノ・ヤルヴェラとユハ・カンガスとカイヤ・サーリケットゥに学び、シベリウス・アカデミーを経て、ストックホルムのエツベリ音楽学校でエンドレ・ヴォルフとジェニファー・ヴォルフに師事しました。ケルンのラインハルト・ゲーベルの下でバロック音楽を研究。イギリスのモニカ・ハジェットのプロジェクトにもたびたび参加してきました。カウスティネンに2013年に創設されたピリオド楽器アンサンブル「バロッコ・ボレアーレ(北のバロック)」のリーダーを務め、アルバム『フォーク・シーズンズ』(ABCD 402)のソロも担当しました。
彼女のソロアルバム『Side by Side(ならべてみると)』。J・S・バッハの《無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ》の〈シャコンヌ〉をのぞく第2番と第3番の「バッハの舞曲ではない舞曲」と「カウスティネンの舞曲」をならべて演奏。いろいろな「違い」と「つながり」をプレーヤーの視点から眺め、聴き手の興味を呼び起こす音楽として提示します。第2番の〈アルマンド〉の前に演奏される《ヒントリーキ・ペルトニエミの葬送行進曲》は、アウリス・サッリネンの弦楽四重奏曲第3番の素材にも使われた伝承のフィドル曲です。ブレシアのジョヴァンニ・バッティスタ・ローゲリが1691年に製作した楽器による演奏。『フォーク・シーズンズ』と同じサイモン・フォックス=ガール Simon Fox-Gál の制作と録音です。
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)
『オーレ・オールセン 管弦楽作品集』
Sterling CDS 1086-2 CD-R classical
オーレ・オールセン(1850–1927)
交響的音詩《アスゴールの騎行(Asgaardsreien)》 Op.10
交響曲 ト長調 Op.5
弦楽オーケストラのための組曲(Suite for strykere) Op.60
マルギットの歌(Margits vise)
北極光と氷原(Nordlicht und Eisfeld) 春(Frühling)
夢(Traum) ジプシーに加わって(Unter den Zigeunern)
小人と妖精(Zwerge und Elfen) 日没(Sonnenuntergang)
ラトビア国立交響楽団 テリエ・ミケルセン(指揮)
録音 2009年7月28日–29日 リガ改革教会(リガ、ラトビア)
制作 カルリス・ピンニス
録音 アルネ・アクセルベルグ
オーレ・オールセン Ole Olsen は、ノルウェー北部、フィンマルク県のハンメルフェルト生まれ。町のオルガニストだった父イーヴェルに音楽を学び、10歳からトロムソの学校でオルガンの教育を受けました。1865年、時計工の訓練を受けるためトロンハイムに移るものの、2年後、ユスト・リンデマンに師事し、音楽家としての道を歩み始めました。スヴェンセンやグリーグと同じライプツィヒ音楽院で学んでいます。ト長調の交響曲は、ライプツィヒ留学時代に作曲された、オールセンが試みた最初の交響的作品です。〈アレグロ・マエストーゾ〉〈スケルツォ:アレグロ〉〈アンダンテ〉〈アンダンテ・クワジ・アダージョ-アレグロ・アッサイ〉。中央ヨーロッパの音楽とノルウェー音楽の性格をもつロマンティックな音楽です。《アスゴールの騎行》 は、1845年に出版されたヨハン・セバスチャン・ヴェルハーヴェンの『新詩集(Nyere Digte)』に収められた、古ノルウェーの民話を題材とする同名の詩に基づいて作曲されました。「轟く音とともに夜空を過ぎゆく 泡立つ汗の黒馬の行列 猛々しい騎手は嵐のごとく、北をめざす……」。《弦楽オーケストラのための組曲》は、ノルダール=ロルフセンの童話喜劇『スヴァイン・ユーレド(Svein Uræd)』のために作曲した付随音楽から7曲を選んだ作品です。
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円)
2010年にリリースされた SACD hybrid のディスクは廃盤になりました。高品質メディア(Sony DADC/Diamond Silver Discs)を使用した、レーベル・オフィシャルの CD-R による再リリースです。
『われは蘇りなり』
Dacapo 6.220651 SACD bybrid (Multichannel/stereo) early music/classical
『Ich bin die Auferstehung(われは蘇りなり)- ブクステフーデとコペンハーゲンの友人たち』
ディートリク・ブクステフーデ(c.1637–1707)
われは蘇りなり、命なり(Ich bin die Auferstehung) BuxWV.44
ヨハン・バルタザル・エルベン(1626–1686)
ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラによるソナタ(Sonata sopra ut, re, mi, fa, sol, la)
(2つのヴァイオリンと通奏低音のための)
ヨハン・ヴァレンティーン・メーデル(1649–1719)
神よ、助けたまえ(Gott hilf mir)
マティアス・ヴェクマン(c.1616–1674)
トッカータ イ短調(チェンバロ
わがもとに来たれと(Kommet her zu mir)
カスパー・フェルスター(子)(1616–1673)
イエスの優しき思い出(Jesu dulcis memoria) *
アンドレーアス・キルヒホフ(?–1691)
6声のソナタ(Sonata á 6) *
ニコラウス・ブルーンス(1665–1697)
わが心定まれり(Mein Herz ist bereit)
カスパー・フェルスター(子)(1616–1673)
7声のソナタ(Sonata á 7) *
ヤコブ・ブロク・イェスパセン(バスバリトン)
コンチェルト・コペンハーゲン
ラース・ウルリク・モーテンセン(指揮、オルガン、チェンバロ)
[* 世界初録音]
録音 2018年11月19日 三位一体教会(コペンハーゲン)、11月20日–22日 ガーニソン教会(コペンハーゲン)
制作・録音 プレーベン・イーヴァン
17世紀後半、バルト海沿岸地方では大胆な革新性と沸き立つ創造性に特徴づけられる音楽が数多く作られました。当時の宗教的ソロカンタータと室内楽作品を特集するアルバムがリリースされます。ラース・ウルリク・モーテンセン Lars Ulrik Mortensen の指揮するコンチェルト・コペンハーゲン(CoCo)の演奏。バスバリトンのヤコブ・ブロク・イェスパセン Jakob Block Jespersen は、王立デンマーク音楽アカデミーとオペラ・アカデミーで学びました。王立デンマーク歌劇場やノルウェー国立歌劇場などの舞台に立ち、コンチェルト・コペンハーゲンの上演したパーセルの《妖精の女王》にも出演しています。ポール・ヒリヤーのシアター・オヴ・ヴォイセズのメンバーとしてハインリヒ・シュッツの受難曲やブクステフーデの声楽曲をはじめとする録音に参加。「ペーミオス・コンソート」を共同創設、『トマス・キンゴの宗教歌集』(8.226121)とブロアソンの賛美歌集『The Rare Treasure of Faith(信仰の稀有な宝)』(8.226123)のアルバムをリリースしています。
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円)
『マンテュヤルヴィの合唱音楽』
Hyperion CDA 68266 contemporary/classical
ヤーコ・マンテュヤルヴィ(1963–)
アヴェ・マリア(Ave Maria)(1991)
シュトゥットガルト詩編(Stuttgarter Psalmen)(2009)
(混声8部合唱のための)
なにゆえ、国々は騒ぎ立ち(Warum toben die Heiden?)
わたしの神よ、わたしの神よ、なぜわたしをお見捨てになるのか
(Mein Gott, mein Gott, warum hast du mich verlassen?)
神よ、あなたの裁きを望みます(Richte mich, Gott)
わたしの魂よ、主を祝福せよ(Benedic anima mea Domino)(1994)
あなたは美しい(Pulchra es)(2018)
トリニティ・サーヴィス(三位一体の礼拝)(Trinity Service)(2019)
(混声4部合唱から混声7部合唱のための)
入祭唱、アヴェ・マリア(Introit, Ave Maria) 先唱句(Preces)
詩編128番(Psalm 128) マニフィカト(Magnificat)
主よ、今こそあなたは(Nunc Dimittis) 応唱(Responses)
主の祈り(The Lord’s Prayer) 応唱&特祷(Responses & Collects)
おお幸いなる光よ、三位一体よ(O lux beatas Trinitas)
最終の応唱(Final Responses)
おお大いなる神秘(O magnum mysterium)(2007)
(混声8部合唱のための)
ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団
スティーヴン・レイトン(指揮)
録音 2018年1月、2019年1月、2020年1月 ケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ礼拝堂(ケンブリッジ、イングランド)
フィンランドの作曲家ヤーコ・マンテュヤルヴィ Jaakko Mäntyjarvi(1963–)は、《4つのシェイクスピアの歌》(1984)や《シュード・ヨイク(ヨイクに似せて)(Pseudo-Joik)》(1994)など主に合唱音楽の作家として知られます。ケンブリッジ・トリニティ・カレッジ合唱団 Choir of Trinity College Cambridge と音楽監督スティーヴン・レイトン Stephen Layton の新しいアルバムでは、マンテュヤルヴィの書いた宗教的内容の作品が歌われます。メイン・プログラムの《トリニティ・サーヴィス(三位一体の礼拝)》は、この合唱団の委嘱で作られた作品です。この作品に含めることが最初から決まっていた2002年の《主の祈り》を起点に、新しい《マニフィカト》《主よ、今こそあなたは》と作曲が進められ、ラテン語と英語のテクストによる、演奏会用ではなく日々の礼拝のための音楽として作られました。伝統的な技法を基本にしながら、「いかに幸いなことか」の《詩編128番》や《応唱》では声部を分割、響きによる「インパクト」が目指されました。《シュトゥットガルト詩篇》は、シュトゥットガルト国際バッハ・アカデミー(Internationale Bachakademie Stuttgart)の委嘱作です。メンデルスゾーン生誕200年の2009年、『詩編』による作品を依頼された作曲家のひとり、マンテュヤルヴィは、メンデルスゾーンが《3つの詩編》(Op.78)に使ったのと同じ「詩編2番」「詩編22番」「詩編43番」をテクストに選び、第2曲「わたしの神よ、わたしの神よ、なぜわたしをお見捨てになるのか」では元のヘブライ語(”Eli, Eli, lama asabthani?”)を加えて作曲しています。
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)
『ささいなことが大きなことに(I det lilla händer det mesta)』
Ladybird 79556855 jazz
『ささいなことが大きなことに(I det lilla händer det mesta)』
Min bild(わたしの絵姿)(Amanda Ginsburg/Filip Ekestubbe)
Åh nej!(Visa mitt i natten)(ああ、ちがう!(夜中の歌))
(Amanda Ginsburg/Andy Fite)*
Innan dagen kommer in(一日が訪れる前に)
(Filip Ekestubbe/Amanda Ginsburg)
Ett minne blott(思い出だけが)(Filip Ekestubbe/Amanda Ginsburg)
Varannan minut(1分おきに)(Amanda Ginsburg/Filip Ekestubbe)
Ingen kommer undan(誰も逃げられない)
(Amanda Ginsburg/arr. Filip Ekestubbe)**
Det funkar varje gång(いつもうまくゆく)
(Amanda Ginsburg/arr. Filip Ekestubbe)
För bra för att vara sant(できすぎた話)(Amanda Ginsburg/Andy Fite)
Dannys dröm(ダニーの夢)
(Lars Gullin/Amanda Ginsburg/Sofie Sörman)***
アマンダ・ギンスブーリ(ヴォーカル)
フィーリプ・エーケストゥッベ(ピアノ)
ルードヴィグ・エーリクソン(ベース)
ルードヴィグ・グスタフソン(ドラム)
フレードリク・リンドボリ(サクソフォーン)*
カーリン・ハンマル(トロンボーン)**
ソフィ・ソルマン(ヴォーカル)***
録音 Atlantis Grammofon Studio(ストックホルム)
制作 アマンダ・ギンズブーリ、フィーリプ・エーケストゥッベ
ミクシング ミーケル・ヘールシュトレム
マスタリング ソフィ・フォン・ハーゲ
デビュー・アルバム『ひとつのことをずっと考えている(Jag har funderat på en sak)』(79556846)が人気を呼んだスウェーデンのシンガーソングライター、アマンダ・ギンスブーリ(アマンダ・ギンズバーグ) Amanda Ginsburg(1990–)のアルバム第2作が、2020年秋、リリースされます。タイトルは『ささいなことが大きなことに(I det lilla händer det mesta)』。「日常生活は、とぎれることのないインスピレーションの源です。わたしは、その不思議なパターンを掘りさげたいと思います。ほとんどのことの起きるきっかけは、たいていは目に見えない、ささいなこと……」。新作は、最初のアルバムに直接つづくコンセプトで作られ、スウェーデンのかつてのジャズシンガーたちの余韻を残しながら、彼女自身のポップな感触と「北欧メランコリー」の気分の漂う世界へ誘います。共同で制作にあたったフィリップ・エーケストゥッベ Filip Ekestubbe のピアノ。ベーシストのルードヴィグ・エーリクソン Ludvig Eriksson とドラマーのルードヴィグ・グスタフソン Ludwig Gustaffsson を加えたトリオでアマンダの歌をサポート。『A Swedish Portrait(スウェーデン・ポートレート)』(Prophone PCD 201)をリリースしたフレードリク・リンドボリ Fredrik Lindborg、『Strings Attached(弦楽器に恋をして)』(PCD 230)のトロンボーン奏者カーリン・ハンマル Karin Hammar、フランスで活動するスウェーデンのヴォーカリスト、ソフィ・ソルマン Sofie Sörman が、ゲスト参加しています。
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)
『ニクラス・シヴェレーヴ 3つのピアノ協奏曲』
Naxos 8.573181 contemporary/classical
ニクラス・シヴェレーヴ(1968–)
古典の協奏曲(Concerto Classico)(1998)(ピアノと管弦楽のための)*
ピアノ協奏曲第2番(2002 rev.2016)(ピアノと弦楽オーケストラのための)*
ピアノ協奏曲第5番《騎士の協奏曲(Riddarkonserten)》(2019)
(ピアノと金管バンドのための)**
ニクラス・シヴェレーヴ(ピアノ)
マルメ交響楽団 * ヴィクトル・アヴィア(指揮)*
スウェーデン王室近衛竜騎兵音楽隊 **
ダーヴィド・ビョークマン(指揮)**
録音 2016年6月16日–18日 マルメ・コンサートホール(マルメ、スヴェーデン)(ライヴ)*、2019年11月16日 ストックホルム・コンサートホール(ストックホルム、スウェーデン)(ライヴ)**
ニクラス・シヴェレーヴ Niklas Sivelöv(1968–)は、スウェーデンの北東部、ボスニア湾に面したシェレフテオの生まれ。6歳からオルガンを学び、主に自作と即興によるオルガン曲を弾いて賞を受け、スカンディナヴィアで知られる存在になりました。14歳の時にピアノに転向。17歳から王立ストックホルム音楽大学でピアノ演奏と作曲法を学び、1991年、ストックホルム・フィルハーモニック管弦楽団の共演でバルトークのピアノ協奏曲第2番を弾いてソロ・ピアニストとしてデビューしました。コペンハーゲンの王立デンマーク音楽アカデミーの教授。CD録音も多く、《クライスレリアーナ》《アラベスク》などシューマンの作品集(Caprice CAP 21518)、ステーンハンマルのピアノ作品集(Naxos 8.553730)とピアノ協奏曲第1番・第2番(8.572259)、ペッテション=ベリエルの《フローセの花》(8.554343)、『ベルマンの歌による即興』(Caprice CAP 21776)といったアルバムが代表的録音として知られます。シヴェレーヴは、スウェーデン作曲家協会に所属、《北欧(Nordico)》の副題をもつ第1番をはじめとする4曲の交響曲、独奏楽器とピアノのための組曲など、約30の作品を発表、テューバとピアノのための《ソナタ第5番》(Simax PSC 1101)や《マリンバのための組曲》(Caprice CAP 21743)は、CD録音でも紹介されています。
シヴェレーヴが自身の楽器「ピアノ」とオーケストラのために作曲した作品を3曲、作曲者自身のソロで演奏したアルバム。《古典の協奏曲》は、1998年、彼が手がけた最初の管弦楽作品です。シヴェレーヴ自身はこの作品を「Jugendsünde(若気の過ち)」と言い、ガーシュウィン風のリズミカルな動きの2つの楽章が、ややメランコリックな緩徐楽章をはさむ、アメリカの気分に溢れた音楽に書かれています。ピアノ協奏曲第2番は、ピアノと弦楽オーケストラのための作品です。十二音音楽からインスピレーションを受けながら、表現性の高いモチーフを使って書かれた音楽は、バルトークやプロコフィエフの作品を思わせます。カール=ビリエル・ブルムダールのSFオペラ《アニアーラ》と似たところもあると指摘される音楽です。4楽章の作品。この2曲は、オーボエ奏者と作曲家でもあるフランスの指揮者、ヴィクトル・アヴィア(1982–)がマルメ交響楽団を指揮して共演しています。
ピアノ協奏曲第5番は、2019年、ピアノが金管バンド(ブラスバンド)と共演する音楽として作られました。バンドの編成は、ピッコロトランペット、コルネット4本、トランペット3本、フリューゲルホルン、ホルン4本、トロンボーン2本、バストロンボーン、ユーフォニアム、テューバ2本、ティンパニ、打楽器。シリアスな気分とユーモアの入り混じった3楽章の作品です。この曲は、シヴェレーヴが2年前にデンマーク王国の「ダネブロー騎士勲章」を授与されたことへの謝意として作曲され、《騎士の協奏曲》の副題が付けられました。2019年11月16日、ストックホルムで行われた初演の録音です。
価格 1,760円(税込価格)(本体価格 1,600円)
『ハイドン 8つの初期ソナタ』
Ondine ODE 1360-2D 2CD’s for price of 1 classical
ヨーゼフ・ハイドン(1732–1809) 鍵盤楽器のための8つの初期ソナタ
[Disc 1]
ソナタ第13番 ト長調 Hob.XVI:6(before 1760)
ソナタ第15番 ホ長調 Hob.XVI:13(before 1760’s)
ソナタ第12番 イ長調 Hob.XVI:12(1755?)
ソナタ第19番 ホ短調 Hob.XVI:47bis(1765–67)
ソナタ第32番 ト短調 Hob.XVI:44(1771–73)
[Disc 2]
ソナタ第31番 変イ長調 Hob.XVI:46(1768–69)
ソナタ第30番 ニ長調 Hob.XVI:19(1767)
ソナタ第33番 ハ短調 Hob.XVI:20(1771)
トゥイヤ・ハッキラ(フォルテピアノ)
[楽器 Gottfried Silbermann(1747), restored by Andrea Restelli(Nos.15, 32)、anonymous Viennese-style 5-octave original instrument(1790’s)”Bureau de musique Leipsic”]
録音 2019年1月31日–2月1日、4日–5日 カルヤー教会(カルヤー、フィンランド)
ヨーゼフ・ハイドンが鍵盤楽器のために書いたソナタは、H. C. ロビンズ・ランドンが番号を振った62曲とホーボーケン・カタログで追加された3曲が現存し、当時の記録によるとそのほかに10曲以上が作曲されたと言われます。フィンランドのプレーヤー、トゥイヤ・ハッキラ Tujija Hakkila(1959–)が、彼女の所有する1790年代に製作されたオリジナル楽器で演奏したアルバムでは、ハイドンが40歳になる以前に作曲した8曲が演奏されます。ハッキラは、シベリウス・アカデミーでリーサ・ポホヨラとエーロ・ヘイノネンに学びました。パリのクロード・エルフェの下で20世紀音楽、アメリカのマルコム・ビルソンに古典音楽の演奏を学び、演奏家として活動。ヘルシンキ芸術大学シベリウス・アカデミーのピアノ音楽科の教授、ハメーンリンナのアーリーミュージック・フェスティヴァルの芸術監督などを務めています。フォルテピアノ奏者、ピアニストとして幅広いジャンルに録音を行い、モーツァルトのソナタ全曲、ハイドンのフルート三重奏曲、ベートーヴェンのチェロソナタ全曲(以上、Finlandia)、『リタンデル兄弟の音楽』(Alba ABCD 179)、ブラームスのヴァイオリンソナタ (ODE1315-2)などのアルバムの他、カイヤ・サーリアホの作品集(ODE ß1189-2)にも参加しています。
価格 2,640円(税込価格)(本体価格 2,400円)
『Strings Attached(弦楽器に恋をして)』
Prophone PCD 230 jazz
『Strings Attached(弦楽器に恋をして)』
Dreaming in G(Karin Hammar)*/**/†
Tummen Ur(Karin Hammar)*/**/†
Walking Through(Karin Hammar)*
Strings Attached Part II(Karin Hammar)**
No Strings Attached(Karin Hammar)*
Ribbon Variations(Karin Hammar)*/**/†
Bigger Woman(Karin Hammar)*/**/†
Avenida Atlântica(Karin Hammar)†
Pra Você(Karin Hammar)*
Karin Hammar Fab 4(カーリン・ハンマル・ファブ4)*
カーリン・ハンマル(トロンボーン)
アンドレーアス・フルダキス(ギター)
ニクラス・フェーンクヴィスト(ベース)
フレードリク・ルンドクヴィスト(ドラム)
オリヴィエ・ケル・オウリオ(クロマティック・ハーモニカ)†
The Fab Stringz(ファブ・ストリングズ)**
ハンナ・ヘルゲグレーン(第1ヴァイオリン)
カーリン・リッレンベリ(第2ヴァイオリン)
ジル・ユーハンソン(ヴィオラ)
アンナ・ヴァルグレーン(チェロ)
録音 2020年1月29日–31日 ニレント・スタジオ(コッレレード、スウェーデン)
制作 カーリン・ハンマル
録音 ミーケル・ダールヴィド
ミクシング・マスタリング ラーシュ・ニルソン(ニレント・スタジオ)
スウェーデンのジャズ・トロンボーン奏者カーリン・ハンマル Karin Hammar(1974–)の主宰する「Karin Hammar Fab 4(カーリン・ハンマル・ファブ4)」の『Circles』(PCD175)につづくアルバム。前作と同じアンドレーアス・フルダキス Andreas Hourdakis のギター、ニクラス・フェーンクヴィスト Niklas Fernqvist のベース、フレードリク・ルンドクヴィスト Fredrik Rundqvist のドラムというメンバーに「The Fab Stringz(ファブ・ストリングズ)」と名付けた女性だけの弦楽四重奏団を加え、ハンマルが「弦楽器に恋をして」をイメージしながら作ったナンバーを演奏していきます。このアルバムのアイデアは、カーリンがフランスのハーモニカの名手、オリヴィエ・ケル・オウリと共演した2018年のテル・アヴィヴのツアーから生まれました。クロマティック・ハーモニカ(半音階ハーモニカ)の名手としての人気を誇るオリヴィエ・ケル・オゥリオ Olivier Ker Ourio(1964–)は、インド洋にあるフランス領レユニオン島の出身。パリを本拠に活動し、トゥーツ・シールマンスの後を継ぐプレーヤーと目されています。「クレオール・ジャズ」を代表するプレーヤーのひとりです。アルバムのセッションは、2020年、ラーシュ・ニルソンのニレント・スタジオで行われました。柔らかく温もりをもった空気の漂うアルバムです。
価格 2,365円(税込価格)(本体価格 2,150円)
『母(Moderen)』
Dacapo 6.220648 SACD hybrid (Multichannel/stereo) classical
カール・ニルセン(1865–1931)
劇付随音楽《母(Moderen)》 FS94/CNW65(Op.41)(1920)
エーダム・リース(テノール、吟遊詩人)
パレ・クヌセン(バリトン、愚者)
デンマーク国立ヴォーカルアンサンブル フィルハーモニー合唱団
オーゼンセ交響楽団 アンドレーアス・デルフス(指揮)
録音 2020年1月27–2月1日 オーゼンセ・コンサートホール、カール・ニルセン・ホール(オーゼンセ、デンマーク)
制作・録音 プレーベン・イーヴァン
カール・ニルセンの劇付随音楽『母(Moderen)』は、1920年、第一次世界大戦終結にともなうユラン半島南部のデンマーク復帰を記念する「ガラ」のために作曲されました。この作品の音楽は、フルートとハープの演奏する〈霧が晴れていく(Tågen letter)〉(第2番)、〈わが恋人は琥珀と輝き(Min pige er så lys som rav)〉(第6番)と〈デンマークの歌「いつでも出帆できる船のように」 (Sangen om Danmark “Som en rejselysten flåde”)〉(第22番)が「3つの情景音楽(Scenemusik)」として親しまれ、プロローグの〈行進曲(Marsch)〉、第1場の〈信仰と希望が大事(Tro og håb spiller)〉(第3a番)、第3場の〈鷲が飛ぶ準備ができていたとき(Dengang ørnen var flyveklar)〉(第8番)、第4場の〈前奏曲(Forspil)〉(第10番)〈わが心はかくもつらく(Så bittert var mit hjerte)〉(第11番)と〈子供たちが遊んでいる(Børnene leger)〉(第12番)、第6場の〈死が待ちかまえていたとき(Dengang døden var i vente)〉、第7場の〈前奏曲(Forspil)〉(第19番)と〈エコーの歌(Ekkosang)〉(第20番)といった曲も、デンマークのオーケストラ、室内アンサンブル、合唱団、歌手たちにより演奏されてきました。デンマークのナショナル・レーベル「Dacapo」制作の新しいアルバムは、カール・ニルセンがヘリエ・ローゼ Helge Rode(1870–1937)の台本による「プロローグと7場の劇」のために作曲した音楽の初めての全曲録音です。演奏は、王立図書館の〈霧が晴れていく(Tågen letter)〉(第2番)、〈わが恋人は琥珀と輝き(Min pige er så lys som rav)〉(第6番)と〈デンマークの歌「いつでも出帆できる船のように」 (Sangen om Danmark “Som en rejselysten flåde”)〉(第22番)が「3つの情景音楽(Scenemusik)」として親しまれ、(シリーズ I「舞台音楽」第9巻)(2007)に基づき、第1番〈行進曲(Marsch)〉から第22番〈デンマークの歌〉まで、全曲が26のトラックに収録されています。
オーゼンセ交響楽団とデンマーク国立ヴォーカルアンサンブルによる演奏。壮大な〈デンマークの歌〉は約60人のアンサンブル「フィルハーモニー合唱団」が加わって演奏されます。指揮者のアンドレーアス・デルフス Andreas Delft は、旧デンマーク領のシュレースヴィヒ出身。2001年から2004年までミネソタのセントポール室内管弦楽団の音楽監督を務め、デンマーク国立交響楽団、オーフス交響楽団、南ユラン交響楽団といったデンマークのオーケストラに客演してきました。
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円)
『Exclusive(独占)』
Footprint Records FRCD 105 contemporary/classical
ソフィア・セーデルベリ(1972–)
水浴場のイントロ(Badhusintro)
伝承曲(ソフィア・セーデルベリ(1972–)編曲)
リム・リム・リーマ(Limu, Limu, Lima)
ホルガローテン(Hårgalåten)
ジョン・ニュートン(1725–1807)/山田耕筰(1886–1965)(ソフィア・セーデルベリ(1972–)編曲)
アメージング・グレース(Amazing Grace)/赤とんぼ(Akatonbo)
ソフィア・セーデルベリ(1972–)
セレナード(Serenad)
(ヤーコブ・アクセル・ユーセフソン(1818–1880)の歌による)
ペーター・ブルーン(1968–)
平和(Peace)(ジェラード・マンリー・ホプキンズ(1844–1889)/
ウィルフレッド・オーウェン(1893–1918)の詩)
クリスチャン・エングクヴィスト(1979–)
It Is So Peaceful Here Now(ここは今とても穏やかだ)
ヘンリク・ダールグレーン(1991–)
Son to Mother(息子から母へ)(マヤ・アンジェロウ(1928–2014)の詩)
エミール・フレードベリ(1993–)
Close to Home(家に近いところ)
(エレノア・ルーズベルト(1884–1962)のスピーチから)
ソフィア・セーデルベリ(1972–)
キリエ(Kyrie)(グレゴリオ聖歌の主題による)
アヴェ・マリア(Ave Maria)(グレゴリオ聖歌の主題による)
クヌート・ニューステット(1915–2014)
サルヴェ・レジナ(Salve Regina)
ソフィア・セーデルベリ(1972–)
この世はうるわし(Härlig är jorden)
(べアンハート・セヴェリン・インゲマン(1789–1862)、
セシリア・ボート・ホルムベリ(1857–1920)、
ノア・シアトル(c.1786–1866)、『スウェーデン葬送ミサ』から)
スヴァンホルム・シンガーズ
ソフィア・セーデルベリ(指揮)
録音 2018年6月8日–10日 マーシュヴィンスホルム教会(マーシュヴィンスホルム、スコーネ、スウェーデン)
制作・録音 ペール・ショーステーン
「スヴァンホルム・シンガーズ Svanholm Singers」は、テノール歌手セト・スヴァンホルムの子、エヴァ・ブーリーン Eva Bohlin により、1998年、大学都市ルンドに創設されました。2001年からはソフィア・セーデルベリ(セーデルベリ・エーベルハード) Sofia Söderberg(1972–)が指揮者を務め、国内のコンサートと日本を含む海外ツアーを重ね、ウプサラのオルフェイ・ドレンガル(OD)とともにスウェーデンと世界を代表する男声合唱団として知られるようになりました。
2018年、シンガーズの20周年に際して録音されたアルバム第7作『Exclusive』。ルンド市にある水浴場が改装され、再開イベントのためにセーデルベリが作曲した《水浴場のイントロ》。彼女の編曲で歌われるスウェーデン2つの伝承曲、《アメージング・グレース》と《赤とんぼ》。デンマークのペーター・ブルーン Peter Bruun が、コペンハーゲンで開催された「合唱音楽世界シンポジウム」のため委嘱を受け、ジェラード・マンリー・ホプキンズ Gerard Manley Hopkins の『Peace(平和)』とウィルフレッド・オーウェン Wilfred Owen の『The Next War(次の戦争)』をテクストにして作曲した《平和》。スウェーデンのクリスチャン・エングクヴィスト Christian Engquist が個人的体験を詩に書き作曲した、シンガーズ主宰の作曲コンペティションのための《ここは今とても穏やかだ》。エレノア・ルーズベルトの「世界人権宣言」のスピーチをテクストにした、シンガーズのテノール、エミール・フレードベリ Emil Fredberg の《家に近いところ》。シンガーズのヘンリク・ダールグレーン Henrik Dahlgren が、「世界人権宣言」から70年の記念コンサートのために団から委嘱され、マヤ・アンジェロウ Maya Angelou の詩に作曲した《息子から母へ》。ノルウェーのニューステット Knut Nystedt が、スヴァンホルム・シンガーズと創設者エヴァ・ブーリーンに献呈した《サルヴェ・レジナ》。スカンディナヴィアの主にクリスマスのシーズンに歌われる B. S. インゲマンの詩による歌にいくつかの詩を付け加え、大きく展開させた《この世はうるわし》。ユニークな個性とカリスマ性のあるスタイルで知られるシンガーズの「独占」する曲を「スナップショット」のように並べた構成のプログラムです。
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円)
『スロッテル(Slåtter)』
Simax PSC 1287 classical/traditional
エドヴァルド・グリーグ(1843–1907)
スロッテル(Slåtter) Op.72(ピアノのための)
イングフリ・ブライエ・ニューフース(ピアノ) [Piano: Steinway early model B grand]
クヌート・ダーレ(1834–1921)の伝える(スヴェン・ニューフース 採譜)
ノルウェーの農民の踊り(Slåtter)
オースヒル・ブライエ・ニューフース(ハリングフェレ)
クヌート・ダーレ(1834–1921)
ミュラルグーテン(粉挽きの若者)による婚礼行列の曲
(Bruremarsj etter Myllarguten)
クヌート・ダーレ(ハリングフェレ)
[録音 1912年(ワックスシリンダー録音)]
録音 2007年1月12日–14日 ヴィラ・トロールハウゲン(ベルゲン、ノルウェー)
制作 トニー・ハリソン
録音 ジェフ・マイルズ
「風変わりで、強情で、心こまやかなこれらの舞曲はきわめて特殊なもので、世界中を探しても、類例を見いだすことは至難のわざであろう……ひとつひとつのスロットは、民話や、伝説や、個々の人物や、フィドル弾きと結びつけられるようになった。これらの旋律や曲には空想や神秘の色合が漂っている」(アイナル・ステーン=ノクレベルグ・著、大束省三・訳「グリーグ全ピアノ作品演奏解釈」音楽之友社 p.423)
ノルウェーの人たちが何百年もかけて伝承してきた農民の踊り、スロッテル。1901年、ヴァイオリニストとしても知られた作曲家、ヨハン・ハルヴォシェンはグリーグの依頼を受け、フィドル弾きのクヌート・ダーレ Knut Dahle(1834–1921)の演奏から採譜。それに基づいてエドヴァルド・グリーグ Edvard Grieg(1843–1907)が、17曲のピアノ曲集《スロッテル》を作曲しました。「それまでにグリーグが書いたすべては、この作品のための準備であり、道しるべであったかのようだ」(同著 p.424)と、ノルウェーのピアニスト、アイナル・ステーン=ノクレベルグ Einar Steen–Nøkleberg(1944–)は語り、大胆な和声をもつ「ひとつの組曲」を「ノルウェーの音楽における最大の民族叙事詩」と讃えています。
ノルウェー、レーロース生まれのニューフース姉妹が、グリーグの《スロッテル》と「ハリングフェレによる原曲」を合わせて録音したアルバム。同じような企画のアルバムは、ステーン=ノクレベルクとクヌート・ビューエン Knut Buen(1948–)による1988年の録音が、Simax Records からリリースされていました(PSC 1040)。ふたつのアルバムには、大きな違いがふたつあります。ひとつは、前の録音が、それぞれの「踊り」を一曲ごとに「原曲」「グリーグの曲」の順で交互に収めていたのに対し、新しい録音は、グリーグの《スロッテル》の全17曲を弾いた後、「オリジナル」の17曲を演奏するというスタイルをとっています。さらに、前のアルバムのフィドル奏者クヌート・ビューエンが、クヌート・ダーレ Kunt Dahle の伝える《ノルウェーの農民の踊り》を彼の孫のヨハンネス・ダーレとグンナル・ダーレから習ったままに弾いていたのに対し、新録音のオースヒル・ブライエ・ニューフースは、彼女の父、民俗音楽学者のスヴェン・ニューフース Sven Nyhus が、音符、装飾音、弓づかいの正確さを期すため、クヌート・ダーレの1912年のワックスシリンダー録音とヨハンネスの1953年の録音から新たに採譜した版で演奏しています。同時に、グリーグの《スロッテル》も、ニューフースの新版に基づいて「校訂」された「新ピアノ版」による演奏です。
イングフリ・ブライエ・ニューフース Ingfrid Breie Nyhus(1978–)は、ノルウェー音楽大学、シベリウス・アカデミー、ハノーファー音楽劇場大学で学びました。グリーグ没後100年の2007年には Grieg Force ミュージシャンのひとりとして活躍、ノルウェー・ソリスト賞も受賞しました。妹のオースヒル・ブライエ・ニューフース Åshild Breie Nyhus(1975–)は、ハリングフェレ奏者として活動する他、オスロ・フィルハーモニック管弦楽団でヴィオラを弾いています。
録音セッションは、トロールハウゲンのグリーグ・ヴィラで行われました。グリーグ自身が使っていた Steinway Piano による演奏です。
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)
『33+1』
Simax PSC 1350 classical/contemporary
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770–1827)
ディアベッリのワルツの主題による33の変奏曲 ハ長調 Op.120
ラーシュ・ペッテル・ハーゲン(1975–)
ディアベッリ・カデンツァ(Diabelli Cadenza)(ピアノと EBow のための)
イングリ・アンスネス(ピアノ)
[Piano: Steinway Mod. D-274 No.77.141, 1893 New York(Res. 2010 S&S, Hamburg)]
録音 2015年8月3日–4日、6日–7日 ソフィエンベルグ教会(オスロ、ノルウェー)
制作 エーリク・ガルド・アムンセン
録音 アウドゥン・ストリーペ
イングリ・アンスネス Ingrid Andsnes はノルウェーのピアニスト。1978年、西海岸のローガラン県、カルモイの生まれ。ロンドンのギルドホール音楽演劇学校のジョアン・ハヴィル、オスロのバラット=ドゥーエ音楽学校のイジー・フリンカに学びました。2003年にチェコで開催されたフィルクスニー・コンペティションでヤナーチェク賞を受賞。ソリストとしての活動に加え、ソールヴェイ・クリンゲルボルン、アルヴェ・テレフセン、ホーヴァル・ギムセ、ノルウェー・ソリスト合唱団をはじめとする音楽家たちと共演してきました。2010年にはテレマルク室内管弦楽団のアルバムでモーツァルトのピアノ協奏曲第12番(Fabra FABCD-07)を弾き、飾らない、チャーミングな音楽は、国内そして海外の聴衆と批評家から好感をもって迎えられました。
ソロアルバム第1作『33+1』のプログラムに選んだ《ディアベッリ変奏曲》は、かつて、病気で休んでいた彼女が、ピアニストとして復帰するにあたり、「しばらく使っていなかった筋肉のコントロールと力と愛を取り戻すため」に弾いた作品です。最後のピアノソナタとなる第32番を書いた後にベートーヴェンが完成させた「33」の変奏曲。「《ディアベッリ変奏曲》は、必要としているまさにその時に『私に投げつけられた』に違いないと思っています。私に必要だったのは、技術面で大きな挑戦を求め、力強さと忍耐と音楽に没頭することを要求する音楽でした……情熱、深い感情の動き、脆弱さ、そして、もっとも重要なもの『力』を、私は感じたいと思いました」。
2012年、ピアノの伝統的な役割を越えた活動に興味をもつようになっていた彼女は、アメリカの劇作家モイセス・カウフマンがオスロのノルウェー劇場で上演した『33の変奏(33 Variations)』のプロダクションでこの曲を演奏し、今では重要なレパートリーのひとつにしています。
彼女は、《ディアベッリ変奏曲》のこの録音で、新しい試みを行いました。「フーガ」の第32変奏が終わり、最後の「テンポ・ディ・メヌエット・モデラート」に移るところ、ベートーヴェンの書いた「ポコ・アダージョ」の経過句に代わり、ラーシュ・ペッテル・ハーゲン Lars Petter Hagen が作曲した「ピアノとイフェクター “EBow”のため」の4分46秒の「カデンツァ」が演奏されます。ハーゲンは、彼女から依頼を受け、大きな不安を抱きながらも嬉しく思ったといいます。「ベートーヴェンの《ディアベッリ変奏曲》に足すものは、何もない。何かを加えると、足し算のつもりが引き算になる。ここで、割りこむことにより、私はベートーヴェンに制限をかけることを試みた。彼の音楽に新しい枠組み、ないし『影』を与える。それを私はやりたかった」。
録音セッションは、2015年8月、オスロのソフィエンベルグ教会で行われました。ピアノは、2010年に修復された1893年製のスタインウェイ。Simax のチーフプロデューサー、アムンセン Erik Gard Amundsen が制作にあたっています。
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)
『ギターのためのトランスクリプション』
Alba ABCD 244 classical
C・P・E・バッハ(1714–1788)(ペトリ・クメラ(1974–)編曲)
ソナタ 嬰ハ短調 Wq55/3(原曲 ロ短調)
6つの特徴的な小品(6 Petites Pièces)
優柔不断な人(L'Irrésolue) Wq117/31
日々の移ろい(La Journalière) Wq117/32
恋煩い(Les Langueurs tendres) Wq117/30
気まぐれ(La Capricieuse) Wq117/33
カロリーヌ(La Caroline) Wq117/39
ボルヒヴァルト(ポロネーズ)(La Borchward) Wq117/17
ソナタ ホ短調 Wq54/3(原曲 ニ短調)
アダージョ(ソナタ ホ長調 Wq48/3 から)
ソナタ ホ長調 Wq62/3(原曲 ニ長調)
ロンド ロ長調 Wq58/1(原曲 イ長調)
ペトリ・クメラ(ギター)
録音 2006年11月29日–12月1日 クーサーホール(クーサンコスキ、フィンランド)
制作 ラウラ・ヘイキンヘイモ
録音 マッティ・ヘイノネン
フィンランドのギタリスト、ペトリ・クメラ Petri Kumela(1974–)は、ヘルシンキ音楽院でフアン・アントニオ・ムロに師事。ニュルンベルク・アウグスブルク音楽大学のフランツ・ハラースのクラスで学び、2000年、最優等で卒業、スカンディナヴィア・ギターフェスティヴァルで第1位を獲得しました。ノルドグレンのギター作品を集めた『魅せられた音(Spellbound Tones)』(ABCD 218)に次ぐアルバム。C・P・E・バッハのキーボード曲をクメラ自身がギターのために編曲して演奏しています。このアルバムでクメラが弾いている楽器は Hermann Hauser I & II(ヘルマン・ハウザー I & II)。反応のよさ、「歌」、温かい音色、ピアニッシモの繊細な響き、音の多彩なニュアンスと、クメラが「特別な楽器」と呼ぶギターです。
価格 2,530円(税込価格)(本体価格 2,300円)
『Bad News from the Desert(砂漠から届いた悪い知らせ)』
Aurora ACD 5053 contemporary/classical
ジェイムズ・クラパトン(1968–)
死の歌と踊り(Songs and Dances of Death)(2001)
クヌート・ヴォーゲ(1961–)
Breaking Another Wall(壁をもうひとつ破壊)(2002)
(クラリネットとブラスバンドのための協奏曲)
ヨン・オイヴィン・ネス(1968–)
Bad News from the Desert(Deep Pain of the Dung Beetle)
(砂漠から届いた悪い知らせ(フンコロガシの深い痛み))
ロルフ・ボルク(クラリネット) ノルウェー軍西部音楽隊
ペーテル・シルヴァイ(指揮)
録音 2004年11月 NRK Hordaland Studio(ベルゲン、ノルウェー)
制作 トシュタイン・オーゴール=ニルセン
録音 グンナル・ヘルライフ・ニルセン
ベルゲンのノルウェー軍西部音楽隊(ノルウェー海軍音楽隊) Forsvarets musikkorps vestlandet(NABB)は、創立の歴史を1792年までさかのぼる、ノルウェーを代表する吹奏楽団のひとつです。毎年、5月から6月にかけて開催されるベルゲン国際フェスティヴァルでは期間中、街の広場でパレードを行い、フェスティヴァルの気分を盛り上げます。
『Bad News from the Desert(砂漠から届いた悪い知らせ)』は、ノルウェー軍西部音楽隊がベルゲンゆかりの作曲者に委嘱した作品を演奏したアルバムです。クヌート・ヴォーゲ Knut Vaage(1961–)は、ベルゲン在住。ヨン・フォッセの戯曲に基づくオペラ《だれか、来る(Nokon kjem til på komme)》(ACD 5043) を初めとする作品で知られるようになりました。ロルフ・ヴァリーンに次ぐ世代のチャンピオンのひとりです。
ヨン・オイヴィン・ネス Jon Øivind Ness(1968–)。《Deep Pain of the Dung Beetle(フンコロガシの深い痛み)》 の副題をもつ《Bad News from the Desert(砂漠から届いた悪い知らせ)》は、「衝突」がテーマのひとつ。アメリカの対外政策によるフラストレーションが背景にあるといいます。
ジェイムズ・クラパトン James Clapperton(1968–)はスコットランド、アバディーン生まれ。ノルウェーとの関係が深く、1998年から2000年にかけてベルゲンのグリーグ・アカデミーのコンポーザー・イン・レジデンスを務めました。彼の《死の歌と踊り》でも「衝突」ないし「対立」が意識され、ムソルグスキーの歌曲集にちなんだ曲名がつけられています。
価格 2,750円(税込価格)(本体価格 2,500円)
『The Thrill of Loving You』
Stunt Records STUCD 20032 jazz
『The Thrill of Loving You』
Blackbird(H. Sacher/Nina Simome)
The Thrill Is Gone(Ray Henderson/Lew Brown)
The Touch of Your Lips(Ray Noble)
Take Five/I New York(Paul Desmond/Beppe Wolgers)
Gloomy Sunday(Rezső Seress/Billie Holiday)
Afro Blue(Oscar Brown/Mongo Santamaria)
Born to Be Blue(Mel Tormé/Robert Wells)
Ne me quitte pas/Lämna inte mig(Jacques Brel/Julia Werup)
ユリア・ヴェールプ(ヴォーカル)
スヴェン=エーリク・ルンデクヴィスト(ピアノ)
ヨニー・オーマン(ベース)
トマス・ブラクマン(ドラム)
録音 2019年8月 Village Studios(コペンハーゲン)
制作 トマス・ブラクマン
ユリア・ヴェールプ Julia Werup は、1987年、スウェーデンのマルメ生まれ。ミュージシャン、作家、詩人、舞台芸術家、脚本家として活躍した父、ジャック・ヴェールプ Jacques Werup(1945–2016)の下で育ち、20代の初めにコペンハーゲンに移りました。詩人として活動、独学で歌を身につけ、聴けば彼女とわかる、特別な声と語り口をもった歌手として活動を始めました。彼女がジャズ・ヴォーカリストとしてデビューするアルバム『The Thrill of Loving You』(あなたを愛することのスリル)。ベーシストのヨニー・オーマン Johnny Åman、ピアニストのスヴェン=エーリク・ルンデクヴィスト Sven-Erik Lundequist、ドラマーのトマス・ブラクマン Thomas Blachman が共演、ブラクマンとふたりで会った時にふたりの間に散った「ロマンティックな火花」がきっかけとなってプロジェクトが進められました。「わたしの気に入りの歌とわたし自身を映していると感じる歌詞をもった」8曲のプログラム。ニーナ・シモンの《Blackbird》、ダイナ・ショアが1947年に録音した《The Thrill Is Gone》、チェット・ベイカーのレコードで知られる《The Touch of Your Lips》、デイヴ・ブルーベックのアルバム『Time Out』に収録された《Take Five》をモニカ・セッテルルンドがべぺ・ヴォルゲシュのスウェーデン語歌詞で歌った《I New York》(ニューヨークで)、ハンガリーのレジュー・シェレシュが作曲、ビリー・ホリデイの歌でヒットした《Gloomy Sunday》(暗い日曜日)、モンゴ・サンタマリアの《Afro Blue》、メル・トーメの《Born to Be Blue》。ジャック・ブレルの《Ne me quitte pas》(行かないで)は、ユリアの書いたスウェーデン語の歌詞で歌われます。
価格 2,585円(税込価格)(本体価格 2,350円)
『ハーヴァードの作曲家たち』
BIS SACD 1264 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical
『ハーヴァードの作曲家たち』
ウォルター・ピストン(1894–1976)
弦楽四重奏曲第1番(1933)
リーアン・カーシュナー(1919–2009)
弦楽四重奏曲第2番(1958)
アール・キム(1920–1998)
3つのフランス語歌曲(Three Poems in French)(1989)
(ソプラノと弦楽四重奏のための)
ひそやかに(En sourdine)(ポール・ヴェルレーヌの詩)
瞑想(Recueillement)(シャルル・ボードレールの詩)
センチメンタルな対話(Colloque sentimental)
(ポール・ヴェルレーヌの詩)
バーナード・ランズ(1934–)
弦楽四重奏曲第2番(1994)
マリオ・ダヴィドフスキー(1934–2019)
弦楽四重奏曲第5番《Dank an Opus 132(作品132に感謝)》(1998)
メンデルスゾーン弦楽四重奏団
ミリアム・フリード(第1ヴァイオリン)
ニコラス・マン(第2ヴァイオリン)
ウーリク・アイケナウアー(ヴィオラ)
マーシー・ローゼン(チェロ)
録音 2001年5月 レンナ教会(ノルテリエ、スウェーデン)
制作・録音 ハンス・キプファー
マサチューセッツ州ケンブリッジ、ハーヴァード大学の音楽学部は、作曲家ジョン・ノウルズ・ペイン John Knoweles Paine(1839–1906)が創設し、彼が、アメリカの大学では初めての音楽の教授を務めました。この学部で学んだ著名な作曲家のひとり、ウォルター・ピストン Walter Piston は、ナディア・ブーランジェの下でストラヴィンスキーの新古典主義を吸収し、およそ35年間、母校で教授として教えました。エリオット・カーター、アーヴィング・ファイン、ハロルド・シャピーロ、レナード・バーンスタインたちが彼に学び、彼らは、その後、それぞれのやり方でアメリカの音楽文化に貢献しました。
ミリアム・フリード Miriam Fried がリーダーのメンデルスゾーン弦楽四重奏団が録音した『ハーヴァードの作曲家たち』では、ピストンと彼の後任として教授を務めた作曲家たちの作品が演奏されます。ピストンの《弦楽四重奏曲第1番》は、彼が作曲した5曲の弦楽四重奏曲のなかでも古典的、簡潔に書かれた3楽章の作品です。リーアン・カーシュナー Leon Kirchner の《弦楽四重奏曲第2番》は、ミシガン大学の委嘱で作曲され、ニューヨーク批評家協会賞を受賞しました。「美しく、澄んだ作品を書きたかった」と作曲者が語ったという「モデラート」「アダージョ」「アレグロ・モルト」の3楽章で構成された作品です。アール・キム Earl Kim の《3つのフランス語歌曲》は、ヴェルレーヌとボードレールの詩の「フランス語」の響きを音楽と結びつけることを試みたという「ソプラノと弦楽四重奏のため」の作品。バーナード・ランズ Bernard Rands の《弦楽四重奏曲第2番》は、メンデルスゾーン弦楽四重奏団のために作曲された「小さな(little)」作品です。マリオ・ダヴィドフスキー Mario Davidovsky は、「力強い作品は、われわれの記憶に刻まれ、その印象が創造に強い影響を及ぼしつづける」と語り、《Dank an Opus 132(作品132に感謝》の副題をもつ《弦楽四重奏曲第5番》では、ベートーヴェンの《弦楽四重奏曲第15番 イ短調》の「モルト・アダージョ」の冒頭を「音程素材」として使っています。この作品もメンデルスゾーン弦楽四重奏団のために作曲されました。
ハーヴァード大学やマット・デイモン主演の映画『グッド・ウィル・ハンティング』のマサチューセッツ工科大学(MIT)のキャンパスのあるケンブリッジを訪れたとき、チャールズ川を隔てたボストンとは違った空気が漂っているように感じました。大学都市の「アカデミック」な空気とでもいうのか。ハーヴァードスクエアのブックストアも、ボストンのダウンタウンにある書店とは違った雰囲気が漂っています。このアルバムを聴いていると、あの街の空気を吸っている気分になります。
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)
『天使たちの声(Voices of Angels)』
BIS SACD 2344 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical
ブレット・ディーン(1961–)
天使たちの声(Voices of Angels)(1996)*
(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバスとピアノのための)
ソフィヤ・グバイドゥーリナ(1931–)
天使(Ein Engel)(1994)(メゾソプラノとコントラバスのための)
セルゲイ・ラフマニノフ(1873–1943)
音楽(Muzyka) Op.34 no.8(メゾソプラノとピアノのための)
ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685–1750)
コラール前奏曲「われは汝の御座の前に進む
(Vor deinen Thron tret' ich hiermit)」 BWV.668
(ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとコントラバスのための編曲)
ソフィヤ・グバイドゥーリナ(1931–)
バッハのコラール「われは汝の御座の前に進む」による瞑想曲
(Meditation über den Choral 'Vor deinen Thron tret' ich hiermit')(1993)
(チェンバロ、2つのヴァイオリン、ヴィオラ、チェロとコントラバスのための)**
リヒャルト・ワーグナー(1813–1883)
天使(Der Engel)(『ヴェーゼンドンク歌曲集』 WWW.91 no.1)
(メゾソプラノとピアノのための)
セルゲイ・ラフマニノフ(1873–1943)
ここはすばらしい場所(Zdes' khorosho) Op.21 no.7
(メゾソプラノとピアノのための)
アルフレート・シュニトケ(1934–1998)
賛歌 第2番(Hymn II)(1974)(チェロとコントラバスのための)
ストックホルム・シンドローム・アンサンブル
マーリン・ブルーマン(ヴァイオリン)
マーリン・ヴィリアム・オールソン(ヴィオラ、ヴァイオリン **)
ヨハンネス・ロスタモ(チェロ)
リック・ストーティン(コントラバス)
サイモン・クロフォード=フィリップス(ピアノ、チェンバロ)
アンドレイ・パワー(ヴァイオリン)*
ローレンス・パワー(ヴィオラ)*/**
クリスティアンヌ・ストーティン(メゾソプラノ)
録音 2017年9月 ベールヴァルドホール(ストックホルム)(ディーン、グバイドゥーリナ:瞑想曲)、2018年10月 スウェーデン放送第2スタジオ(ストックホルム)(バッハ、シュニトケ、グバイドゥーリナ:天使)、2019年6月 ヴェステロース・コンサートホール(ヴェステロース、スウェーデン)(ラフマニノフ、ワーグナー)
制作・録音 イェンス・ブラウン
1973年8月、スウェーデンのストックホルムで銀行の従業員たちを人質に取った立て籠り事件が起きました。このとき、人質たちが犯人に協力する行動を取り、解放後も犯人をかばう証言をしたことから、監禁事件などの被害者が、犯人と長時間一緒にいることにより、犯人に対して連帯感や好意的な感情を抱くことが「ストックホルム・シンドローム(ストックホルム症候群)」と呼ばれるようになりました。この用語をグループ名とする「ストックホルム・シンドローム・アンサンブル Stockholm Syndrome Ensemble」は、2012年、啓蒙的なプログラムのコンサートによって聴衆の音楽体験を深めることをめざして創設され、ストックホルム・コンサートホールでコンサート・シリーズを行っています。メンバーは、スウェーデン放送交響楽団のコンサートマスター、マーリン・ブルーマン Malin Broman(1975–)。マルメ交響楽団の第2ヴァイオリンのセクションリーダー、マーリン・ヴィリアム・オールソン Malin William-Olsson。フィンランド出身のヨハンネス・ロスタモ Johannes Rostamo(1980–)は、王立ストックホルム・フィルハーモニック首席チェロ奏者。スウェーデン放送交響楽団首席コントラバス奏者のリック・ストーティン Rick Stotijn(1982–)はオランダの音楽家です。ピアノのサイモン・クロフォード=フィリップス Simon Crawford-Phillips は、ブルーマンたちと一緒にクングスバッカ・ピアノ三重奏団(BIS SA 2437)を結成したイギリスのピアニスト。彼は指揮者としても活動し、ヴェステロース・シンフォニエッタの首席指揮者、ストックホルム・シンドローム・アンサンブルがレジデント・アンサンブルのチェンジ音楽祭 Change Music Festival の芸術監督を務めています。
ストックホルム・シンドローム・アンサンブルの初めての BIS Records 録音。「天使」をキーワードにした過去と現在の8つの曲を演奏しています。ブレット・ディーン Brett Dean の《天使たちの声》は、〈呼び起こし(Evocation)〉〈異なる領域(Different Realms)〉の2曲で構成された作品です。「天使たちが活動するのは生者の領域なのか死者の領域なのかは、多くの場合、語れない(とされる)。ある永遠の流れが、古今、絶えず両方の領域をとてつもない速さで動き、ふたつの領域の天使たちの声をかき消してゆく」(ブレット・ディーン《天使たちの声》の標語)。1996年、ディーンがヴィオラ奏者として所属していたベルリン・フィルハーモニーのメンバーにピアニストのイモージェン・クーパーを加えて初演された作品です。このアルバムの録音にゲスト参加したアンドレイ・パワー Andrej Power(1988–)は、ストックホルム・フィルハーモニック首席コンサートマスターを務めるスウェーデンのヴァイオリニスト。ローレンス・パワー Lawrence Power(1977–)は、イギリスのヴィオラ奏者です。
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)
『マイケル・コリンズ』
BIS SACD 2367 SACD hybrid (5.0 surround/stereo) classical
レイフ・ヴォーン・ウィリアムズ(1872–1958)
交響曲第5番 ニ長調(1938–43)
ジェラルド・フィンジ(1901–1956)
クラリネットと弦楽のための協奏曲 Op.31
フィルハーモニア管弦楽団
マイケル・コリンズ(クラリネット、指揮)
録音 2019年7月 ワトフォード・コロッセウム(ワトフォード、イングランド)
制作 ロバート・サフ
録音 マイク・ハッチ
イギリスのクラリネット奏者、マイケル・コリンズ Michael Collins がフィルハーモニア管弦楽団と共演してヴォーン・ウィリアムズとフィンジの作品を録音したアルバムが BIS レーベルからリリースされます。コリンズは、8歳からクラリネットを始め、16歳のとき、BBC Young Musician of the Year を受賞しました。ジュゼッペ・シノーポリの指揮するフィルハーモニア管弦楽団に首席クラリネット奏者として所属、ミネソタ管弦楽団やBBC交響楽団などのオーケストラにソリストとして客演しました。クラリネットのレパートリーを広げることに意欲を示し、ジョン・アダムズ、エリオット・カーター、ブレット・ディーン、マーク=アントニー・ターネッジの作品を初演。指揮者としての活動も初め、2010年から2018年までシティ・オブ・ロンドン・シンフォニアの首席指揮者を務めました。
ヴォーン・ウィリアムズの交響曲第5番は、第一次世界大戦の戦場となったフランスの野原に思いを馳せた《田園交響曲》(第3番)(1916–21)と激しい怒りにみちたた第4番(1931–34)の後、1938年から1943年にかけて作曲されました。《タリスの主題による幻想曲》や《舞いあがる雲雀(揚げひばり)》を書いた「自然の空想家、コンスタブル、ターナーあるいはサミュエル・パーマーの精神による音楽風景画の作家」が、田園詩のトーンを残しつつ、新たな段階に入ったことを示した一作とみなされています。歌劇《天路歴程(The Pilgrim's Progress)》の素材も使った、〈前奏曲(Preludio)〉〈スケルツォ(Scherzo)〉〈ロマンツァ(Romanza)〉〈パッサカリア(Passacaglia)〉の4楽章の作品です。1943年、ロンドンで初演。当時、多くのイギリスの作曲家たちが交響的音楽の有機的論理性を具体化した作曲家とみなしたシベリウスに作品が(事前の了承なく)献呈されました。
ヴォーン・ウィリアムズの友人で彼の音楽に心酔した音楽家のひとり、ジェラルド・フィンジは、黙想することからインスピレーションを得た室内楽曲や歌曲の作家として親しまれています。《クラリネット協奏曲》は、彼が大がかりな器楽作品に取り組むことに自信を持つようになっていた1948年から1949年にかけて書かれました。「抒情的な様式で(in modo lirico)」のアレグロの第1楽章、アダージョの第2楽章、そして〈ロンド〉の終楽章。「ラプソディックな歌」の音楽は、イギリスを代表するクラリネット奏者のフレデリック・サーストンにより初演され、各国のプレーヤーから愛される作品になりました。
価格 2,915円(税込価格)(本体価格 2,650円)
『オーレ・ブル - 人生の諸段階(Stages of Life)』
2L 2L 159SABD Pure Audio Blu-ray + SACD hybrid (5.1 surround/stereo) classical
オーレ・ブル(1810–1880)
ラルゴ・ポザート・エ・ロンド・カプリッチョーソ
(Largo posato e Rondò capriccioso)(1841)
(ヴァイオリンと管弦楽のための)
ノルウェーの山々(Norges Fjelde)(ヴァイオリンと管弦楽のための)
(ヴォルフガング・プラッゲ(1960–)補筆完成)
『リリー・デール』による幻想曲(Fantasy on "Lilly Dale")(1872)
(ヴァイオリンとピアノのための)
リオのヴィルスペル(Vilspel i Lio)(1842 rev.1860)
(ヴァイオリンと管弦楽のための)
最後のロマンス(Siste romanse)(1872)
(ヴァイオリンとピアノのための)
アンナル・フォレソー(ヴァイオリン)
ノルウェー放送管弦楽団 キム・ウンサン(指揮)
ヴォルフガング・プラッゲ(ピアノ)
[楽器 Violin: Enrico Rocca, 1870s/Piano: C. Bechstein Concert C234]
録音 2018年6月 ヤール教会(バールム、ノルウェー)
制作・バランスエンジニアリング モッテン・リンドベルグ
制作補 ヴォルフガング・プラッゲ
[DXD(24bit/352.8kHz)録音]
[Disc 1: SACD hybrid(5.1 surround DSD/2.0 stereo DSD), MQA CD]
[Disc 2: Blu-ray: 5.1 DTS-HD MA(24bit/192kHz), 7.1.4. Auro-3D(96kHz), 7.1.4. Dolby Atmos(48kHz), 2.0 LPCM (24bit/192kHz), mShuttle: MQA + FLAC + MP3 Region ABC]
ノルウェーのレーベル 2L で制作と録音を担当するモッテン・リンドベルグ Morten Lindberg は、2020年、アルバム『LUX』(2L150SABD)で第62回グラミー賞「最優秀イマーシブオーディオ・アルバム」を受賞しました。「クラシカル部門最優秀プロデューサー」をはじめとする部門に2006年から36回ノミネートされた末の受賞です。
受賞後の初めてのアルバムは、ヴァイオリン・ヴィルトゥオーゾとして国際的にも人気の高かったオーレ・ブル Ole Bull(1810–1880)の作品集です。ノルウェーのヴァイオリニスト、アンナル・フォレソー Annar Follesø(1972–)がブルの生誕200年にあたる2010年にリリースした『ヴァイオリンと管弦楽のための作品集』(2L067SABD)につづくアルバムとして制作され、ブルがキャリアのさまざまな時代に作曲した、彼しか演奏したことのない5曲によるプログラムが組まれています。
《ラルゴ・ポザート・エ・ロンド・カプリッチョーソ》は、ニ短調の暗い和音に始まりユモレスクに終わる、「豊かな宗教心のある音楽」と作曲家のハルフダン・シェルルフが評した作品です。作曲者のオリジナルに基づきニコライ・リーセがオーケストレーションを施した、不完全な個所のある手稿譜による演奏。欠落したヴァイオリンのパッセージとカデンツァをフォレソーが作曲して演奏しています。
《ノルウェーの山々》は、ノルウェーの舞曲とメロディによる「ポプリ」。完全なスコアが残されていないため、ヴォルフガング・プラッゲが「ポルスカ」や民謡を加え、ベルゲンのアンセム《ベルゲンシアーナ》で閉じるよう、補筆完成しています。ノルウェーの自然を音で描写したもうひとつの作品《リオのヴィルスペル》は、フォーク・ミュージシャンが楽譜を見ずに想像や記憶を頼りに演奏する言葉「ヴィルスペル」を曲名に使っています。ブルの演奏をクリスチャニア(現、オスロ)で聴いたシェルルフは、この曲を「山々の春の歌」と呼びました。共演のピアニスト、作曲家ヴォルフガング・プラッゲ Wolfgang Plagge が再構築した版による演奏です。
《『リリー・デール』による幻想曲》は、アメリカの H.S. トンプソンが作詞、作曲したバラードを素材に作曲されました。「穏やかな、静かな夜だった 月の青白い光が 丘と谷を柔らかく照らし……」。ノルウェーでは《神の愛(Kjærligheten fra Gud)》の曲名で親しまれ、結婚式の賛歌としてしばしば使われています。《最後のロマンス》は、ブルがビョルンスチェーネ・ビョルンソンに献呈した「合唱(コラール)編曲」の手稿譜を基にプラッゲがヴァイオリンとピアノの曲にアレンジした作品です。
ノルウェー放送管弦楽団の共演。ソウルの延世大学とシュトゥットガルト音楽演劇芸術大学で学び、2021年–2022年のシーズンからサンフランシスコ・オペラの音楽監督に就任するキム・ウンサン Kim Eun-Sun(1980–)指揮。オスロに近いバールムのヤール教会でセッション録音され、アルバム・タイトルになったドイツ・ロマンティシズムの画家フリードリヒの『人生の諸段階』がアートワークに使われました。
価格 4,675円(税込価格)(本体価格 4,250円)
Pure Audio Blu-ray ディスクと SACD ハイブリッドディスクをセットにしたアルバムです。Pure Audio Blu–ray ディスクにはインデックスを除き映像は収録されていません。SACD ハイブリッドディスクはSACDブレーヤーとCDプレーヤーで再生できますが、Pure Audio Blu-ray ディスクはCDやDVDのプレーヤーでは再生できないので、Blu–ray プレーヤーもしくは Blu–ray 対応のPCをお使いください。
『スウェーデン・ヴァイオリンの至宝(Swedish Violin Treasures)』
dB Productions DBCD 195 classical
ヘレーナ・ムンクテル(1852–1919)
ヴァイオリンソナタ 変ホ長調 Op.21
アルゴット・ハクヴィニウス(1886–1966)
組曲(Svit)(1936)(ヴァイオリンとピアノのための)
ハラルド・フリュクレーヴ(1882–1919)
ソナタ・アラ・レッジェンダ(Sonata alla leggenda)(1918)
(ヴィオリンとピアノのための)
イーカ・ペイロン(1845–1922)
2つの性格的小品(Två karaktärsstycken) Op.19(1888)
(ヴァイオリンとピアノのための)
ロマンス(Romance) ユーモレスク(Humoresk)
セシリア・シリアクス(ヴァイオリン)
ベンクト・フォシュベリ(ピアノ)
録音 2020年1月2日–4日 インゲスンド音楽大学 大コンサートホール(アルヴィカ、スウェーデン)
セシリア・シリアクス Cecilia Zilliacus は、1972年、ストックホルム県ソーデルマルム生まれ。ストックホルム音楽大学で学び、1997年、王立スウェーデン音楽アカデミーの「ソリスト賞」とノルウェーのトロンハイムの「北欧ソリスト・ビエンナーレ」第1位を獲得しました。ストラヴィンスキー、シベリウス、スヴェン=ダーヴィド・サンドストレム、ラヴェルを弾いたアルバム(Caprice CAP 21564)でアルバム・デビュー。翌年、シーグルド・フォン・コック、ルーセンベリ、メルケシュの作品を特集した『スウェーデンのヴァイオリンソナタ』(Phono Suecia PSCD 705)でスウェーデン・グラミー賞を受賞しました。ソリスト、「シリアクス=ペーション=ライティネン」をはじめとする室内楽グループで活動。トラッド・ミュージシャンのレーナ・ヴィッレマルクとコラボレートしたアルバム『踊り』(BIS SA-2159)が話題になりました。
カール・ニルセンの作品集(DBCD 161)で共演したスウェーデンのピアニスト、ベンクト・フォシュベリ Bengt Forsberg(1952–)との新録音。ロマンティックな優れた作品を残しながらスウェーデン音楽史で語られることの少ない女性作曲家ふたり、ヘレーナ・ムンクテル Helena Munktell(1852–1919)の初期のソナタと、イーカ・ペイロン Ika Peyron(1845–1922)の《2つの性格的小品》。「スウェーデン・ロマンティシズム」の弦楽四重奏曲第1番(Musica Sveciae MSCD 608)が「知られざる名曲」として親しまれているアルゴット・ハクヴィニウス lgot Haquinius(1886–1966)の《組曲》。ストックホルム大聖堂のオルガニストと音楽大学の教師を務めたハラルド・フリュクレーヴ Harald Fryklöf(1882–1919)は、エミール・シェーグレーンのスタイルを思わせる室内楽曲、管弦楽曲、合唱曲、歌曲、ピアノとオルガンの作品で将来を期待されながら、若くして亡くなりました。《ソナタ・アラ・レッジェンダ》は、〈アレグロ・モデラート〉〈アンダンテ〉〈ヴィヴァーチェ・マ・ディスクレツィオーネ - アレグロ・コーモド・エ・ジョコーソ(活発に、だが慎重に - 速く、気楽で陽気に)〉の3楽章の作品。1919年1月1日、コペンハーゲンの音楽祭で初演されました。チャールズ・バルケル(Caprice CAP 21705)とカール=ウーヴェ・マンベリ(Caprice LP)の録音がリリースされていたフリュクレーヴの曲以外は、世界初録音です。
価格 2,695円(税込価格)(本体価格 2,450円)